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「しゃばけ」 畠中 恵 著

去年の(今年ではない)夏から、読もう読もうと思いつつ積みっぱなしになっていた本をようやく読了。
舞台がお江戸で妖怪がわんさと出てくるお話を、わざわざクリスマスに読まなくても良いような気もするがな。

というわけで、このお話の舞台は江戸である。
主人公の一太郎は、江戸でも指折りの廻船問屋の若旦那。
いちおう、自分も薬種問屋を一軒任されてはいるんだけれど、この若旦那、異様に身体が弱い。
ちょっとトラブルがあると、すぐに寝込んでしまう。
だいじな跡取り息子に倒れられては大変!とばかりに、両親も店の者たちも、若旦那を甘やかしまくる。
若旦那が軽く咳き込んだだけで寝床の用意をするわ、(もうスッカリ一人前の歳になってるのに)1人で外出したと言っては大騒ぎするわで、当の若旦那が鬱陶しがるほど。

しかし、この若旦那、身体が弱くて世間知らずの「おぼっちゃん」ってワケじゃない。

確かに世間知らず、というか世の常識から外れていらっしゃるようだけれど、なかなかに頭脳明晰で肝も座っている、けっこうな好青年なのだ。(どうやら、見目も麗しいらしい)

そして、この若旦那には2人の手代がくっ付いていて、なんやかやと世話を焼く。
一方は腕っ節の強い偉丈夫で、もう一方は色男。
子供のころは遊び相手として、成長してからはお目付役として、若旦那のお守りを続けているその2人の正体は妖なのだ。
このお2人さんが、また、魅力的なキャラなのである。
2人ともなかなか力の強い妖怪いのようで頼もしいんだけれど、妖怪だけに、人とは感覚がちょっとズレていて安心できない。
若旦那も、これには頭が痛いようである。

子供のころから2人の妖に守られている若旦那の周囲には、他にもたくさんの妖が姿を見せ、若旦那と妖たちはまるで友達のような関係にある。
これが、この若旦那の最大の特徴だろう。
 
 
その若旦那がお忍びで夜歩きをした折りに、たまたま殺人事件の現場に行き会ってしまったことから、物語は動き出す。
やがて、それは江戸を騒がす大事件となり、完全に巻き込まれたかっこうの若旦那は(どうせヒマだし)事件の解決に乗り出すことになる。

妖怪ファンタジーと推理ものの融合・・・といえば、他にも似たような小説はいくらでもある。
この「しゃばけ」は、その中でも抜きん出て読みやすい。
時代小説だと思って尻込みしてしまう読者も居るかもしれないが、この本に関しては心配はご無用。
舞台が「江戸」というだけで、中味は現代小説と変わらない。
普通に妖怪に顔を出させるには、時代を「昔」に設定しておいた方がよかろう・・・って、そんな感じだ。
妖怪と戯れたり、若旦那と一緒に事件を追い掛けたりしているうちに、あっという間に読み終わってしまった。
なんとなくマンガを読んでいる感覚に近いような気がしたのは、作者がマンガ家としての経歴の持ち主だからなのだろうか?

若旦那と彼を取り巻く人々(妖怪も含めて)が生き生きとしていて魅力にあふれているのも、一気に物語に引き込まれてしまった理由の1つ。
(若旦那と2人の手代なんぞは、ビジュアル的にもかなり見栄えがするんではなかろうか)
これだけ素敵なキャラを1回こっきりで終わらすのはあまりにももったいない!ということで、同シリーズは続々と刊行されているようで。
はやく続編が読みたい!そう思わせる本にはなかなか出会えないものだけれど、コレは今すぐにでも本屋に飛んで行きたい気分にさせてくれたのだ。
オススメなのだ。
 
 
 
 
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