「流星ワゴン」 重松 清
「死んじゃってもいいかなぁ・・・」
リストラで職を失い、家庭は崩壊した。
積極的に死のうという気力すら無く、そう呟いた男の前に、不思議なワゴン車が現れる。
赤ワイン色のオデッセイ。
「素敵な家族」を乗せるのに、うってつけの車。
でも、その車に乗っていたのは、5年前に事故死した父子だった。
ワゴン車は、男を過去へと運んで行く。
そこは、男の人生において重要な意味を持つポイントなのだが、男にはどうすることもできない。
突きつけられた現実に、ただ苦痛を覚えるばかり。
そんな旅のさなか、余命幾ばくも無い父が、男と同年代の姿で現れる。
自分と同い齢の父や、ワゴン車の父子と接し、過去の「ある日」を繰り返すことで、男の中で何かが少しずつ変わって行く。
やがて、男がワゴン車を降りる時が来る・・・
この男が(それこそ、バック・トゥ・ザ・フューチャーばりの)大活躍をして、素敵な未来を勝ち取ったりしたら、ごくごく普通のファンタジーだっただろう。
それはそれで面白いかもしれないが、この物語が言いたいのは、そんな単純なモノじゃない。
一言で言えば、これは「父と息子の物語」だ。
父と息子の間には、決して女が立ち入ることのできない絆があると思う。
でも、その絆はとても脆く、簡単に壊れてしまう。
おまけに、お互いに不器用だったり、意地っ張りだったりするものだから、いったん壊れてしまった絆を修復するのは非常に難しい。
それでも、わずかなきっかけで、取り戻すこともまた可能なのだと、この物語は伝えたいのだと思う。
この本は、誰かの父親である人に、間違いなく誰かの息子である人に、おススメしたい。
涙無くしては、読めないんじゃないかな?
女性である私も、あちこちでウルウルしていたので、女性にはおススメできないってわけじゃない。
ただ、父と息子の関係に、少しばかりの嫉妬を感じるかもしれない。
もっとも、母と子の間にも、父親には太刀打ちのできない絆が存在しているから、ここはひとつ、「おあいこ」ということで手を打つとしよう。
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