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俺の屍を越えてゆけ

発売は1999年 SCE
ゲームデザイナー桝田省二氏の手によるRPG。

またこれも、アクの強いゲームです。
私は、「時折、無性に俺屍を遊びたくなる病」を抱えていて、これまでに数えきれないくらいプレイを繰り返しているのですが、ちゃんとエンディングまで辿り着いたのは、たった2回。たいてい途中で放置してしまいます。(でも、またしばらくすると、無性にプレイしたくなる)
それだけ、根気が要るゲームということになるでしょうか。
 
 
きれいなムービーや派手な演出は、ほとんどありません。
萌え要素も限りなくゼロに近いため、「萌えが無ければゲームじゃない」とお考えの方々には、まず向いていません。
地味といえば地味なゲームです。
でもね、「俺の屍を越えてゆけ」通称:俺屍(オレシカ)には、他のゲームには無い強烈な魅力があるのです。
ハマる人はとことんハマる。
ダメな人は、恐らくまったくダメ。
・・・たぶん、きっと、そんな両極端なゲームだと思います。
 
 
ンでは、例によってストーリーから。

物語の舞台は時代考証のいーかげんな(だって、作った本人がそう書いているんだもん)平安の都。京都。

都を荒し回る鬼の頭目・朱点童子(酒呑童子ではない)の討伐に向かった名だたる勇士たちがことごとく返り討ちにあうなか、一組の夫婦が朱点童子の本拠地・大江山まで辿り着く。
しかし、夫の源太は命を落とし、妻のお輪は捕われの身となる。
夫婦が都に残して来た子供。
お輪が自分の身を捨てて守ろうとしたその子供が、この物語の主人公である。

朱点童子はその子供に呪いをかける。
寿命がわずか2年という「短命の呪い」と、子を生すことが出来ない「種絶の呪い」

哀れなその子供に、地上の荒れ様を憂えた天上の神々が手を差し伸べた。
そうして神の力を借りたその子供は、一族にかけられた呪いを解くために、朱点童子に戦いを挑む・・・

と、いうのがこの物語の大筋ですが、

大筋しかありません!

RPGは物語を楽しんでナンボ・・・のはずが、感動的なエピソードも、心温まるサブイベントも何も無いんですよ。
忘れた頃に、ポロッとネタばらし的なイベントが挟まっていたりもしますが、全体のボリュームから言ったらホントに微々たるもの。

あらかじめ用意されたシナリオに従って一本道を進んでゆく(と言うより、進まざるを得ない)数多のRPGを完全否定。
プレイヤー1人1人の通った道筋こそがヒストリー。

このゲームの「物語」は、プレイヤー自身が紡いでゆくのです。
 
 
では、具体的にどんな内容のゲームかというと・・・

まず、主人公が真っ先に死にます!
だって、寿命が2年しか無いし。

朱点童子のかけた呪いは、主人公だけでなくその子供たち全てに効力を発揮し、一族は皆短命で、神様のお力を借りなければ血が途絶えてしまいます。
朱点童子を倒し、一族にかけられた呪いを解くこと。
それが、このゲームの唯一の目的になります。

このゲームでは月単位で時間が進行しています。
どこかのダンジョンに出掛けて戦って帰って来ると1ヶ月が経過。
神様に御子を授けてもらう儀式に臨むと1ヶ月が経過。
何もしないで寝ていても1ヶ月が経過。
その間、子供たち(操作キャラ)の残り寿命はどんどん縮まって行きます。
「2年」とか言ってますが、2年生きられたら長生きな方。
男子などは平気で1年半ぐらいで死んじゃう子もいます。
このゲームで言う「死ぬ」は、いわゆる「戦闘不能」とはワケが違います。逝ってしまったら帰って来ません。
どんなに大切に育てた子も、どんなに愛着のあるカワイイ子も、必ず死にます。
キャラ萌えなんぞしている暇はありません。

そんなんで、どうやってラスボス倒すんだよ?と、お思いでしょう?

そこで、神様に御願いして子供を作るのです。

ダンジョンに出掛けて行って敵を倒すと、ポイントが手に入ります。
このポイントをせっせと貯めて、ポイントと引き換えに神様からそれ相応の子供を授けてもらいます。
基本的にポイントをたくさん要求する神様(男女合わせて108柱いらっしゃいます)ほど、優秀な子供を授けてくれる傾向にありますが、神様は気まぐれなので必ずしもそうとは言い切れません。
時々、ビックリするぐらい優秀な子供が生まれたかと思うと、どうしようもなくショボイ子供が生まれて来たりもします。
「子供を作る」といっても、プレイヤーがパラメータをいじれるわけではなく、完全なる運任せ。
なかなか、思い通りの子供は生まれて来ないのです。

でも、パッと見、冴えない子供でも、潜在的な能力を秘めているかもません。
この子はちょっとイマイチでも、その秘めたる能力は必ずや次の世代に開花するはず・・・次もダメでも、その次は・・・いつか、きっと・・・

子供たちは世代を経るに従い、確実に強くなって行きます。
このゲームで育てるのは「キャラ」ではなく、「血筋」とでも言うべきでしょう。
親の世代ではまるで歯が立たなかった敵を、子供が孫が曾孫が見事に蹴散らしてゆく姿を見るのは、なかなか感動的です。
空の上から子孫の繁栄ぶりを眺めるご先祖様の気分は、きっとこんな感じなのでは無いでしょうか。
 
 
「俺屍」は、極めて自由度の高いゲームです。
何時、何処へ行って何をするかは、全てプレイヤー自身が決めます。

ダンジョンのどの辺りまで進むのかも、プレイヤー次第。
無謀に突き進めば大事な子供を1人失う可能性もあるため、無茶は出来ません。(このゲームでは、戦闘中に力尽きたキャラが、帰還後に寿命を待たずに死んでしまうことがあります)

ボスに挑むタイミングも、その時のパーティメンバーの状態を予測して決めなければなりません。

いつ子供を作るかも、すっごく大事。
生まれたばかりの子供をすぐに戦場に連れて行くわけにもいきませんから、訓練期間が必要ですし、戦場に連れ出したとしても一人前の戦力になるには時間がかかります。
新たに生まれて来た子がマトモに戦えるようになる前に、年上の子たちがみんな仲良くご老体になってしまったら、鬼討伐どころではありません。

当主様、そろそろヤバいから子供作っとかなきゃ・・・
あぁ、でも今月はあっちのダンジョンのボス倒しておきたかったんだけどなぁ・・・
う~むむむ、どうしよう~~~?
と、自分の頭を悩ませて、スケジュール調整していかなければなりません。

まぁ、てきとーにやっていても、何とかなってしまったりもしますがね。
 
 
「極めて自由度が高い」と書いたけれど、大前提に「短命」という縛りがあるため、実はそれほど「自由」ではないのです。
何をするにも、まず、子供たちの寿命が手枷足枷になります。
その制約の中で、いかにして一族の血を絶やさず、なおかつ悲願達成に向けて力をつけて行くか・・・
それが、このゲームの心髄と言えるでしょう。
  
 
基本的には単純なゲームなのですが、行方不明中の神様を探し出して天界に戻して差し上げたり、新たな術を覚えるために巻物探しに行ったり、都の復興にちょっと寄付金出してみたり、子供も作らなきゃならないし、もちろんボスも倒さなきゃならないし、やるべきことはたくさんあります。
そう簡単に一族の悲願達成は叶わないでしょう。
 
 
PSのソフトですが、現在ではゲームアーカイブスでも購入できます。
おそらく、PSPでチマチマと攻略するにはうってつけのゲーム。
SRPGをじっくり遊ぶのが好きな人は、たぶん、きっとハマると思いますよ。
 
 
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