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「クラインの壷」  岡嶋二人 著

怖いですよ、この小説。
ことにゲーム好きな人は、背筋ゾゾゾーーーですよ。 

ちょっと前に書店で平積みになっているのを見かけて、「なんで今ごろ?」と不思議に思ったんですけど、講談社文庫から再発刊されたようです。

この小説、初版は平成元年。
私が新潮文庫で読んだのも、かれこれ10年くらい前。
家の本棚の奥をあさってみたら、あった、あった。
ページが黄色く変色してるし、講談社文庫に比べると文字が小さいんだけど、委細かまわず読み返してみました。

やっぱり、怖いわ。
 
 
ネタバレにならない程度にあらすじ。(う~ん、難しいな)

主人公は、学生時代に応募したゲームのシナリオが採用されたことがきっかけで、最新鋭ゲーム機のテストプレイヤーに選ばれた青年。

そのゲーム機「クライン2」(別名:クラインの壷)は、人間の全感覚を完璧にシュミレートしてしまうというとんでもない代物だった。
クライン2でプレイすると、現実と見まがうような感覚でゲームの世界を体験できるのだ。

夢のような最新鋭ゲーム機の最初のプレイヤーとなり、興奮を隠せない主人公。
おまけに、もう1人のテストプレイヤーは、可愛い女の子だ。
それは、素晴らしいひとときになるはずだった。

が・・・
テストプレイ中に聞こえてきた「戻れ」という謎の声。
主人公の周囲で、何かが狂い始めた。

・・・って、このへんにしておきましょう。
 
 
「クラインの壷」というのは、幾何学理論の1つで、メビウスの輪の立体バージョンだそうです。

メビウスの輪は、ここで説明するまでもないでしょう。
表だと思っていたらいつの間にか裏に行っちゃってた。っていうか、どっちが表でどっちが裏なの?
・・・っていう、あれです。

クラインの壷はそれを四次元にしたもの・・・って、もうそれを聞いただけで私なんぞは理解する努力を放棄したくなってしまいます。
間違っても、私に解説を求めないように。
本編中で上手く説明されてますので、そちらをお読みになって下さいまし。
 
 
最近、ゲームが青少年に与える影響について声高に叫ぶ人々が現れたり、残虐ゲームの販売を一部規制したりする自治体が現れたり、と、ゲーム周辺はなにかと騒がしいです。

たとえばバイオレンスなゲームをしている時、人間の脳は本当にそれを体験していると錯覚をおこしているらしい・・・という研究結果も発表されました。(あくまでも、現段階では「らしい」のようですが)

人間の脳は、ずいぶんと騙されやすいもののようですね。

プレステ程度の疑似体験でその調子では、クライン2なんてものが本当に存在したら、コロっと騙されてしまいますよ。間違いなく。
 
 
最後になりましたが、この作品は井上夢人さんと田奈純一さんという二人の作家の合作です。
「岡嶋二人」というのは、お2人が合作で作品を発表する際のペンネームです。(「クラインの壷」を最後に、コンビを解消されたようですが)

井上夢人さんは「どちらが表で、どちらが裏か?」みたいな構造がお好きなのか、「プラスチック」という作品でも「どちらが表で、どちらが裏か?」的な状況を作り出し、読者を混乱の渦に突き落としてくれています。
こちらも怖いです。
 
  
 
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