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「ストレンヂア ー 無皇刀譚 ー」

「長瀬智也が声優に初挑戦!」
とかいって、それなりに話題には上がっていたようだけど、大した評判も聞かないままいつの間にか公開終わってて、すっかり忘れた頃にDVDが発売
・・・みたいな感じ。

公開当初から気になっていたし、DVD買っちゃおうかなぁ?とか考えつつも、けっきょく借りて来て見た。

長瀬の他に、もう1人ジャニーズの若い子が主要キャラの声をあてているんだけど、どう考えても若い女の子が見たがるような映画じゃないんで・・・
逆に、タレントが吹き替えっていうだけでゲンナリしちゃうアニメ好きは、思いっきり敬遠しそうだし・・・

話題性や集客を狙ったつもりのキャスティングが、裏目に出ちゃったのかも。

もったいない。
内容的には、良かったですよ。とっても。

「萌え要素無しの渋め剣劇アクション」ってとこですか。
正統派時代劇ではないけれど、チャラチャラしたチャンバラもどきでもない。

絵柄は地味め。
だけど、動きが派手だから、見ていて地味だと感じることは無かった。
べつにキャラに華が無いわけじゃなくて、カッコいいしカッコいいしカッコいいし、犬は可愛いし。(なんだ、それ)

かなりド派手に斬りあってて、グロい表現も多いんで、そういうのが苦手な人にはキツいかな。
実際、年齢制限あるみたいだしね。
 
 
道具立てが凝ってるけれど、物語の筋立ては極めて単純。
偶然知り合った子供を、ワケありの浪人が助けるっていう・・・大雑把に言うと、それだけ。

いや、いくらなんでも、そりゃ大雑把すぎるだろ。

そういうわけで、少し解説。(以下、ネタバレ含みます)


主人公の「名無し」は、故あって刀を封印している浪人。

封印しているくせに後生大事に刀を持ち歩いてるってことは、刀を捨てたわけではないんだな。
戦に嫌気がさしたのなら、刀を捨てて農民にでもアキンドにでも坊主にでもなれば良かろう?
それをしない(出来ない)この男は、「刀を抜くための理由」を探しているんだな。

そんな彼が出会ったのが、これまたワケあって命を狙われている少年・仔太郎。

幼くして親を亡くし、酷い目に遭っているせいで人間不信に陥っていると思われ、常に側に寄り添ってきた犬にしか心を開こうとしない。
可愛げのない悪ガキの仔太郎が、名無しに対して次第に心を許すようになって行く、その過程が良い。
仔太郎もそうなんだけど、名無しも不器用なとこがあるんで、すごくぎこちなくてね。
でも、確実に溝が浅くなって行くのが分かる。

仔太郎を追って大陸から海を渡って来た異様な一団の中にあって、ひときわ異彩を放つ剣の使い手が羅狼。
ひたすら強い相手と剣を交えることを求める羅狼も、言葉の端はしから自分しか信じてないことをにおわせる。
きな臭さと孤独な者の悲哀をまとわりつかせた、危険物臭プンプンな男である。
 
 
物語の舞台は日本の戦国時代あたりだろうか?
仔太郎を狙う怪しげな連中は、明国からやって来たと言っていたが・・・
明朝っても長いからなぁ。
まぁ、だいたいそのへんのどこかだろうし、細かな時代設定は目くじら立てて検証する必要もないと思う。

だいたい、剣劇アクションで日本刀振るっているにも関わらず、名無しは南蛮人だし、ライバル役の羅狼は金髪碧眼。
仔太郎は帰国子女だ。

主要なキャラは、みんな異邦人(ストレンヂア)なワケ。

名無しに関して言えば、必ずしも異邦人にする必要は無かったような気もするんだけれど、そうしないと「ストレンヂア」にならないしな。

だったら、もう少し、戦場で刀を振るっていた頃の名無しの異邦人としての心情なんかが垣間見えたりしても良かったと思う。

目の色が違うというだけでバケモノ扱いされる時代に、たった1人で異国(しかも乱世)で生き延びるには剣にすがるしかなかった・・・というか、乱世だからこそ、そうやって生き延びることができたともいえるが・・・そんなふうに無我夢中で生きて来た名無しは、どんな想いで戦場を駆け抜けて来たんだろう?
そのあたりは、劇中では大して触れられていないので勝手に脳内補完。(そういうのは得意だ)

そんな名無しが、自らの刀を封じ無ければならなくなった、その苦しみは、いかほどのものだったのか。

そのきっかけになった出来事も、曖昧にしか語られなかったけれど、あれはあれで良かったと思う。

あれだけ表現されていれば、充分に想像はつくから。
ちゃんと、仔太郎を助けに走る名無しの行動に結びついて行くしね。

櫓を駆け上がりながら、名無しが刀の封印を解く瞬間は、胸にグッと迫るものがあった。
ここは、このアニメでいちばん重要なシーンだろう。
名無しの表情がすごく良いし、刀を封じていた布切れが、はらりと千切れる描写も良い。

あぁ、この紐って、もしかして、あの少年が身につけていた布切れだったりするのかなぁ?とか考えてみたりもした。

名無しが、刀を封じるきっかけとなった少年の死。
救えなかったその少年と、同じ年頃の仔太郎が重なる。
1人の少年の命を奪ったのをきっかけに封じた刀を、こんどは1人の少年を救うために抜き放つ。

このへんの繋がり、名無しの心の動きが、スムーズに理解できたから、心にずぅんと響いたんだろうね。
 
 
いちばん重みのあったセリフは
「痛みがある方が、生きている気がする」
っていう、名無しと羅狼の一騎打ちのシーンで名無しが言った、あれ。

この物語では、明国の戦闘員たちは妙な薬を飲んでるのね。
この薬を飲んでいると痛みを感じないという。
自分と対峙する前に既に傷を負っていた名無しに、羅狼はその薬を飲めと勧めるんだけど、名無しはそれを断るんだな。
痛みがある方が良いって。

ずーっと戦闘シーンを見ていて、あんまり痛そうじゃない気がしていたのは、明国の連中がこの薬を使っていたせいなのかもしれない。
(そう感じさせるように演出していたのだとしたら、そいつぁスゴ過ぎだ)

終盤になって名無しにこのセリフを言わせることで、「痛み」というものがバーンと前面に出て来る。

たぶん、「痛み」もこの物語で描きたかったテーマの1つだろう。

羅狼が薬を飲んでいたのかどうかははっきりとした描写が無かったと記憶しているけど、どっちなんだろう?
斬られるのは初めてだって言ってたし、スゴ腕の彼は飲む必要は無かったのかもしれない。
いずれにしても、斬られる痛みは感じたことが無かったんだろう。

その彼が、死に際に「痛み」について口にする・・・

羅狼は、「痛み」を感じることで、初めて生きている感覚を味わったのかもしれないな。
 
 
余韻のある終わり方も良かった。

名無しはどうなったんだろう?
かなりの深手を負っていたように見えたが・・・
希望的観測としては、2人と1匹で海賊でもやっていてくれたら良いなぁと思う。
好きなように解釈して下さいよってことで、あの終わり方したんだろうから、わざわざネガティブ方向に解釈しなくても良かろう?
っていうか、9割がた、死んだと思ってんだけどね、自分は。
そういうわけで、希望的観測。
 
 
戦闘シーンの迫力、スピード感は全編を通して素晴らしい!

サムライが出て来て刀振り回すアニメは他にもあるけれど、ここまでの動きを見せてくれる作品にはなかなか巡り会えないんじゃないかなぁ。
もう、とにかく動きがキレイで速くてカッコいいのさ。

血しぶきが遠慮会釈なく飛び散ったり、かなりグロい描写もそこかしこにあるんだけど、すごい速さで展開しているものであんまり気にならない。

このあたりは、アニメだからこその感覚であって、実写では無理だったと思う。
実写だと映像が生々しい反面、CGだとかワイヤーアクションだとかのわざとらしい演出が入っちゃって、かえってリアルから遠ざかって行く気がするのね。
でも、その動きをアニメでやると、すごくスムーズで逆にリアルを感じる・・・
文章が下手で上手く言い表せないな・・・うぅぅ、もどかしい。
 
 
深読みしようとすれば、気になるメッセージはチラホラと見えて来るけれど、声を大にして何かを訴えて来るわけでもなく、もっともらしく説教たれるわけでもない。

どいつもこいつも、かなりえげつないことやってて、死人続出で状況は極めて悲惨なのにも関わらず、湿っぽくならずに妙にサバサバしている。

むやみに熱くなりすぎない、力の抜き具合がとても好感が持てる。

単なる冒険活劇としてサラッと楽しんでもいいし、その気になればほじくり返せそうなネタはいくらでも潜んでいるし・・・

う〜ん、もう1回見たいな。
1泊で返しちゃったのが悔やまれる。
 
    
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