「ZOO 1&2」 乙 一 著
この人の作品は、「平面いぬ。」という短編集を読んだことがある。
それ以降、この人の作品を続けて読んではいないってことは、たぶんそれほど気に入らなかったんだろう。
かといって悪い印象も無いってことは、つまらなくもなかったんだろう。
で、この「ZOO 1&2」
続き物ではなく短編集で、「1」の方には映画化された5編が収録されている。
短編集なので、好きなのとそうでないのとが混在している。
もっとも、あくまで私の好みなのであって、「全編お気に入り」って人も居るかもしれないが。
私が気に入ったのは「カザリとヨーコ」「陽だまりの詩」「落ちる飛行機の中で」の3編。
たぶん、「カザリとヨーコ」がいちばん最初に収録されていなかったら、この本を買うことは無かっただろう。
先にも書いたように、「乙一という作家は知ってはいるけど特に印象に残ってない」という理由で、本屋でこの本を見かけた時、買おうかどうしようかちょっと迷った。
それで、パラパラと「カザリとヨーコ」を流し読みしたら、なんとなく良さそうな雰囲気で、買う気になった、というわけだ。
一方は溺愛され一方は虐待されている、双子の姉妹。
物語は虐待されているヨーコの目線で語られている。
子供の作文のように拙い文章で書かれているところが、気に入った理由のひとつ。
途中でオチが見えてしまったけれど、一生懸命生き延びているヨーコのいじましくて、いじらしい姿が「良いなぁ」と、思った。
「陽だまりの詩」はCGアニメで映像化されたのだそうだ。
見てみたい気がする。
ネタバレしてしまうので詳しくは書かないが、じんわりと心が温かくなる作品だ。
「落ちる飛行機の中で」は、それぞれに事情を抱えた3人が同じ飛行機に乗り合わせてしまったことによって起こるゴタゴタ劇。
飛行機が落ちるかもしれないという極限状態にありながら、自分のことで精一杯の「私」と「セールスマン」は、妙にすっとぼけた会話をしていて、その姿は滑稽であると同時に、落ち着き払っているようにも見える。
読み終えた時、なんだか元気が出た。
そういうワケで、気に入ったのはこの3編なのだけれど、ぜんぜん好きじゃない1編がいちばん強烈な印象を残してしまって困っている。
それは、「SEVEN ROOMS」
私は、とにかくこういうグロい話しは大の苦手で、普通なら絶対に視界に入れないのだけれど、短編集に入っていたものでウッカリ読んでしまって大失敗である。
暗ーくて、臭ーくて、グチャグチャのドロドロで、「もう、勘弁して下さい・・・」って感じ。
これ、どうやって映像化したんだろう?
いや、私は、絶対に見たくないです。
全体的に見れば、共感できる文章もあちらこちらに見られて、悪くはない。
悪くはないけれど、とりたてて良くもない。
要するに、乙一という作家に対する私の印象は、この作品を読んでも、やっぱり変わらなかったということだ。
1回読んだら、じゅうぶんかな。
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