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「精霊の守り人」 上橋 菜穂子 著

アニメを見て、すっかりバルサ姉さんに惚れ込み、「いつか読まなくては!」と思っていた原作を読了。

「精霊の守り人」は主人公の女用心棒バルサ(三十路・未婚)が、ひょんなことから精霊の卵を宿した皇子チャグム(健気で賢い十一歳)を託され、彼を守るために悪戦苦闘するオハナシ。
元は児童文学として発表された作品だけれど、文庫化にあたって完全に大人向けの表記に変更されているのだそうだ。(ただし、内容は一切手を加えられていない)
 
 
架空の世界の冒険物語。
精霊だの化け物だの呪術だの星読みだの、果てはけったいなパラレルワールド(!?)
ファンタジー的要素が満載だ。
ハラハラドキドキの展開で読者を翻弄しているだけで、けっきょく最後はめでたしめでたしで、大した中身なんか無いんじゃないか・・・
などと思ったら大間違い。
固有名詞は覚えづらくて、なんか面倒くさいから・・・
などと敬遠するのも大損。

ご存知の方も多いと思うが、著者の上橋菜穂子さんは文化人類学の学者さんでもある。
さすが・・・と、言うべきだろうか。
この物語を書くにあたって、話の筋よりもキャラよりも、まず、「世界」を作るところから始めたのではなかろうか?
そんな気がしてくる徹底ぶりで、「世界」をしっかりと作り上げている。

気候風土。
歴史と伝承。
チャグムの国である新ヨゴ皇国の成り立ちと、現在そこに生きる人々・・・皇族とそれを支える者たちや、下々の民の暮らしぶり
ひっそりと昔ながらの暮らしを守る先住民族
過酷な自然環境にあるバルサの故郷
隅々まで抜かり無く気を配ってキッチリと構築された土台の上に、バルサたちは立っているのだ。

そして、その架空の世界に生きている彼らは、やっぱり私たちと同じ人間で、同じように食ったり寝たりするし、怪我すれば痛いし、怒ったり悩んだり迷ったりする。

この「精霊の守り人」には、一つの世界とそこに生きる人たちの姿が、しっかりと描かれている。
これを、子供だけに読ませておくなんて、もったいない。
いや、むしろ、大人が読んでこそ本当の面白みが分かるのではないだろうか。

理不尽な運命を背負わされて生きなければならない者の怒りや、バルサとタンダの微妙な関係などを理解するのは・・・難しすぎるだろう、子供には。
 
 
アニメの方を先に見てしまっていた私は、読みながら幾度と無く「あらあら、あの場面、無いんだ!?」と、驚いた。

アニメは、小説には無いエピソードがふんだんに盛り込まれていたようだ。
普通、そういうことをすると、たいてい失敗して原作ファンの怒りを買うものだけど、この作品に関しては違うと思う。

皇子のチャグムが徐々に「普通の男の子」になっていく過程や、精神的にどんどん強くなっていく、その変化はアニメの方が丁寧に描かれていた。
だから、チャグムのバルサへの信頼も、そんなチャグムを愛おしく思うようになるバルサの心の変化も、すんなり理解できたけれど、原作では少し唐突な感じがした。

精霊の守り人としての役目を終えたチャグムが、このままバルサたちと共に暮らすことを望みながらも、今度は皇太子としての役目を全うするため王宮に戻ることを選択する、その決意も、アニメで感じたほどの重みは感じられず、いささかもの足りなかった。

原作しか知らない人は、ぜひ、アニメも見ていただきたいと思う。
決して原作のイメージを壊さず深化させることに成功した、(大人の視聴に耐えうる)見事な出来映えだと私は思うので。
 
 
 
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