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「ダウン・ツ・ヘヴン」 森 博嗣 著

「スカイクロラ」シリーズ第三弾。
前作「ナ・バ・テア」でティーチャが去ってしまった後のクサナギの物語。

ショーとしての「戦争」を演じるために生み出された、キルドレ。
「空にしか居場所が無い」と感じているキルドレのクサナギが、負傷によって飛べなくなる。
さらに、クサナギを実戦から遠ざけようとする動きもある。
自分の居場所が無くなるという恐れが、クサナギの心を不安定にする。
クサナギは「子供」なので、「大人の事情」などは理解できない。
ただ、永遠の子供であるキルドレも、少しずつ変わって行くようだ。
クサナギは少しだけ大人になった。

このシリーズではお約束の完全一人称視点。
それでなくても一人称が「僕」でややこしいのに、語り手であるクサナギにとって当たり前のことは一切説明されないので、いきなりこの本を手に取った読者は困惑するだろう。

終盤の戦闘シーンが凄い。
短い文書がダダダっと連なって、まるで本当にクサナギと一緒に空に上がっているかのようなスピード感で、息が詰まる。
クサナギが雲の上に飛び出した時、自分にも青い空が見えたような気がした。

このシリーズを読むと、無性に空を飛びたくなる。
もちろん、私は自分が飛べないことを知っている。
仕方ないから、ゲームの疑似体験で飛んだ気になる。
私がフライトシューティングゲームを好むのは、「空を飛びたい」と思っていた子供の頃の想いが、まだどこかに残っているからなのかもしれない。
 
 
 
 
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