*ストーリー
ワイルドアームズならではの難解な単語の羅列、赤面するほどクサい台詞、これらは今回も継承されているけれど、キャラの描き込みはこれまでのシリーズ作品に比べるとかなり足りない気がする。
「泣き虫」のはずのユウリィはちっとも泣かないし。
「近寄りがたい」はずのラクウェルは、最初から気さくなお姉さんだし。
「いくじなし」のはずのアルノーは一応そういうイベントは有ったものの、すぐに開き直って、フト気付けば頼れるお兄さんになってるし。
アルノーが主人公じゃないのか?っていうくらい、成長してます、この人。
オープニング曲の歌詞も、よーく聞いてみるとアルノーのための歌のようにもとれる。
子供たちが大人を乗り越えて、新しい世界を作って行くという物語なんだけれど、大人たちがことごとくおバカさんで魅力に乏しい。
大人がアレでは、乗り越えても大した成長は見込めない。
頭数が多いだけで、みんなパッと出てきて、即、退場。
あまりに影が薄くて、ほとんど記憶に残らない。
今回は敵サイドもファルガイアの未来を憂えているわけで、「勧善懲悪」ではないのだから、主人公サイドと同じ比重で描いてもいいくらいだと思うのだが・・・キャラ設定が濃いだけに、勿体ない。
だいたい、主人公たちは深く考えもせずに、前に立ちはだかる大人たちを殺している。
次第にブリューナクの行為が世界を脅かすということが明らかになって行くものの、途中までは自分たちが逃げるのを邪魔するからというだけの理由で殺している。
そうしておいて何の反省も無い。
ブリューナクの面々がなぜそういった行動をとるのか、考えてみようともしない。
これは、あまりに酷い。
こんなお粗末な内容のストーリーで、「CERO全年齢」の評価をもらって良いものだろうか?
邪魔な大人はすべて蹴散らして行けば良いと勘違いする子供が現れないとも限らない。
画面に血が飛び散らないだけで「無害」なのか?
銃でゾンビを倒しながら進むゲームの方がよっぽどマシなのではないかと、私などは思ってしまうのだ。
とにかく、このストーリーは最低の出来である、と、私は判断する。
*各種システム
アウトフィールドが無いッ!
ポイントを選んで移動する方式になってしまったため、荒野を旅している感覚が消えてしまった。
情報を集めなければポイントすらマップに現れない状態で、次の目的地を求め荒野をさまよい歩くのが、ワイルドアームズの魅力の1つだったと思う。
たしかに、ストレスは無くなったけれど・・・
アクションがキツい!
マリオ系アクションが苦手なプレイヤーには、かなり苦痛なゲームになってしまった。
これまでも多少は素早い操作を要求されることはあったが、ここまで際どいものではなかった。
このテのアクションを得意とするプレイヤーと、ワイルドアームズのファン層は一致しないような気がするのだけど、どうでしょう?
GCグラフ
もっと成長しなければ習得できないアビリティを前倒しで(仮)習得できるので、とても便利。
その局面に合わせて仮習得するアビリティを変更すれば、有利にバトルを進められる。
また、覚えたアビリティのオン・オフの切り替えができるのは、ユニークな試みだと思う。(あまり、利用しなかったけど)
どうせなら、各パラメータにもポイントを割り振れるようにして、自分好みのキャラに育てられたらもっと良かったのに。
装備品変更が復活
これは、個人的には面倒くさいだけだった。
先に書いたGCグラフをもっと内容の濃いものにしてキャラの増強をはかり、装備品はバッジのみで若干の調整をする・・・くらいで十分。
もっとも、装備品が変更できないというだけでクソゲー呼ばわりするプレイヤーも居るので、この辺りは好みの問題かな。
カットインッ!
各キャラとも数パターンのカットしか用意されていないため、すぐに飽きる。
どうせ細かな表現ができないのなら、いっそのこと顔アイコンとテキストのみの、古典的手法の方が読み込み時のストレスが無い分よほど快適だったのでは。
グッズがぁ・・・
キャラ固有ではなくなり、そのため、先頭キャラの変更もできなくなった。
ツマラナイ。
これでは、普通のRPGだ。
しばらく進んでからグッズが必要なことが判明し、ずっと前のフロアまで拾いに戻らなくてはならない。そのつどエンカウントで死にそうな眼に遭う・・・これは辛い。とっても、辛い。
*バトルシステム
今回の目玉「HEXバトル」は、予想に反して面白かった。
同一HEXに居る敵を一気に片付けたり、逆にこっちが一気に片付けられたり、スリル満点。
たとえ全滅してもペナルティ無しでやり直せたり、戦闘終了後にHPが全回復しているなどプレイヤーを甘やかしていると思える点もある。
その反面、一撃でHP半分削っていく雑魚がいたりして、戦力バランスの面では正直言ってあまりよろしくない。
コンビネーションアーツが任意で発動できるようになったのは嬉しいのだが、同一HEXにキャラを集めると、下手すれば全滅の危機を呼び込むため、使いどころが難しい。
*まとめ
これはワイルドアームズなのか?
シリーズ通してプレイしてきたファンの多くが、そう感じたのではないか。
たしかに、それらしいテイストは残っているし、共通して登場するパーツがゴロゴロしている。
でも、「よりによって、なんでアレを削るかな?」というワイルドアームズならではの要素が、スッパリと削られてしまっているのだ。
おかげで、他のRPGと区別がつかない代物になってしまった。
そう、ワイルドアームズとして評価しなければ、それなりに良く出来たRPGだと思う。
それは間違いない。
ただ、シリーズ通してのファンとしては、ガッカリ・・・なのである。
というわけなので、過去のシリーズ作品に強い思い入れのある人は、手を出さない方が無難。これはまったく別物と割り切ってプレイできる自信があるのなら、止めはしないが。
このシリーズをプレイしたことの無い人には、十分に楽しめる作品に仕上がっていると思うので、興味があるのならプレイしてみて欲しい。(熱烈にオススメはしないが)そして、この世界観が気に入ったら、過去のシリーズ作品をプレイしてみるといいかもしれない。
なんとなく、この作品は起爆剤というよりも、むしろワイルドアームズの入門用として位置づけた方が、評価が上がるような気がするのは自分だけだろうか。
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