映画「インターステラー」感想(けっこうなネタバレ)
見たのは先月なんですが、感想を書けないまま年越してしまいました。
実に感想書くのが難しい。
何を書いてもネタバレになりそうで。
決定的なことは書いていませんが…だいぶネタバレしてますw
最初にお断りしておきますが、私は完全文系の人間です。
数式を見ただけで思考停止するし、ワームホールだのブラックホールだの聞いたことはあるけど何だかよく分かってないし、相対性理論だってなんとなくしか分からないし。
そういう諸々をちゃんと理解している人ならば、この映画の見方はぜんぜん違うだろうし、きっと何倍も面白いんだろうと思います、たぶん。
その辺のところをふまえた上で、この感想を読んでいただければ幸いです。
現在からそれほど遠くはないと思われる未来。
地球は砂嵐と植物に蔓延する疫病から来る食糧難に悩まされ、呼吸器系をやられて病死かはたまた餓死か…という人類滅亡の危機に瀕していた。
家の中にまで砂埃が積もり、外は見渡す限りのトウモロコシ畑。
人類の叡智は食糧難を克服するために農業に注がれ、科学だの殊に宇宙に目を向け国家の予算を注ぎ込むなんて世論が黙っちゃいない。
NASAは解体、アポロの月面着陸は捏造だったとされていて、科学好きな娘は問題児扱い…
主人公のクーパー親子は部品欲しさに古いドローン(無人飛行機)を追いかけていて、むしろ科学技術は逆行しているようにさえ見える。
クーパーは凄腕の宇宙飛行士らしいけれど、墜落のトラウマと先に書いた事情から宇宙開発が打ち切られている所為で職を失い(気が進まないまま)トウモロコシ農家をやってるみたい…
物語の冒頭部分では、どうも世界観がよく分からないのです。
なにしろ説明が殆ど無いので。
そのうちになんとなく状況が掴めて来るのですが、最初の方は何がなんだか分からない不安な心持ちで見ていました。
SFだって聞いてたのに、埃っぽいアメリカの田舎町に一面のトウモロコシ畑だしね!
おまけに、娘の部屋にはポルターガイストが出るしね!
ホラー映画じゃなくてSF映画だったよね、これ?
って思ってましたw
もちろん、僅かの辛抱で主人公は宇宙に飛び出して行くんですが。
娘マーフィーの部屋のポルターガイストが何らかのメッセージを伝えようとしていることに気付いた父娘は、それを解読して突き止めた座標の場所に行ってみると、そこは極秘に再結成されたNASAの研究施設だった。
そこでは人類が移住可能な惑星を探すミッションが人知れず実行されていた。
明かされる、高度な文明を持ち、時間さえも超越するほどの進化を遂げた謎の生命体の存在。
彼らはメッセージを送り続け、ご丁寧にワームホールまで作って人類を救おうとしてくれているらしい。
そして、次のミッションの参加者にクーパーが抜擢される。
と、ここまで来てようやくSFっぽくなって来ました。
クーパーは苦渋の選択を強いられます。
愛する娘を悲しませてまでも、ミッションに参加する意味があるのか?
娘は大好きなパパがいつ帰るとも知れない危険な旅に出るのを当然嫌がる。
父親としても、可愛い娘の側でその成長を見守りたいのが心情でしょう。
でも、娘と一緒に地球に留まっていても、いずれ人類は滅んでしまう。
人類滅亡すなわち娘の死。
人類を救うという壮大な目的のミッションだけれど、クーパーにとっては娘の未来を守るための旅だったのではないかな。
旅のさなか、クーパーは幾度となく『娘を救えなければ意味が無い』的なことを口走っていたような気がするのです。
人口培養によって産まれた人類のコロニーを作るBプランではなく、全人類の移住を目指すAプランにこだわったのも、僅かな時間のロスが地球時間では何年にも値してしまうことに対して焦りを滲ませていたのも、娘を守りたいからこそ、なのかな、と。
いくら崇高な目的であっても、『人類』なんて漠然としたものよりも具体的な対象があった方がモチベーションは維持しやすいと思うのです。
クーパーの場合は、娘を救うことの延長線上に人類の未来があるワケだし。
愛する娘が待っていると思えば、何が何なんでも生きて帰ろうと足掻くだろうしね。
クーパーはそんな自分の想いを娘がいつか理解してくれると信じて、反抗的な態度を取り続けるマーフィーを残して旅立ったのだと思います。
この物語にはもう一組の父娘が登場します。
クーパーと同じミッションに参加するアメリアと、その父にしてミッションの責任者を務めるブランド教授。
こちらは娘の方が宇宙に飛び立ち、父親の方が地球に残っていますが、大切な人と遠く隔てられてしまっているという点は同じ。
アメリアの方は恋人も何処と知れぬ宇宙で生死不明という二重苦です。
彼らのおかげで『時間』というものの残酷さを感じることになります。
ある星に調査のために降りて1時間足らず滞在して戻ったら、地球では数十年経過していたり、とか。
娘は自分が地球を旅立った時と同じ年齢に達してしまっている。
父親は何年も前に亡くなっていたと知らせが届く。
自分たちの方はさほど時間が経過していないのに。
たとえ恋人と再会することができたとしても、アメリアは恋人を見送った時よりも10歳老けてしまっているワケよね。
彼の方は、ほとんど齢とっていないのに。
人間の力ではどうすることも出来ない『時間』というものに、苛立ちと共に怒りや恐怖すら覚えます。
クーパーたちは先のミッションの参加者で、地球に移住可能な星を発見したと信号を送り続けていたマン博士という人物を救出します。
これが、えらく人間くさい人で。
あくまで地球に帰還することを目指すクーパーと、自分が助かりたい一心のマン博士との間で醜い争いまで勃発する始末。
英雄も、ただの人ってことですか。
功績だけが語り継がれる英雄も、実際のところは普通の人なんでしょう。
クーパーだって娘の待つ地球に帰ることを優先させて、もっと遠い星まで探索を進めることを拒否しているし、アメリアは自分の恋人が眠っている星に行きたがっているんだもの。
人類を救うという崇高な目的は何処へ行った?ですよ。
でも、誰もそれを責められません。
だって、それが人間だから。
行く先々で困難な状況に遭遇し、かろうじてそれを乗り越えながらミッションを遂行していたクーパーたちですが、ついに最悪の状況に。
クーパーは一縷の望みをかけて、アメリアの恋人エドマンズが信号を発している星に降りることを提案。
でも、クーパーはアメリア1人をエドマンズの星に送り込み、自身はブラックホールへと飲み込まれて行く…
水で覆われた惑星のとても不思議な風景や、氷に閉ざされた惑星の荒涼とした景色にも目を見張るものがあったけれど、このブラックホールの比では無かった。
きれい。きれいだけど、なんか怖い!
ブラックホールの中で、クーパーは自分に託された本当の使命を知ることになります。
全ては未来によって約束されていた
ってことなんですよね。
私は完全文系の人間なので、こういう表現になっちゃうんですけど。
クーパーが送ったブラックホールのデータを元に、マーフィはブランド博士と共同で行っていた重力の研究を完成させます。
クーパーが帰り着いたのがコロニーってことは、人類が移住可能な惑星は見つかっていないんですよね。
クーパーとマーフィーの連携で、コロニーへの移住は可能になって人類滅亡は免れたけれど。
エドマンズの星は居住可能っぽく見えたけど?
クーパーがアメリア救出に向かったようだし、あの星が人類にとって第二の故郷になるのかしら?
(文系の私にはよく分からないけれど)たぶん恐らくきっと科学的にもしっかりとした裏付けが為されていると思われる本格的なSF映画。
SF好きにはたまらないのではないでしょうか。
そうでない人にも、人間ドラマとして楽しめる内容になっていると思います。
同じく宇宙を舞台にした映画で記憶にも新しい「ゼロ・グラビティ」があり、何かと比較されるのではないでしょうか。
同じ宇宙ものでもタイプはまるで違うと思うし、どちらも面白かったのですが
どっちが好きかっていわれたら…
ごめんなさい、私は「ゼロ・グラビティ」の方です。
なにがどうして「ゼロ・グラビティ」の方を選ぶのか自分でも分かりませんが、見ている時の衝撃や見終わった時の感動などは「ゼロ・グラビティ」の方が勝っていました。
たぶん、単に好みの問題でこの映画自体がどうのこうのって話しではないと思います。
「2001年宇宙の旅」が好きな人からは、きっと大絶賛されるのではないかな、この映画。
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