カテゴリー「書籍・雑誌」の49件の記事

2009.05.13

こんな本を買ってみた。

タイトルはそのまんま「仏像の本」

ぜんぜん知らなかったのだが、最近、仏像ブームらしい。

「少し仏像のことを勉強してみようかしら?」と思い本屋さんに行ってみたら、仏像について解説した本が何種類も平積みになっていた。
超初心者向けのものから、かなり専門的なものまで・・・

はぁ・・・そうか、ブームだったのか。
「仏像萌え」とか言ってるのは自分だけかと思ってたわ。

まぁ、そのおかげで、こういった本が簡単に手に入るから助かる。

数ある仏像関連本のなかで、これは最も初心者向けではないかと思う。
仏像の姿形や名前の意味など、仏像たちに関する様々なことが、ゆるりとしたイラスト入りで易しく優しく書かれている。
「仏像のことを、もう少し分かるようになりたいんだけど、小難しい学術書みたいのはちょっと敷居が高いわぁ・・・coldsweats01」というレベルの人(まさにアタシだ)に最適だろう。

「さぁ、勉強するぞ!」と気合い入れる必要はない。
「ぱらぱらと適当にページを繰りながら、気になったところに目を通す」というお手軽な読み方ができるのがいい。

そんな読み方でも、何気なく眺めていた仏像に込められていた意味が、少しずつ分かって来た。

「御名前は存じ上げておりますが・・・coldsweats01???」状態だった御方たちが、どういう立場におられる方々なのかなんとなく掴めて来た。

この本を読んでもっと勉強したくなったら、更に詳しく解説されている本を読んでみればいい。
 
折しも、東京国立博物館では、仏像界のスーパーアイドル興福寺の阿修羅像が公開中だ。
アタシも行きたかったんだけど・・・
入場待ち30分から1時間
中に入っても黒山の人だかりで、ゆっくり拝める状況ではない
と聞いて、二の足を踏んでいる。

狙いめは、夕方らしい・・・

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2009.01.18

おめでとうございます。

先日、第140回芥川賞と直木賞の発表があった。
まぁ、詳細は他のところでいくらでも書いてるから省略してもいいか。

直木賞は2作品で、そのうちの1作品が天童荒太氏の「悼む人」

天童荒太さんは、いつか、そのうち直木賞を取るんだろうなぁ・・・と、思っていたから、なんだか「そうか、やっと取ったか」という気がした。

この人の作品は面白いんだけど、重くてな。

前に「あふれた愛」っていう短編集を読んで、どーんと落ち込んで3日くらい立ち直れなかったことがあったっけ。

「家族狩り」なんかは、テーマは重くてもミステリー物としても楽しめるからまだ良かったんだけど。

受賞作の「悼む人」も、なかなかヘヴィな内容のようで。

これを機に、積みっぱなしになっている「永遠の仔」でも読んでみるか。
(ゲームだけでなく、本も積んでる・・・)

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2008.12.19

落涙注意

書店でたまたま手に取った本。

 「捨て犬のココロ」

ごくありふれた子犬の写真集だと思った。

ページを繰るうちに、そうではないことに気づいた。

それでも、そのまま最後のページまで見てしまったアタシは、書店の片隅で必死で涙をこらえていた。

少しでも多くの人に、この本を手に取ってもらいたい。

人間の身勝手故に消されてしまう、彼らの鼓動を感じてほしいと思う。

涙もろい人や動物好きが立ち読みするなら、それなりの覚悟の上で。

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2008.12.11

素材集

本屋さんをウロウロしていて、たまたま見つけて衝動買いしてしまった・・・

イラストレーターやフォトショップなどで簡単に加工できる、レース模様のフリー素材集です。
シンプルなものからゴージャスなものまで、緻密で繊細なパターンがぎっしり。
ただし、帯に書いてある「2940点」っていうのは、ちょっと・・・
色違いとかファイル形式違いとかを全部カウントしてその数なので、実際のパターンはもっと少ないです。

でも、こういう素材集って収録点数が多くても使いそうも無いのが大多数だったりするのですが、これは実際に使えそうなのばかりで大満足です。

素材集を買うと、ブログの模様替えをしたくなります。
(今のデザインにしてから、だいぶ経つもんなぁ・・・)
制作意欲を盛り上げるためにも購入したんだけど、こういうのを眺めているだけでもシアワセな気分になるんですよね。
(って、そこで満足してはイカンのだ)
 
 
こっちは、だいぶ前に購入したもの。
加工がしやすいし、やっぱり「使える」柄が多くて気に入っているので、ご紹介しておきます。

和柄の素材集ってけっこう出てますが、なかなか使えそうなのが無くって・・・
いろいろ見比べて、やっと決めたのがこれでした。

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2008.09.01

「グラスホッパー」 伊坂幸太郎 著

ハードボイルドファンタジー?
そんなジャンルは恐らく公式には存在しないだろうが、この小説はそうとでも言うしか無いような気がする。

なんたって、殺し屋がゴロゴロと出てくる。
人もバンバン死ぬ。
怪しげな連中がうごめく、いわゆる「裏社会」のオハナシだ。
インファナルアフェアだ、アンタッチャブルだ、ゴッドファーザだ。いや、そこまでは行かないか。

そのくせ、バラバラだった物語がくっつくように登場人物たちを導く「つなぎ」は、誰かの妄想だったりする。
ハードボイルド小説愛好家に怒られそうな非現実的な展開を見せる。
でも、それが「普通」なのが伊坂幸太郎ワールドなのよね。

この作品は(伊坂作品にはよくあることなのだが)多視点・一人称で、ほぼ同時進行で異なる人物のエピソードが綴られていく。

今回の主人公は3人。

1人めは鈴木。

妻を殺した犯人への復讐を企んでいる男。
遊び半分に人を轢き殺しておきながら、法の裁きを受けることも無く、犯人はのうのうと生きていた。
そのため、その男の父親が経営する会社(とは名ばかりの犯罪組織)に潜入し、その機会をうかがっている。

2人めは鯨。

巨漢ゆえに「鯨」と呼ばれるこの男の職業は、殺し屋。
自らは直接手を下さずにターゲットを自殺させるという、一風変わった手口を用いる。
ある種の「暗示」能力を備えていると言うべきなのだろうが・・・
「側に居られるだけで気が滅入って死にたくなるような男」というのも、広い世の中に1人ぐらいは存在するかもしれない。
鯨は、これまでに自殺させて来た人たちの亡霊に悩まされている。

3人めは蝉。

「ナイフ使い」という、きわめてオーソドックスな手法を得意とする、これまた殺し屋。
鯨などに比べれば、かなりリスクの高い方法を用いながら平然と数々の仕事をやってのけているところを見ると、腕は良いのだろう。堂々と自慢できる類いの能力ではないが。
彼は自分の上司にあたる人物に対して強い不満を抱いている。
 
 
そして、この3人の中心に居るのが「押し屋」
「押し屋」は道路や駅のホームで、人ごみにまぎれて、そっとターゲットの背中を押す。
要するに、これもまた殺し屋だ。
 
 
ある日、鈴木が復讐しようと狙っていた男が、「押し屋」とおぼしき者の手にかかって轢死する。
それをきっかけに、鈴木、鯨、蝉の3人が、それぞれの理由で「押し屋」を追い始める。

三者三様の焦燥や葛藤が原動力となり、最初は緩やかに、次第に速度を速めながら、終盤は急速に「押し屋」へと向かって3人が集結して行く。
実は、読み始めた時は遅々としてページが進まず、あやうく途中で放り出しそうになったのだが、物語の展開が勢いを増すに従い、私の読むペースも俄然スピードアップした。
 
 
ちなみに、「グラスホッパー」とは、イナゴとかバッタとかキリギリスとか・・・要するに、バッタ的な昆虫の総称だ。
バッタは、物語の中で重要なキーになっている。

バッタの「群集相(同じ種族が密集している場所では、凶暴で特異な能力を持ったバッタが生まれてくる)」と人間の姿を重ね合わせ、都会で暮らす人間は凶暴な「群集相」で溢れかえっていて、都会は穏やかに生きて行くのは難しい場所である・・・
「押し屋」(と目されている男)が、そう、鈴木に語って聞かせる。

それで、「押し屋」は凶暴な人間を殺すことで、穏やかに暮らせる世の中にしたいのではないか、と鈴木は考え、この男が「押し屋」であると確信するに至るのだ。

「押し屋」がそんな話を持ち出すきっかけを作ったのは、昆虫カード集めに熱中する少年だった。
あまりに唐突なたとえ話を唐突でなくすために、昆虫カードは一役買ったことになる。
昆虫カードは、他にも意外な所で役に立ったりする。
単なる小道具ではないのだ。
ちゃんと、意味がある。よく出来ている。
 
 
語り手3人ともを「殺し屋」にしなかったところが、良いと思う。
一番危なっかしい、そして唯一「殺し屋」を職業としていない鈴木が、誰よりも先に「押し屋」の元に辿り着く。
鈴木の目を通して描かれる「押し屋」(と目されている男)は、実に魅力的だ。

もの静かで理知的。
実に家庭的な良き父親である。

もしも彼が、いかにも殺し屋然としたキャラだったら、鈴木は自分の身を守るために即座に組織の連中に売り渡していたかもしれない。
いや、でも、きっと、優秀な殺し屋ほど、何気ない顔をしてすぐ隣に居たりするのだ。
「いかにも」な人物が目の前に現れたら、誰だって警戒する。仕事は上手く行かないに決まってる。そうに違いない。
 
 
さて、嵐のような事件が終息し、鈴木は新しい一歩を踏み出そうとする。
最後のシーンは、駅のホーム。
駅のホームは「押し屋」の仕事場ではないか。

一抹の不安を感じたのは、私だけだろうか?

社会の裏側を覗き込んでしまった鈴木は、こちら側に帰って来られたのだろうか。
向こう側で出会った中には、なかなか魅力的な人たちも居ただけに、ちょっと心配だ。
 
 
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2008.04.22

「死神の精度」 伊坂幸太郎 著

そうですよ、また伊坂幸太郎ですよ。
この「死神の精度」は映画化されて今まさに公開中だし、つい最近、「ゴールデンスランバー」が本屋大賞に選ばれたばかり。
今、伊坂を読まずしてどうするって感じ?
 
 
「死神の精度」の主人公(というのは微妙に違う気もするが)は、死神。
おとぎ話に出て来るような、黒いローブを身にまとい、手には大鎌を・・・という、あれとはぜんぜん違う。
我々と何ら変わらぬ姿で現れ、地名にちなんだ苗字を名乗る。
死神ゆえに我々とは感覚がズレていて、時に、トンチンカンなことを口走ったりする。
大の音楽(死神的に言うとミュージック)好きで、ミュージックを聞きたいがために、面倒くさいと思いつつも人間界にやってきて、適当に仕事をこなしている。
この物語の主人公、死神・千葉に限っては、彼が仕事をしに来ている時は、いつも決まって雨降りで、千葉は晴天を見たことが無いという。

彼ら死神(死神は何人もいる)の仕事は「人の生死を判定すること」
・・・なんて言うと聞こえがいい(?)けれど、「情報部」と言われる「部署」から指示を受け、一週間後に事故や事件で死ぬ予定の人間を1人、担当させられるに過ぎないのである。
死ぬ予定の人間が、どういう基準で選ばれているかは、(部署が違うので)死神も知らないし、知ろうとする気も無いらしい。

そうして、死神は自分の担当することとなった人間と接触したり様子を観察したりして、「死」を実行するかどうかを判断する。
死神が報告書に「可」と記入して提出すればその人間は予定通りに一週間後に死に、「見送り」とすれば少なくとも一週間後には死なない。

人間にとってはとてつもなく重大な判定を担っているのだけれど、死神にとっては単なる「仕事」。
職務怠慢・・・なのではなく、(仕事なので)極めて事務的に日常業務をこなしているというスタンスなのである。

死神は総じてミュージックが好きなようで、ミュージックに夢中になるあまり、肝心の仕事の方がおざなりになって、ロクに考えもせずに「可」の報告をしてしまう死神も居るらしい。

そこへいくと、この物語に登場する死神・千葉は比較的良心的で、自分の担当する人間と1週間つきあってくれる。
(その千葉も、スキあらばミュージックを聴きに走ろうとするが)
 
 
「死神の精度」では、その死神・千葉が担当する6人の人物の最後の一週間が綴られて行く。

電機メーカーの苦情処理係に勤める電話オペレーターのエピソードから始まり、雪に閉ざされた山荘で起こる連続殺人事件やら、切なく淡いラブストーリーやらを挟んで、海を見下ろす高台で美容室を営む老女の物語へと集約して行く。

千葉の担当する人間は実に様々。
冴えないOLだったり、ナイーブな恋する青年だったり、幼少時のトラウマを抱えたキレやすい男だったり。
抱えている事情も置かれている環境もそれぞれに異なり、1つ1つのエピソードに謎がありサスペンスがありロマンがある。

そんな、てんでバラバラで雑多なエピソード群は、死神・千葉の目を通して描かれることで、独特のそして統一した色を帯びる。

なにしろ、相手は死神。
我々とは感覚が違う。
彼の目を通して見る人間の「死」は、それ以上でも以下でもない。
彼の担当する人間達の抱えて来た「人生」に対しても、死神・千葉は何の感慨も持たない。何のコメントも無い。
でも、読んでいるこちらは人間なので、千葉の担当する人間達に何らかの感慨を抱く。
言及されない、向こう側にある想いを、感じ取ることができる。

それを理解できずに首を傾げる死神との感覚のズレ。

その「ズレ」こそが、この「死神の精度」という物語の核だと思う。
「死」を扱いながらも、どことなくユーモラスで清々しささえ感じてしまうのは、その「ズレ」が在るからだ。
 
「死神の精度」は6編からなる短編集の体裁をとってはいるものの、そこは、伊坂幸太郎。この人お得意の仕掛けが仕込まれていて、単なる短編集では終わっていない。
巧いなぁ・・・
読み終えて、思わずそうつぶやいてしまった。
「仕掛け」自体はべつに目新しくもなんともないんだけども、この人がやると嫌らしくもなくワザとらしくもない。
「あぁ、そういうことだったのねぇ」と、すんなり素直に受け入れることが出来る。
月並みな表現で言っちゃうと、「センスが良い」ってことなんだと思う。

床屋の主人のセリフで幕を開けた物語が、美容師の老女のセリフで幕を下ろすのも、憎い演出。
千葉が「雨男」なのも、単なる「キャラ設定」ではない。

そうそう、「旅路を死神」で、千葉たちが奥入瀬に向かう途中で出会う「塀に落書きをしている青年」は「重力ピエロ」の春だよね。
いかにも、春が言いそうなこと、喋っているもの。
他の作品と「繋がってる」のも、伊坂幸太郎の小説では、よくあること。
その「繋がり」を見つけてニンマリするのも、ファンの楽しみの1つであるのだ。
 
 
映画化するにあたって選ばれた3編から察すると、映画は原作とは多少違った内容に仕上がっていると思われる。
それが、どう、作品に影響するのかは見てみないと何とも言えないが、死神・千葉を演じるのが金城武ってのは、悪くない。
クールで我々人間とは感覚がズレてて、どことなくお茶目に見える千葉(でもって、概ねイイ男の姿で現れる)に、これほどふさわしい人選があるだろうか。
映画館まで足を運ぶ気にはならないけど、そのうち機会があったら見てみたいと思う。

映画・・・といえば、「重力ピエロ」も映画化されるんだよね。
伊坂幸太郎の本はたくさん読んで来たけど、何を隠そう、一番最初に読んだこの「重力ピエロ」が、アタシは一番好きだから、映画化についてはとっても微妙なんだけれども・・・
息子2人の配役はともかく、お父さんは小日向文世さんなのだ。
小日向さんが、あのお父さんの最後のセリフを言うシーンだけは見てみたいなぁ。

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2008.03.28

「ねこのばば」 畠中 恵 著

超虚弱体質な若旦那と、彼を取り巻くちょっとズレた妖怪たちが、花のお江戸を舞台に難事件・珍事件を解決して回るファンタジー風味の捕物帳、しゃばけシリーズ。

自分にとっては、これが3冊め。
前回の「ぬしさまへ」に続き、今回も短編集で、ほんのり切ない5編が収録されております。

舞台こそ「江戸時代」ですが、どれもこれも今の世に通じるお話ばかり。
時代が移っても、人の心なんぞは大して変わらないものなのでしょう。

「茶巾たまご」は、若旦那の兄・松之助に降って湧いた縁談話の裏に隠れていた悲劇。
「花かんざし」は、ひょんなことから拾った迷い子をきっかけに、さる大店の抱えていた悲しい事情が明らかになる。
「ねこのばば」は、化け猫騒ぎがあったりするけど、実はもっとも現代的な話し。
「産土」は、佐助をフィーチャーした、ちょっとホラーなお話。
「たまやたまや」は、若旦那の幼なじみ、お春ちゃんの縁談をめぐる、若旦那の大冒険。

どれもこれも、悲しかったり、恐ろしかったりする、人の心の暗い部分を見せつけるものばかりなんだけれど、全体を通してみれば陰々滅々たる雰囲気はあまり感じません。
それは、ひとえに若旦那の人柄に負うところが大きいのでしょう。
おっとりとしているようで居て芯は強く、心優しく、賢い。
そんな若旦那の一言一言に、救われるような想いを抱きます。
それと、側に控える仁吉と佐助の存在も忘れてはいけません。
アヤカシゆえに、人とはちょっとピントがズレていて、大事な大事な若旦那のこととなると見境なくなってしまう・・・
齢数百年は間違い無しの、立派な妖怪のはずなのにね。
「たまやたまや」の突入シーンは、思わず笑ってしまいました。

今回、一番印象に残ったのは「産土」
他とは少し雰囲気の違う展開を見せます。
「なんか変だな?」と思いつつも読み進めて行ったら、衝撃的な結末が!!!
未読の方の興味を削ぐといけませんから書きませんよ。
無骨な感じのする佐助ですが、ようやく彼の心情を垣間見ることが出来て、今後、彼を見る目が変わりそう。
長く生き続けなければならないアヤカシも、いろいろ大変だなぁ。

短編なので、とても読みやすい。
読みやすいけれど、その分、物足りなさも少々感じます。
そろそろ、じっくりと長編も読みたい。
・・・と、言いつつ、既に手元にある「おまけのこ」も短編集なんだな。

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2007.11.03

「ZOKU」 森 博嗣 著

法律には引っ掛からない、でも、ちょっと迷惑なイタズラを仕掛ける非営利団体(?)「ZOKU」
その悪行を阻止すべく奮闘する正義の組織「TAI」
そんな両者の割とどうでもいい対決を描いた、なんだろう?コメディ???

とにかく、ぶっ飛んでる。

両者のアジトは、それぞれ黒塗りのジェット機と白塗りの機関車である。
そりゃぁ、もう、やたら目立つし、身動き取りづらくてどうしようもないと思うのだけれど・・・
いずれもボスの趣味だから仕方がないと、両組織員一同、諦めているようだ。

ZOKUもTAIも、どう考えても金と暇を持て余した爺さんたちの道楽にしか思えないのだけれど、構成員たちはいたって真面目に任務に励んでいる。
と、いっても、構成員はどちらも2〜3人の家内制手工業的規模の組織。
見てくれがハデな割にはスケールは小さい。

そして、ZOKUの仕組むイタズラは、故意ではあるが悪意は無い。
他愛のない、おバカなものばかりで、金と手間ひま掛かってるわりには実害はきわめて少ないのだ。
被害者たちは「あれ、なんかちょっと変だな???」程度にしか感じていない。
その程度の「不思議」は、話しの種になるし、平凡な日常を彩るちょっとしたスパイスになる。
ZOKUの連中は、世間の人たちが困る様を見て喜んで・・・いるのかどうかも定かではなく、もちろん、彼らにはなんの利益も無い。
ZOKUは、退屈し切った人たちに刺激を与えてくれる、ある意味ボランティア団体なのかもしれない。

それを解明&糾弾する役割を担うのがTAIなんだけれども、どれもこれもすぐにネタがバレるので、多大な労力を消費しているのはもっぱらZOKU一味の方。
TAIの方は割と余裕で、もっぱら他のことにかまけている。
ノノちゃんは恋をするのに忙しく、その想いを寄せる相手は小難しい研究に没頭する日々。
無駄に一生懸命なZOKU一味を、片手間に相手してやってるTAI
・・・という図式が成り立っている。

登場人物が、濃いキャラぞろいである。
きわめつけは、ZOKUの実動部隊ナンバーワン、ロミ・品川だろう。
黒のレザースーツにマントを羽織って恥ずかしげも無く登場なさったりする。
誰がどう見ても(いや、若い子は知らないだろうが)ドロンジョだ。

まるでマンガみたいなセリフが、ポンポンと飛び出して来る。
テンポが良いと言えなくもないけれど、なんだろう、この感じ。
ロミ・品川のセリフに昭和の匂いが漂うのは、彼女がそういうキャラだから、それで良いのだ。
平成っ娘のノノちゃんとの会話の噛み合なさを際立たせるためにも、彼女はそういう語りをしなくてはならない。
ただ、全般的に、痛々しさが漂っている気がする。
今っぽく見せようとして、無理して今っぽいセリフを並べたんだけど、やっぱりしっくり来てないというような違和感。
ほら、オヤジが無理して若者言葉使ってる、あの痛〜い感じが、この小説全体を覆っている気がするのだ。
作者があえて狙ってやったのなら、それもアリなのかもしれないけれど・・・
たとえば伊坂幸太郎のセリフ回しのセンスの良さに比べると、なんかなぁ・・・という感じ。
 
森博嗣は推理小説を書く人だと思っている人が読んだら、「なんじゃ、こりゃ?」と思うだろう。
一応、謎はあるけど、凝った謎解きものは、この小説に期待しないこと。
ZOKUの仕掛けるイタズラに、翻弄されたりされなかったりしている人たちの姿を垣間見て、クスッと笑っていればそれでいいのだ。
実は、最後の最後に明かされるネタ。
それこそが、我々読者に仕掛けられた、もっとも壮大にして深淵な「イタズラ」だったことが明らかになるんだけどね。

とにかく、マンガっぽい奇天烈な話しなので、アニメにでもしたらウケるかもしれない。
やっぱりドロンジョだ・・・


追記:
ドロンジョを知らない人は、「ヤッターマン」もしくは「タイムボカンシリーズ」で検索してみよう!
 
 
 
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2007.08.24

「狐笛のかなた」 上橋 菜穂子 著

[あらすじ]
主人公の少女・小夜は、里外れの森の中で祖母と2人で暮らしている。
みんなには内緒にしていたが、小夜は人の心が聞こえてしまう「聞き耳」という不思議な力を持っていた。
ある日、小夜は森の中で傷ついた子狐を助ける。
子狐を抱えて猟犬から逃げる小夜をかくまってくれたのが、小春丸と名乗る少年。
彼は、訳あって森の奥のお屋敷に閉じ込められるようにして暮らしていた。
その日から、大人たちの目を盗んで度々会うようになった小夜と小春丸だったが、それも長くは続かなかった。

それから、数年後。
祖母を亡くし、一人きりになってしまった小夜は、買い出しに出かけた市場で自分のことを知っている人物に出会う。
自分の生い立ちと、母から受け継いだ能力を知った小夜は、次第に大人たちの争いに巻き込まれていく。
そんな中、小夜は不思議な目をした少年と出会った・・・
 
 

***

物語の舞台は「和」の雰囲気を持つ架空の世界。
無理矢理に当てはめるとすれば、日本の戦国時代あたりが妥当だろうか。

領土を巡り、何代にも渡って争う2つの国がある。
領主たちはそれぞれ海を越えて渡って来たという呪者を使い、攻防を続けていた。
小夜たちの住む春名ノ国には、怨嗟と呪詛と血の臭いが充満する。
でも、物語全体を見通してみると、さほど暗さは感じない。
日だまりの匂い。土の匂い。
川のせせらぎや木々を揺らす風の音。
都会育ちの現代人のアタシにも、何故か懐かしいと思わせてしまう風景が浮かび上がる。
そして、そんな世界を涼やかに駆け抜けていった小夜と野火の姿が、清々しい印象を残してくれた。
 
 
人とは違う能力を持ち、人里離れて暮らす孤独な少女・小夜。
過酷な生い立ちを持つ彼女は、それを不幸と嘆くことも無く、ひっそりと慎ましく生きていくことを望んでいる。
逃げようと思えば逃げられたものを、後に残る者たちのことを想い、危険と知りながら敵に立ち向かう道を選ぶ。
優しく、強く、濁りの無い心を持った少女である。
 
 
そんな小夜を、ずっと陰で見守って来た野火。
野火は、カミガミの住まう世とこの世との境「あわい」で生まれた霊狐で、呪者の術によって使い魔にされていた。
小夜に命を助けられ、その温かい心に触れた野火は、主に命じられるがまま生き物の命を奪うたび、心に痛みを覚えるようになっていた。
さらに、長いこと人の形を取って来たことが拍車をかけ、より人に近い心を持つ、霊狐とも人ともつかない曖昧な存在になっていた。

小夜の身に危険が迫った時、野火は壮絶な決意をする。
一切の迷いも無しに。
主である呪者の命令に背けば、命を失うというのに。
命を主の手に握られ、主に従って働くしか無い野火の苦しみと、その中で守るべき者を得た彼の喜びは、切なく胸に突き刺さる。
 
 
とにかく、この小夜と野火が良い。
ただ彼らがそこに居るだけで、大人になってしまったアタシなどは、胸の奥が揺さぶられるような気がする。
大人になると、なんと色々なものが見えなくなってしまうのだろう。
大朗や春望が良い例だ。
過去の亡霊に取り憑かれて身動き取れなくなっている大人たちと、自分の想いとまっすぐに向き合う若い2人。
小夜と野火だけでなく、大朗や春望らの抱える事情や心情もきちんと描くことで、片手落ちにならず、大人が読んでも十分に感動できる深みのある物語になっている。
主要なキャラだけでなく、端役のキャラまで実に魅力に溢れていた。
特に、野火の仲間の霊狐・玉緒や、野火の友人で天狗見習いの木縄坊などは、それぞれを主役にして物語が1本書けてしまいそうなほど。

そして、忘れてはいけないもう1人。
大人の事情によって、素性を隠し、人里離れた森の中の屋敷に幽閉されるようにして少年時代を過ごして来た小春丸。
彼は敵方の呪者に呪いを掛けられてしまうけれど、それ以上に深い呪いが彼の心には巣食っていた。
大人たちの争いの、一番の被害者だったのかもしれない。
物語の最後で、小夜と野火の姿を見た彼は、いったい何を想っていたのだろう・・・
 
 
いちおう、「児童文学」に分類される作品らしい。
そのため、固有名詞が若干覚えづらいものの、文章はとても読みやすく、物語の作りもさほど複雑なものではない。
でも、そこに込められた想いは深く、「子供には分からないんじゃないか?」と疑われる心の機微もそこかしこに見える。
子供が読んでも面白いだろうが、大人が読むと別の捉え方が出来て面白さ倍増。
実際、アタシは一気に物語に引き込まれ、続きが気になって仕方がなくて、猛烈な勢いで読み上げてしまった。
良い物語は、大人も子供も関係ないのだ。
 
難しいことは考えなくていいのかもしれない。
子供たちは小夜と野火の冒険に心を踊らせ、淡い恋物語に胸ときめかせて読めばいい。
そして、大人は・・・
醜い争いを続ける大人の愚かさを見て我が身を振り返り、澄んだ目をした小夜と野火のまっすぐな心に触れて、無くしてしまったものを思い起こし、こっそりと目頭を拭えばいい。

心の奥底に埋もれてしまった感情と、身体の奥深くに眠っている記憶を呼び覚ましてくれる。
そんな物語だった。
 
 
 
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2007.08.12

「BLACK BLOOD BROTHERS4 倫敦舞曲」  あざの 耕平 著

世間ではとっくに7巻が発売されているというのに、自分はまだこんな所でウロウロしてます。

当シリーズ長編4冊めとなる「倫敦舞曲」は、いわゆる過去話。
転化する前の「望月次郎さん」のおハナシ。
 
 
時は1895年、冬。所は大英帝国の首都・ロンドン。
留学中の大日本帝国海軍少尉・望月次郎と、その先輩・秋山真之少尉は、巷を騒がせる連続殺人事件の捜査に関わることになる。
その事件は、かつてロンドンを震撼させた「切り裂きジャック」の模倣犯で、しかも吸血鬼?と噂されていた。
事件の陰に潜む闇の世界の住人たち。
偶然、彼らと関わることとなり、次第に深入りして行く次郎。
彼は自らの剣を捧げる人と、出会ってしまったのだった。

 
 
読んでみて納得。
ジローさんの、あの「どこか間の抜けた感じ」は天性のものでしたか。
持って生まれた性質に、人里離れた山奥で、変わり者の祖父に育てられたという環境が拍車をかけて、浮世離れしたジローさんのキャラは確立された模様です。

言葉尻は馬鹿っ丁寧なくせに、どこか小馬鹿にしたようなセリフを吐いて人をけむに巻く。
優しくて、誠実で、意地っ張りで、思い込んだら猪突猛進。
心身共に鍛えられているし頼りがいは無いわけじゃないんだけど、なぁんか間が抜けていて、いまいち頼り切れない・・・
そんなジローさん像は、転化前に既に完成されておりました。

べつに、吸血気になったから、あんなキャラに変わったわけではなく、その後の100年で変わったわけでもなく。
やっぱり、この男は100年経っても成長してなかったのだ。
いや、確かに、大日本帝国海軍少尉・望月次郎は初々しいですがね。
(ケインには、キッパリ「少年」呼ばわりされてるし)
可愛くって、危なっかしくて、見ちゃいられない・・・

ジローさんが、根っからの「護衛者」だというのも、これを読んでよく分かりました。
(真之センパイに思いっきり断言されてるしな)
ジローさんが刀を振るい続けるのも、子供のころからみっちり剣術を仕込まれていた経験がベースにあるからなのですね。
明治生まれの軍人さんだと、剣術の腕前を誇るような局面はほとんど無かったはずなのに、何故、あれほどの剣技を身につけているのかという疑問も、キレイに払拭されました。
爺ちゃんに仕込まれたから。
たとえ吸血鬼となって素手でも戦えるだけの力を備えたとしても、ジローさんにとっての「武器」は刀なのね。
 
 
一方で、アリス天然説は、少々怪しくなってきました。
天真爛漫なのはそのとおりなんですがね、ああならざるを得なかったというか、ああでもしてないとやってられないんじゃないだろうかという疑念がふつふつと湧いてきました。
なにぶんにも、アリスは背負ってるものが巨大過ぎて、マトモにそいつと向き合っていたら正気ではいられないんじゃないかと思うんですわ。
あの無邪気でのほほ〜んとした態度や物言いは、彼女が生き抜くために身につけた1つの技なんじゃないか。
それを気の遠くなるほど長いこと続けて来てるから、もう、完全に染み付いて、まるで「天然」みたいになってしまっているだけなのではないか、とね、考えたわけです。
 
 
カーサ姉御の気持ちも、だいぶ分かって来ましたよ。
カーサは特異な状況で転化しているせいで、吸血鬼の中でも浮いた存在で、とても大きな孤独を抱えてる。(本当はお守役のケインも居るし、まったくの孤独ってワケではないのだろうけれど、こういうのって本人が「自分は孤独だ」って思い込んじゃうと、まわりに誰がいても目に入らなかったりするんだよね)

カーサは自分の孤独と、ずっと一人きりで生きて来たアリスの孤独を重ね合わせているんでしょう。
カーサにとってはアリスはすごく特別で大切な存在なんだけど、アリスの方は親しいことは親しいけれど、カーサが特別大切な存在かっていうと、そうでもないんだよな。
それはアリスが薄情とかそういう問題じゃなくて、アリスの存在意義からして、カーサを特別視することは出来ないんだよね。理屈抜きで出来ないものは出来ないんだからしょうがない。
それでも、カーサは自分がアリスの一番側に居ると自負していたところに、ジローさんが割り込んで来たから面倒くさいことになったわけで。
ぶっちゃけ、嫉妬だよね。
自分の居場所をジローさんに取られた格好になってしまったから。
しかも、アリスの方は、そんなことまるっきり頓着してないし。
あぁ、ホントにカーサが気の毒。
たぶん、その嫉妬が元になって、カーサの感情がどんどん変化して行って、後の大事件を引き起こすことになり、現在に至る・・・んだと思うんだけど。
今後、このシリーズを読み進めて行けば、カーサの心の変遷ももっと明らかになって行くのでしょうか。
ジローさんとアリスのバカップル100年の旅路よりも、そっちの方が気になるわ。
 
 
今回のおハナシには、実在の人物がわりと堂々と顔を出してまして・・・
次郎さんの先輩、秋山少尉は日露戦争で名を馳せた軍人。
自分は歴史通というわけでもないし、実在の秋山少尉がどのような人物だったのかは知る由もありませんが、このおハナシに登場する秋山少尉はなかなか魅力的な男です。
ブラム・ロイドは、かつてのコードネームをペンネームにして小説「吸血鬼ドラキュラ」を執筆したらしい。「ブラム・ストーカー賞」なんて、優秀なホラー作品に与えられる賞に名前が残っているほど、その筋では有名な人。
このへんの「遊び」も、楽しいです。
 
 
ジローさんのバックボーンが明らかになり、ジローさんとアリスの繋がりの強さもハッキリと見えた今作。
かなり旗色悪いぞ、ミミちゃん。
だいたい、並の三角関係じゃないからな。
むこうは転生して「弟」になっちゃっているというねじれ現象は、ミミコにとって幸なのか、はたまた不幸なのか???
とにかく、頑張れ、ミミコ。
カーサも頑張れ。(なにを?)

 
 
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2007.07.15

「エンジェル」 石田 衣良 著

いきなり、自分が殺されて何処かの山中に埋められているシーンを、幽霊になった主人公が見下ろしているという衝撃的なシーンから幕を開けるオハナシ。

ミステリーと言うか、ファンタジーと言うか・・・ある意味ホラーだし、ラブストーリーと言えなくもない。
まぁ、ジャンル分けはどうでも良いか、この際。
 
 
ネタバレしない程度に、簡単にあらすじをば。

主人公の掛井純一は母親の命と引き換えにこの世に生を受けるという生い立ちを持ち、資産家の家に生まれながら、父親の再婚を機に、多額の金と引き換えに家族とは絶縁状態になっていた。

その金を元手に、純一は投資会社「エンジェルファンド」を立ち上げたのだが、何者かに殺害されてしまう。
幽霊となってこの世に留まることになった純一は、死の直前2年間の記憶を失っていた。

自分は、誰に、何故、殺されねばならなかったのか?

純一は、自分の死の真相を探り始める。
少しずつ「死者」としてこの世に存在することに慣れていきながら、やがて「エンジェルファンド」から、世界的に有名な映画監督の新作映画への不可解な金の流れがあったという事実に辿り着く。

徐々に明らかになっていく真実。
幽霊になった彼が一目で心奪われた女性との、生前の関わり。

守るべき者を得た彼の、せいいっぱいの反撃が始まる。
 
 
きわめて暴力的な埋葬シーンから、場面は一気に飛ぶ。

純一の誕生シーンから少年時代へと、彼の記憶がフラッシュバッック。
飛び飛びに語られる純一の過去のエピソードを彼と共に辿りながら、彼がどんな人物で、どんな人生を送って来たかを読み手は感じ取ることができる。

このまま、時間旅行を続けながら失われた2年間の穴埋め作業をしていくのかと思いきや、そうはならない。
彼を死に追いやった原因が潜んでいると思われる2年間は失われたまま、場面は彼の死の直後に戻ってしまう。
たぶん、きっと、単に記憶の抜けている部分を辿っていくだけだったら、こんなに興味深いストーリーにはならなかっただろう。

幽霊の純一が悪戦苦闘している様が、とにかく良いのだ。
純一は生前よりも、むしろ生き生きと死後の生活を送ることになる。

幽霊やってるのも楽じゃ無いようだし。

一般に「心霊現象」の一言で片付けられてしまう不可思議な現象が、幽霊たちのたゆまぬ努力の賜物だったとしたら・・・
心霊番組を見る目も変わってしまいそうだ。

脅かされる側から見たら単なる超常現象でオッソロしいの一言なんだけれど、それを幽霊視点で見るとなんだか妙に説得力がある。
だから、本編中にも純一が引き起こした心霊現象が何度も描かれているんだけど、全然怖くない。
読み手は脅かされている方ではなく、その現象の裏で必死に頑張ってる純一の視点でそれを見てるから。
 
 
純一は自分を死に追いやった者たちに反撃はする。
でも、命を取ろうとまでは思わない。
純一が彼らを攻撃したのは、守るべき者を守るためだ。
純一の視線は、あくまで優しい。
凶暴な暴力団員でさえ何故か憎みきれず、何処かで彼らを許しているようにさえ見える。

タイトルの「エンジェル」には、幾つかの意味が含まれている。

ベンチャーキャピタルほど株数は要求せず、絶対的な経営権を確保しようともしないなど、金は出すが口も欲もそれほどは出さない個人投資家のことを、経営学上では「エンジェル」と呼ぶのだそうだ。
天使のようにありがたく、めったに出会えない存在という意味合いを込めて。

もう1つの意味は・・・
それは読んでいけば分かると思う。
 
 
終盤、畳み掛けるように真実が明らかになっていく。
まだ何か在るのか?
まだ在るのか?
という感じ。

そして、最後に辿り着いた真実から、いったんは純一は顔を背ける。
でも・・・

死者の目から見るこの世は、とても美しかった。
いつもなら顔をしかめてしまうような街角の光景ですら、愛おしい。
そう思ったとたん、涙が溢れ出して来た。
よくもこれだけ泣けるもんだと自分でも呆れるくらい、泣けた。

純一の最後の選択に、心からのエールを送ろう。
 
 
 
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2007.07.07

「ぬしさまへ」 畠中 恵 著

前回読んだ「しゃばけ」は長編だったけれど、シリーズ2作目となる今作品は短編集。

「しゃばけ」でスッカリ有名になってしまった超・虚弱体質な若旦那と、そのお守役の2人の手代(正体は妖怪)と、若旦那にまとわりつく愛嬌ある妖怪たちが今回も大活躍しております。

時系列的にも「しゃばけ」の後の出来事のようで、「しゃばけ」にチラリと顔を出した若旦那の腹違いの兄さんのその後の様子も描かれています。

短編集なので、どこから読んでも人間関係が分かるような気配りはされているのですが、やはり前作「しゃばけ」を読んでからの方が、理解はしやすいと思います。

若旦那の周囲には、どうして妖がウロチョロしているのか、とか
どうしてこんなにも虚弱なのか、とか

そのへんのネタも、すでに「しゃばけ」の方でバラされているんだけど、こちらの短編集ではそれほど詳しく語られていないんで。
 
 
今回は、わりと仁吉さんの出番が多め。
人の形をしている時には「色男」で通っている仁吉さんだけあって、色恋がらみのお話が2編。

特に「仁吉の想い人」では、意外な一面を見せてくれました。
一途なんだねぇ、仁吉さんは。
叶わないと知っていても、千年も想い続け、何も言わず見守っているだけだなんて。
 
 
なんとなく、切なくなるような、虚しくなるようなエピソードばかりが並んでいるのが、ちょっと気になるところ。

若旦那をはじめ、この顔ぶれだったら、「おもしろオカシイ出来事の裏に、ピリリと辛い世の無情が隠れてたりして、それに若旦那が気付いてしみじみする・・・」くらいのバランスの方が良いような気がします。
 
 
登場人物が魅力的なのももちろんだけれど、江戸風俗の描写が秀逸なのも、私がこのシリーズを気に入ってしまった理由の1つ。

読んでいると、時代劇でしか見たことの無い江戸の街並が、そこを行き交う人々の姿が、脳裏に浮かんで来るような気がします。

甘い物好きの岡っ引きが、若旦那を訪ねて来るたびに饅頭をしこたま食って帰ったり、それを妖怪たちがイヤな顔して見送ったり、そんな描写から「昔は甘いものが貴重だったんだなぁ」と自然に理解できます。
そして、そんな甘い菓子を日常的に食している若旦那は、いかに裕福な家のお坊ちゃんであることか。
 
 
なにはともあれ、若旦那は今回も頑張ってます。

「しゃばけ」の時に比べると、若旦那の推理力には磨きがかかり、少しオトナになったようにも見受けられます。

恵まれた環境に生まれ育ち、とにかくひたすらに若旦那を甘やかす両親や手代たちに囲まれていても、それに甘えていないのがこの若旦那の偉いところで、このままではダメだ、1人でどうにかしよう、と、一生懸命で好感が持てます。
若旦那が甘やかされっぱなしのグータラ息子だったら、こんな人気者にはなれなかったでしょうね。
 
 
このシリーズはまさに絶好調のようで、この後も続々と刊行されています。
単なるお江戸を舞台にした謎解きもの(妖怪風味)というだけでなく、若旦那の成長物語でもあり。
個性豊かな登場人物や妖怪たち、江戸の風景や人々の営みの細かな描写。
続けて読みたい!と思わせる魅力に溢れたシリーズであることは間違い無いです。
 
 
 
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2007.06.15

「アヒルと鴨のコインロッカー」 伊坂 幸太郎 著

またまた、伊坂幸太郎。
もう、完全に「私の好きな作家」として定着。
書店でこの人の本を見かけると、躊躇すること無く手に取り、レジに直行するようになってしまいました。
 
 
では、軽くあらすじなど。
主人公は大学入学を機に一人暮らしを始めることになった青年・椎名。
もう1人の主人公はペットショップで働く女性・琴美。

椎名は、引っ越し当日、同じアパートの隣人に挨拶に行く。
その隣人が、かなりの変人だった。
初対面の彼に向かって「一緒に本屋を襲わないか?」と、持ちかけて来たのだ。
ターゲットは一冊の広辞苑。
見ず知らずの青年に強盗の片棒担ぎを依頼し、ねらう獲物は広辞苑1冊だけ。
それだけでも、かなり狂っている。
おまけに、彼に声をかけた理由は「ディランを歌っていたから」ときた。
普通なら、丁重にお断り申し上げて、以後、極力接触しないよう心がけたい人種だろう。
ところが、そういった人物は何故か悪魔的とも言うべき魅力を併せ持っているものだ。
「恐いもの見たさ」とでも言うのだろうか、けっきょく椎名はその隣人・河崎の申し出を受け入れ、本屋襲撃の共犯者となってしまう。
その後も、何故か椎名と河崎の交流は続く。
そして、椎名の周囲で奇妙な出来事が次々と起こり始める。

一方の琴美さんの物語。
こちらは、椎名くんの物語よりも2年前の出来事とされている。
ふとしたきっかけで、巷を騒がせていたペット殺しの容疑者とおぼしき若者たちに付け狙われることになってしまった琴美さんと、その恋人であり、ブータンからの留学生でもあるドルジを中心に物語が進んで行く。
そして、そこに琴美さんの元カレ河崎がからんでくることになり、何故かドルジが河崎と打ち解けてしまったおかげで奇妙なトライアングルが成立することになる。
 
 
2年前、非常に危険な状態にあった琴美さんは、いったいどうなってしまったのか?
椎名くんと琴美さんの物語に共通して登場する人物も居る。
誰が居なくなって、誰が居るのか。
何が変わり、何が変わっていないのか。
どうして河崎は、書店から広辞苑を奪わなければならないのか。
 
初めての一人暮らしに期待と不安でいっぱいの青年の身に降り掛かった、奇妙な出来事の正体は・・・?
 
 
時間軸のズレた2人の物語が平行して語られていく。
いいかげん伊坂作品に慣れてきている私にとっては、こういった構成は「また、やってるなー」ってなもんだ。
今回は、最初から2年のズレがあることが明記されているから、さほど混乱は無かった。

物語自体は、それほど複雑なものではない。
ただ、登場人物(特に過去組の3人)の背景は多彩で、複雑で、非情である。

留学生ドルジの故郷とされているブータンはもちろん実在の国だが、この物語の中の「ブータン」は作者が現地を訪れた際に受けたイメージを膨らませて作った架空の国とのことだ。
日本とは異なる風習や宗教観、思想を持った異邦人のドルジは、実におおらかで心優しく、そして異邦人故の孤独も抱えている。

常にエキセントリックな魅力を振りまく河崎の言動は、さらに複雑だ。
次々と女性の元を渡り歩き、「自分の目に映るものしか信じない」と豪語する彼。
その彼が自分が深刻な病を抱えてしまっていると知った時、自分が病に罹っていることよりも、誰かに伝染してしまったのではないかという恐怖と罪悪感に苦しむことになる。

この物語の真の主人公は「河崎」なのだろう。

終盤、とある人物に「アナタは途中参加しているだけ」と言われてしまう椎名くんは、やっぱり傍観者に過ぎなかった。
ただ、彼らの物語に途中参加することで、椎名くんは確実に何かを感じ取り、1つオトナになったことと思う。

分類するとすれば、たぶんミステリーというジャンルに入れられてしまうのだろうけれど、単なる「謎解きもの」の枠には収まり切らない人間ドラマがちりばめられている。
かといって、説教くさくもない。
伊坂節とも言うべきテンポの良い会話や、思わずニヤリとするユーモアもふんだんに盛り込まれていて、とっても読みやすく、何より、読者をぐいぐいと物語に引き込んでいく力は圧倒的だ。

伊坂作品にしては珍しく「清々しい」とは言いがたい幕切れだったけれど、面白かったことだけは間違いない。
 
 
この本を読んでいる時には全然知らなかったのだが、これ、映画化されているそうで。
いやー、どうやって、これを映像化したんだろう?
かなり無理があると思うんだけどね・・・
見たらガッカリしそうだから、自分は見ないことにするよ。
 
 
 
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2007.03.20

「ラッシュライフ」 伊坂 幸太郎 著

キーワードは「バラバラ」である。
そして、「バラバラ」が「くっつく」のだ。

コイツ、何、言ってんだ?
と、お思いのそこのアナタ、この小説を読めば、私の言っていることもあながち的外れじゃないってことがお分かりいただけると思う。
 
 
ごくありふれた地方都市で、縁もゆかりも無い人たちが、何食わぬ顔ですれ違って行く。
今すれ違った人が、どんな事情を抱え込んでいるかなど分からない。分かるはずも無い。
でも、まったく無縁と思われた人たちの人生が、ホンの一瞬交差する。
誰かの起こした小さなアクションが、他の誰かにささやかな影響を及ぼす。
無関係だと思っていた出来事が、実はホンの少しずつ繋がっていた。
そう。「バラバラ」が「くっつく」のである。
 
 
とにかく登場人物が多い。
おまけにほとんどの登場人物が同じ比重でもって描かれ、その人の目線でエピソードが語られて行く。
そのエピソードも途中でぷつっと途切れ、他の人の話しに移行してしまう。
おかげで、「あれ、この人は泥棒だったっけ?それとも失業者だったっけ?」と、最初のうちは場面が切り替わるたびに混乱していた。
が、次第に人物像を把握できるようになり、めまぐるしい視点変更にも慣れた。

主軸にあるのは、失業者・豊田さんのエピソードと、絵の得意な青年・河原崎のエピソードだろう。
そこに不倫相手の妻を殺そうと企むカウンセラー・京子さんや、プロフェッショルな泥棒・黒澤さん、金で買えない物は無いと言い切る画商・戸田氏のエピソードが絡んで来る。
さらに、それらを繋ぐためのサブキャラまで居るのだから、読んでいる方は頭を整理するのに忙しくてしょうがない。

最初は同時進行だと思っていたそのエピソード群が、実は時間がちょっとズレていることに、やがて気付く。
読み進めて行くうちに、「これ」と「あれ」はこんなふうに繋がっていたのか!と何度も驚かされ、最後の最後でこの物語の全貌が明らかになる。

世にも奇妙な事件や奇跡のような出来事の裏には、種を明かしてしまえば「なぁんだ、そうだったのか!」と呆れてしまうような、なんてこと無い事実が隠れていた。(だからといってガッカリするようなことは無い。むしろその「繋がり」に感嘆してしまう)

ちょうど、ジグソーパズルのピースが1つずつはまって行くようなカンジで、そうして出来上がった絵を見渡した時の達成感と言ったら無いのだ。
 
 
この物語には、他の伊坂作品のパーツがチラリと顔をのぞかせている。

喋るカカシに守られた島に迷い込んだ青年・伊藤が銀座の画廊に姿を現したり、陽気なギャングたちが巻き込まれた爆破事件がサラッと語られたり。

プロフェッショナルな泥棒・黒澤さんは、探偵にジョブチェンジして「重力ピエロ」で一仕事している。(カウンセラーへの転身は、京子さんに一蹴されて諦めたのだろうか?)

ファンなら思わずニヤリの嬉しい趣向。
繋がる広がる伊坂ワールド、だ。
 
 
清々しい幕引き・・・というのは、伊坂作品の特徴の1つだろうか?

登場人物のうちの何名かは完全に人生に破綻を来たし、失業者・豊田さんの未来も明るいんだかどうなんだかよく分からないにもかかわらず、最後の豊田さんのくだりで私は号泣し、実にスッキリさわやかな気分でこの本を読み終えることができた。

イッツオールライト。
良い人生を。

 
 
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2007.03.11

「BLACK BLOOD BROTHERS S2」 あざの耕平 著

ワタクシ、S1の感想で「マンガみたい〜」とか書いてました。
ぶっちゃけ、「大人の読むもんじゃねーな」って思ってました。
あくまで、S1の感想ですよ。
長編1〜3巻は面白いと思いました。
んで、このS2もS1に比べると、だいぶ良くなってると感じました。
S1が一番最初に世に出たBBBってことで、まだ作者も手探り状態だったのかもしれません。
この辺りになると、それぞれのキャラの内面やら何やら、だいぶ深みが増して来ているようです。
登場人物たちのやってることの中味は大して変わっちゃいませんが、それを伝える側の熟練度がアップしたのかなって感じました。
って、ずいぶん偉そうなこと書いてるな、自分。
HAHAHA・・・笑ってごまかせ。
 
 
好きなのは・・・
オールドブラッドの悲哀を感じさせる「ネズミたちの夜」
それと、「外よりきたる牙」
どっちも、すっとぼけ吸血鬼ジローさんの別の一面を垣間見ることができて良かったです。
ジローさんとキリマの間に、過去、どんなことがあったのかも興味津々。
 
 
それからゲーム好きな自分にはたまらないのが「特区の少年王」
セイが持って来たゲームってポケモンみたいなヤツですかね。
(っていうか、自分はポケモンやったこと無いんですが)
ゲームに熱中するあまり渦潮出しちゃうセイが可愛すぎます。

そして、デジタル機器全般苦手なくせに、いらんところで秘めた才能を発揮してしまったジローさんの間の悪さに脱帽。
おまけに、本人、まるで立場が分かってないし。
苦労するね、ミミちゃん・・・
 
 
締めは、ぐっと趣を変えて「古城の一夜」
エキセントリックなカーサ姉御の心情が、少し見えて来たような。
カーサにとって、アリスはすごく大切な存在なのね。
それをジローさんに取られたような格好になっちゃったから・・・

カーサ姉御の胸の内がこの後どんなふうに変化して行き、3人の関係がどうしてあのようなカタチになったのか、すごく気になります。

ここで話しが過去に飛んだので、次は過去話の第4巻を読んでみましょうかね。
 
 
 
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2007.02.27

「BLACK BLOOD BROTHERS S1」 あざの耕平 著

今回は短編集です。
短編集だと話しが途切れるせいで、かえって読み終えるのに時間がかかったりします。
長編だと続きが気になって、勢いでダーーーッと読んでしまうんですけどね。

そういうわけで、最初の一編を読んでから3週間ほど放置されてました。

お話の内容は、お気楽吸血鬼兄弟が特区に住み着くことになった直後からのミミちゃんの苦難の日々について。
「BBB 第3巻」から繋がってるわけですが、世に出たのはこっちの方が先なのだそうです。

もともとライトノベルなんでマンガみたいなお話なんですが、短編集だと余計にマンガっぽい。
難しいこと考えないで、お気楽に読むことにしました。
難しく考えると、突っ込みどころありすぎて読むの面倒くさくなって来るから。

でも、主要キャラ3名が生き生きと描かれていて、とても楽しかったです、ウン。

ジローさんがやたらと厳しくコタロウを躾けてるシーンを読んでて思い出したんですが、そういえば、この人、明治生まれの軍人さんなのですよね・・・
普段がユル過ぎるから、スッカリ忘れてましたよ。

しかし、なんだ・・・
コンプロマイザーがそろいもそろってギャルばっかってのは、どういうワケだ?
陣内の趣味か?
コンプロマイザーは、吸血鬼にまつわるトラブルを迅速かつ穏便におさめるのが仕事。
経験抱負で駆引き上手、人望も厚い方がいいに決まってる。
老獪な紳士などの方がふさわしいはずだ。余計に事態を悪化させそうなギャルよりも。
きっと、カンパニーは人手不足なのだ。
そうに違いない。

ドタバタ3人組の騒動は、まだまだ続くようですので、引き続き短編集の方を攻めていくつもりです。
 
 
 
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2007.02.07

BLACK BLOOD BROTHERS 3 「特区震撼」

そういえば、BBBがどういう話しかって大まかなところ、何も書いてませんでしたね。
これではBBB未体験の人にはサッパリ分からんでしょうから、遅ればせながら、少し書きます。

主人公(?)の望月ジローさんは、見た目20歳前半(実はだいたい100年生きてるらしい)の吸血鬼。
「銀刀」とか「同族殺し」とか、いろいろ言われていますが、そのへんの通り名は10年前の香港で起きた大事件の際の、彼の活躍ぶりに由来するようです。この大事件に関しては、今のところ本編でもあまり詳しく語られていないので私は想像するしかありません。

ジローさんには、まったく似ていないコタロウという名の弟が居ます。(もちろん吸血鬼)
こっちは、見た目どおりの10歳。

この兄弟、えらくヘビーな宿命を背負っておるのですが、そんなものをつゆとも感じさせない能天気兄弟で・・・
コタロウは明らかに天然ですが、ジローさんの方はワザとボケているんだか、それともやっぱりこっちも天然なのか、今のところ私には見極めがつきません。

で、この能天気吸血鬼兄弟が、ロシアの奥地からはるばる海を越えて日本は横浜の『特区』と呼ばれる場所に来たところから大騒動が始まってしまうわけで、その騒ぎにまんまと巻き込まれてしまったのが葛城ミミコというアヒル口の17歳の乙女(りっぱな社会人)。

この3人を中心に、人間(レッドブラッド)と吸血鬼(ブラックブラッド)入り乱れての、涙あり笑いあり、バイオレンスありラブロマンス(?)ありの、スッタモンダの物語り・・・です、たぶん。
 
 
それではBBB3巻の感想。
*ここから先は、多少ネタバレの危険がありますんで、原作もアニメも未見でこれから見ようと思っている人は読まない方がよいかもです。

ヤフリー君参上から、ジローとカーサの一騎打ちまで。
ということで、アニメでは8話から最終話に相当。

前の2巻がわりと地味だったのを取り返すかのように、皆さん、派手に暴れまくっておりますね。
(基本的に、暴れてるのは吸血鬼。ケインさんとか、ゼルマンさんとか、ヤフリー君とか)

やっぱり、この長さを全12話にまとめるのは相当厳しかったと思われ、アニメではよく分からなかった部分がいくつも明らかになりました。
 
 
その1 ザザ
アニメではザザの存在そのものが、かなり軽く扱われていた気がしますが、原作ではかなり重要な役割を担ってらっしゃる。

ザザが憑依能力を持ってるってこと、アニメではよく分かりませんでした。
だから、顔と名前が一致しなくて(次々と乗り移ってるから一致しなくて当たり前)、けっきょくザザというキャラそのものがかすんでしまっていたという感じ。
『ザザ』という名前さえ、ちゃんと出てきたことがあったかどうか???

そのアニメでは影の薄かったザザが、実は九龍の血統の中でも2番めのお兄ちゃんだったのね。
実際はカーサより年上だと思うんだけど、九龍の血統に染まったのがカーサの方が早かったから『弟』の地位に甘んじているってことかな。
まぁ、力関係から言っても、どう頑張ってもザザはカーサに勝てっこなさそうだけど。

ザザとヤフリー君の兄弟らしい会話が、なんか、良かったです。
九龍の血統って、やたらと悪者扱いされているけれど、彼らは彼らでちゃんと絆を結んでる部分もあるんだなって感じることができました。(カーサはどうだか分からんけど)
 
 
その2 ミミちゃん
アニメの最終話で、陣内さんがジローに「ミミコを守れ」って言っていて、「えーっ、なんでミミちゃんを守るの?ミミちゃんって、何者?」って思った私ですが・・・

ふむ、ミミちゃんは陣内さんが(色んな意味で)仕込んだわけね。

本人には知らされていないけれど、ミミちゃんは大きな役目を背負わされているわけだ。
人間と吸血鬼にとって理想的な共存社会を作り上げるという大仕事かな?と、勝手に想像していますが、どうなんでしょう?
 
 
この3巻の見どころは、

やっぱり、コタロウと並んでラーメン食ってるゼルマンさん
・・・じゃないだろ。
 
数ある見どころの中でも一押しは、やっぱり『頭の固いジローさんに説教たれるミミちゃん』でしょう。

ここで、「いつか、それは、母なる海へ」とミミコが口走ります。

この言葉、私が当初考えていたのと違う意味にも取れることに気が付いて、ゾワーッと怖くなっちゃいました。
私は「ジローさんが海になる」という意味だと思ってたんですけど、聞きようによっちゃ、「母なる海に注がれる」とも受け取れる・・・

母なる海。すなわちアリスちゃん。

「いつか、ぼくに返してよねー」って言ってる?違うよね?ね???
もし、そっちの意味だったら、怖過ぎるんですけどー!

あのコタロウが、その時が来たら、兄者を食えるんだろうか?という疑問も抱いていたけれど、むしろ、あのコタロウだったら「兄者、今までありがとー!」とか言って、サックリ食っちゃいそうな気もして来て・・・だぁーっ、それでは、ジローさんがあまりに気の毒ですよぅ。
私の思い違いであって欲しいと、切に願ってやみません・・・
 
 
ジローとコタロウが特区に住み着くことが決定し、この巻で、いちおう、お話は一段落。
が、既に続編は続々と刊行されております。
次は短編集でも読んでみますかねー。
 
 
っていうか、アニメ化された部分の1〜3巻を読了してみてつくづく思ったんですが、あのアニメは原作を売る絶好のプロモーションになったんじゃないか、と・・・
アニメ見て、面白そうだけどよく分かんないから原作読んでみよーって、本屋さんに買いに走った私みたいな人、けっこう居ると思います。

いや、アニメだけでは、ほんと、ワケ分かんなかったもんよ。

原作を先に読んでた人には、至福の時だってでしょうが。
 
 

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2007.01.30

BLACK BLOOD BROTHERS 2 「特区鳴動」

無事・・・かどうかは疑問だが、とにかく特区入りを果たしたジロー&コタロウのワケあり兄弟。
入ったら入ったで大騒動に巻き込まれてるし・・・の巻(前編)

兄弟の特区入りから、ヤフリー君が華々しく名乗りを上げるところまで。
アニメでは5話から7話に相当。
 
 
冒頭は、香港聖戦の時のお話。
どうも、これはミミちゃんが見た『夢』ってことになっているらしい。
ジローさんに血を吸われたことで起こった『共鳴』現象の余波で、ジローさんの記憶の一部を『夢』というカタチで感じ取っていると理解すればよろしい?

この香港聖戦に関しては、じっくり描かれることは無いんでしょうか。
今のところ、断片的には語られているけれど、未だ全貌がつかめず。
転生前のセイなんか、興味津々なんですけどね。

興味津々と言えば、

ジローさんに無闇にみっちり「八艘飛び」を伝授したクロウさんにも、

大いに心惹かれました。

良いな、クロウさん。
もっと出番があったらいいのに。
それにしても、クロウさんを現代の鎌倉に連れて行ったら、どんな顔するんだろうねぇ。
あぁ、楽しそうだ。
 
 
メインストーリーの方は、ミミちゃんが兄弟を連れて受け入れ先を回ってる場面が中心で、わりと地味。
コタロウは言わずもがなだけど、ジローさんはおろか、案内する方のミミちゃんまでどことなく観光気分な感じで、旧友に受け入れ拒否されたわりには比較的のんきな空気が漂う・・・
公園でピクニックなんてしてるしねー。
会話の内容は、「和やか」なんてモンじゃないが。

一部、ちょっかいだしてくる曲者(オーギュスト)が居るんだけど、しょせん小物だから、あんまり盛り上がらない。

がっ!
ヤフリー君の登場で、そんな観光気分も吹っ飛んだわさ。
 
 
さて、アニメを見ていてとっても疑問に思っていたことの1つが、ミミちゃんの涙の理由。

セイやケインに特区への受け入れを拒まれて、その都度ミミちゃんは怒ったり泣いたりして、「なんで、この子はこんなに必死になってんだろう?」と、私は首を傾げておったですよ。
つい先日知り合ったばかりの吸血鬼兄弟が、特区で暮らせるかどうかってハナシだけで、なんでこんなに一生懸命になってんだ?ずいぶん仕事熱心な、責任感の強い子だなぁ・・・くらいにしか、思ってなかったとですよ。

でも、原作を読んだら、その疑問は一挙氷解。

原作のミミちゃんは、既に兄弟の背負った宿命を知ってるんですね。
アニメではその事実を最後までひた隠しにしていたけど、原作では特区入りする直前にジローさんから知らされてる。

『自分に残されたわずかな時間を弟と一緒に静かに楽しく暮らしたい』というジローさんの想いを知っているから、どうにかしてそれを叶えてあげたかったのね。
それだったら、泣きたくなっちゃうのも納得。

アニメ見ていて、どうもあのミミちゃんの涙に違和感を持っていたんだけど、それは事実をさらす順序を原作と変えてしまったせいだったのね。
まぁ、確かに衝撃の事実だから、最後まで伏せておきたかった気持ちは分かるけど、そのせいでミミちゃんの涙が浮いちゃったのはなぁ、ちょっと残念。
 
 
もうひとつ、ジローさんがミミちゃんとあえて距離を置こうとしたのも、アニメではその真意が分かりづらかった。

その理不尽ともいえる言動の裏に、心底ミミちゃんに感謝し、気遣っているジローさんの優しさが隠れていることが、原作を読んで確認できました。
アニメ見ただけだと、『たぶん、そうなんだろうなぁ』と推測は出来ても、表面的には『なんとなく意地はってる』ようにしか感じられなかったのね。
 
 
それから、100年生きているにしちゃ、やたらと青二才なジローさんのその理由も納得。

限りなく不死に近い長命な吸血鬼と目一杯頑張っても100年弱の寿命しか無い人間とでは、時間の感じ方が違うのね。
時間は相対的ってことだ。
だから同じように10年が経過しても、リンスケや陣内さんはキッチリ10年分トシくったのに、ジローさんは見た目も中味もあんまり変わってない。
ジローさんにとったら、10年前の出来事なんて、ついこの間のことのように感じるんでしょう。
だとしたら、ウジウジ、グズグズ、引きずっててもムリは無いや。

やっぱり、原作読んで良かったわー。
アニメではよく分からなかったところが、理解できるようになりました。
 
 
この巻は主要人物が続々と顔を出し、過去話を含めて色んな伏線が張り巡らされ、動きが地味なわりには脳内で情報を整理するのに忙しいという、実は読むのに一番苦痛を感じるタイプの内容かと。
(まぁ、吸血鬼兄弟とミミちゃんの漫才(?)が可笑しいから、ついつい引き込まれちゃいますけど)

作者本人もあとがきでお書きになっているように、次巻以降はハデハデな大立ち回りが展開されそうで楽しみです。
動きの激しいシーンを文章で表現するのって、すっごく難しいと思うんですけど、この人の書く戦闘シーンは勢いがあって良いですね。
 
 
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2007.01.22

今日のめっけもん

おしゃれなパターン素材集「花柄・リーフ」 
          (発行:ビー・エヌ・エヌ新社) 

イラストレーターやフォトショップで使える素材集です。
Mac、Winどちらでも使えるCD-ROM付きで140点収録。

素材集って本もいろいろ出ているし、Web上にもたくさんの提供サイトがあります。
でも、その中から自分の欲しい物、好みに合ったものを見つけ出すのは至難の業。

あまりにも量が膨大で、でも実際に使えそうなものはホンの一握りで、私なんぞは素材サイトから好みの1点を探し出すよりも、「えぇい、自分で作っちゃった方が早いっ!」などと思ってしまうのです。

そんな中、たまたま書店で見つけたこの本を開いてみると、思わず使ってみたくなるような可愛くて品のいい花柄を多数発見!

色変更や他の素材との組み合わせも可能なので、色々と利用できそうです。
(商業利用については制限がありますが)

自分でパターンを作るための勉強にもなるし、何より、見ているだけで楽しい。

他に「みずたま・ストライプ」など、数種類がシリーズで刊行されている模様。

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2007.01.07

BLACK BLOOD BROTHERS 1「兄弟上陸」

アニメがあまりにもワケ分からなかったので、原作を読んでみました。
とりあえず、1巻だけ。

これはライトノベルってことで、ひじょうに読みやすいのはけっこうなんだけれど、いいオトナが書店で買うのは少々こっぱずかしいのが困ったところ。
まぁ、めげずに買いましたが。

内容は、と言えば、ふむ、ふつーにオモシロイでないの。

1巻はジロー&コタロウが特区に入るまでのお話で、アニメでは第4話までに相当。
アニメの方もそれなりに頑張って原作に忠実に描こうとしていたってのは、よく分かりました。

ただ、まぁ、どうしても描ききれてない部分はあるようで。

ジローさんやミミちゃんの微妙な心理状態は、原作を読むことで、だいぶ掴めました。

アニメの黄さんはわりと影が薄かったんだけれど、原作の黄さんはとってもカッコイイお姉様として存在感ばっちり。

いちばん驚いたのが、クロウ。
アニメでは聖域でジローに剣の稽古をつけてるシーンだけで、特にどうと言うことはない端役だと思ってたんだけれど・・・

そうか、あの九郎さんだったのか。

夢枕 獏さんの小説にも、そんなのがあったっけ。
九郎が女吸血鬼に出会ってしまって、どうのこうの・・・って話し。
途中でいきなり未来に話しが飛んで大いに戸惑ったあげく、内容が自分にはグロ過ぎて読むの放棄しそうになったのでした。

BBBのクロウさんが、どうやって聖域なんぞにたどり着いたのか、そのへんのエピソードも知りたいですね。

とにかく、面白かったので、引き続き読み進めたいと思います。
 
 
 
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2006.12.26

「しゃばけ」 畠中 恵 著

去年の(今年ではない)夏から、読もう読もうと思いつつ積みっぱなしになっていた本をようやく読了。
舞台がお江戸で妖怪がわんさと出てくるお話を、わざわざクリスマスに読まなくても良いような気もするがな。

というわけで、このお話の舞台は江戸である。
主人公の一太郎は、江戸でも指折りの廻船問屋の若旦那。
いちおう、自分も薬種問屋を一軒任されてはいるんだけれど、この若旦那、異様に身体が弱い。
ちょっとトラブルがあると、すぐに寝込んでしまう。
だいじな跡取り息子に倒れられては大変!とばかりに、両親も店の者たちも、若旦那を甘やかしまくる。
若旦那が軽く咳き込んだだけで寝床の用意をするわ、(もうスッカリ一人前の歳になってるのに)1人で外出したと言っては大騒ぎするわで、当の若旦那が鬱陶しがるほど。

しかし、この若旦那、身体が弱くて世間知らずの「おぼっちゃん」ってワケじゃない。

確かに世間知らず、というか世の常識から外れていらっしゃるようだけれど、なかなかに頭脳明晰で肝も座っている、けっこうな好青年なのだ。(どうやら、見目も麗しいらしい)

そして、この若旦那には2人の手代がくっ付いていて、なんやかやと世話を焼く。
一方は腕っ節の強い偉丈夫で、もう一方は色男。
子供のころは遊び相手として、成長してからはお目付役として、若旦那のお守りを続けているその2人の正体は妖なのだ。
このお2人さんが、また、魅力的なキャラなのである。
2人ともなかなか力の強い妖怪いのようで頼もしいんだけれど、妖怪だけに、人とは感覚がちょっとズレていて安心できない。
若旦那も、これには頭が痛いようである。

子供のころから2人の妖に守られている若旦那の周囲には、他にもたくさんの妖が姿を見せ、若旦那と妖たちはまるで友達のような関係にある。
これが、この若旦那の最大の特徴だろう。
 
 
その若旦那がお忍びで夜歩きをした折りに、たまたま殺人事件の現場に行き会ってしまったことから、物語は動き出す。
やがて、それは江戸を騒がす大事件となり、完全に巻き込まれたかっこうの若旦那は(どうせヒマだし)事件の解決に乗り出すことになる。

妖怪ファンタジーと推理ものの融合・・・といえば、他にも似たような小説はいくらでもある。
この「しゃばけ」は、その中でも抜きん出て読みやすい。
時代小説だと思って尻込みしてしまう読者も居るかもしれないが、この本に関しては心配はご無用。
舞台が「江戸」というだけで、中味は現代小説と変わらない。
普通に妖怪に顔を出させるには、時代を「昔」に設定しておいた方がよかろう・・・って、そんな感じだ。
妖怪と戯れたり、若旦那と一緒に事件を追い掛けたりしているうちに、あっという間に読み終わってしまった。
なんとなくマンガを読んでいる感覚に近いような気がしたのは、作者がマンガ家としての経歴の持ち主だからなのだろうか?

若旦那と彼を取り巻く人々(妖怪も含めて)が生き生きとしていて魅力にあふれているのも、一気に物語に引き込まれてしまった理由の1つ。
(若旦那と2人の手代なんぞは、ビジュアル的にもかなり見栄えがするんではなかろうか)
これだけ素敵なキャラを1回こっきりで終わらすのはあまりにももったいない!ということで、同シリーズは続々と刊行されているようで。
はやく続編が読みたい!そう思わせる本にはなかなか出会えないものだけれど、コレは今すぐにでも本屋に飛んで行きたい気分にさせてくれたのだ。
オススメなのだ。
 
 
 
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2006.09.28

「オーデュボンの祈り」 伊坂幸太郎 著

すげぇよ、伊坂幸太郎。
よく、こんな話しを思いつくなぁ。
「重力ピエロ」を読んで以来、すっかり伊坂幸太郎がマイブームの私が今回読んだのは「オーデュボンの祈り」。
これがデビュー作だってんだから、トンデモない人だ。

だいたい、発想が普通じゃない。

なんたって、喋るカカシが存在するってのが大前提のお話なのだ。

かといって、別に「オズの魔法使い」みたいなファンタジーってワケじゃない。
(まぁ、ある意味、ファンタジーだけど)
 
 
150年間、外部との交流を断っている「荻島」という小さな島に、そのカカシは居る。
カカシには優午という名前があって、喋るだけでなく、未来を予見することまで出来てしまう。
カカシは島の人たちに慕われ、頼りにされる、いわば島の人たちの心の拠り所のような存在だった。
主人公の伊藤は、人生の歯車が狂いかけた青年で、ちょっとした偶然からこの荻島に転がり込こんだ。
そんな矢先、カカシが殺される。
未来を見通すことが出来るカカシは、なぜ、殺されてしまったのか?
荻島に住む奇妙な人たちと出会い、交流を深めながら、伊藤は次第に事件の真相に近づいて行く。

と、まぁ、そんな感じのストーリーで、カカシ殺人(?)事件の謎を解くミステリーでもある。
 
 
一応、なぜ優午が言葉を話し、未来を予見できたのか、それらしい説明も有るのだけれど、本当にそれが正解なのかどうかは分からない。
物語の中でも曖昧なままになっている。
それはそれでいい。
大事なのは、事件の真相を探ることで、カカシが喋る仕組みを解明することではない。
とにかく、荻島のカカシは喋るのだ。

幾重にも張り巡らされた伏線。
それが全部繋がっている。
一見、まったく関係無かったような出来事も、実はちょっとだけ繋がっていたり。
真相が判明した時、これを仕組んだ犯人の賢さに脱帽した。

荻島には、風変わりで魅力あふれる住人たちが多数居住している。
その中でもひときわ強烈な印象を残すのが、「桜」。
島で唯一殺人を許された男。
いわば死刑執行人のようなものなんだけど、その判定基準は桜の一存で決められていて、真実がどうあれ、桜の下した結論に誰も文句を言わない。
文字通り、かなり危ない人なんだけども、詩と花を愛する・・・なんて言う一面もあって、おまけに絶世の美男子。
男から見てもほれぼれするような美しい男って、どんななんだろう?
 
 
とにかく面白くて、先へ先へと読み進めたくなるパワー満載の小説なんだけど、唯一、「島に欠けているもの」の正体にはガッカリした。
もうちょっと、深遠なものを思い描いていたから。
え?そんなものだったの?って感じ。
そのへんが、デビュー作ならではの「あと一歩」ってところか。
もっとも、その「欠けているもの」が島を見下ろす丘の上から荻島の人々に届けられるシーンを頭に思い描いてみたら、ちょっといい感じだった。
私が映画監督だったら、きっとそのシーンをラストカットにするだろう。
 
 
 
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2006.09.05

「カクレカラクリ」  森 博嗣 著

冒険するには、季節は夏がふさわしい。
・・・なんてことを誰が決めたのだろう?
少なくとも、私自身は夏休みにちょっとした冒険をした経験など無い。
宿題を抱え、何となくダラダラと過ごしているうちに新学期を迎えていた。
(というか、オールシーズン、冒険したことなんて無いんだけどね)

ところが、小説や映画の中の少年少女は、実によく一夏の冒険をする。
そして、冒険を通してほんの少し成長してみせたりするのだ。

この本も、そういった類いのお話だ。

主人公は大学の工学部に籍を置く男子学生の二人組。
古いもの。特に古い機械が大好きで廃墟巡りを趣味としている、少々マニアックな男子たちだ。
その二人の同級生である花梨の故郷には、実に魅力的な廃工場があった。
夏休みに里帰りする花梨と同行することになった二人は、そこで120年後に作動するように仕掛けられた、謎の絡繰りの存在を知る。
古い機械は大好きだが、古い絡繰りも大好きな二人は、その「隠れ絡繰り」を探し出そうと調査を開始する。
 
 
時代から取り残されたような小さな村。
対立する、時代錯誤的旧家。
浮世離れした美少女。
120年後に動き出すと伝えられる謎の絡繰り。
そして、今年がちょうど120年め!

これだけそろったら、あとは死体の1つや2つ転がり出て来ても不思議ではないシチュエーションだけれど、そんなものは出て来ないのでご安心を。
そんなもの出さなくても、冒険は出来るから。

廃工場だの穴ぐらだのに潜り込んだり、どことなく怪しい雰囲気の人たちが出て来たり、暗号やら財宝やら、秘密のにおいまで漂い始め・・・
とにかくワクワクするような要素がてんこもり状態。
おまけに、ほんのり恋の香りも。
あぁ、青春だねぇ。

隠れ絡繰りは本当にあるのか?
その絡繰りが動き出した時、何が起こるのか?
少年少女に戻って、ワクワクしながら冒険を楽しむのがよろしいかと。
もちろん現役の少年少女の皆さんも、どうぞ。
中学生ぐらいでも、普通に読めるはず。
というか、もしかしたら少年少女向きの小説かな?って気もする。
一応オトナな私には、ちょっと物足りないカンジ。
 
 
ネタバレしてしまうから、あまり詳しくは書けないけれど・・・
絡繰りはその「装置」だけに非ず。
最も偉大にして複雑怪奇な絡繰りは、人の心の中に・・・
そして、人の叡智のすばらしさに、密かに感動してみるも良し。
 
 
この小説、ドラマ化されたそうで。
2006年9月13日夜9時から、TBS系で放送とのこと。
読んでから見る?
それとも、見てから読む?
 
 
 
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2006.08.31

「陽気なギャングが地球を回す」  伊坂幸太郎 著

やられた。
完全に、伊坂幸太郎という作家の虜になってしまった。
このまえ読んだ「重力ピエロ」が良かったので、他の作品も読んでみたくなり、次に手に取ったのがこの本だった。

スリリングでハイセンスでユーモアたっぷりで・・・とにかく、面白い。

まず、設定からしてどうかしている。
たぐいまれなる特殊能力を持った4人が組んで、銀行強盗を働くって言うんだから。
他人の嘘を見抜く名人にして、冷静沈着、頭脳明晰な策士。チームのリーダー的存在である成瀬。
成瀬の古くからの友人で、ウンチクを垂れることに関しては天下一品。ただし、どこまで本当でどこからがでまかせなのかは不明な、弁説の達人、響野。
天才的なスリ。でもって、人間以外の生物を敬愛する青年、久遠。
正確な体内時計と、並外れたドライブテクニックを併せ持つ一児の母、雪子。

こんな連中が手を組んだら、怖いもの無し。
銀行強盗なんて、ちょろいもんだ。
完全無欠の彼らの仕事には、失敗などあり得ない。

ところが、まんまと強奪した現金を抱えての逃走中、別の現金輸送車強奪犯にせっかくの「売上金」を横取りされてしまうという椿事が起きる。
実にありえねー状況なんだが、起こってしまう。

完全無欠のギャングたちは、とうぜん面白くない。
自分たちの金(元を正せば銀行の金)を奪った強奪犯をとっちめてやろうと活動を開始する。
が・・・
 
 
このテンポの良さは、伊坂幸太郎作品の特徴の一つなのだろうか?
「重力ピエロ」でもそうだったのだけれど、会話のテンポがすごく良いのだ。
特に、仲間内で会話している時の絶妙なやり取りは、彼らの親密さを物語るのに一役買っていて、それと同時に作品全体にも軽快さを与えていると思う。

その軽快なテンポに乗せられ、あれよあれよという間に4人のギャングの世界に引きずり込まれ、巻き込まれ、ふと気づいたら清々しい幕引きを迎えていた。
そんな感じだった。
もちろん、ただ「面白い」だけじゃない。
登場人物たちの抱える「事情」もさりげなく描かれ、それが物語の中にちゃんと生かされている。
お説教にならない程度の、風刺や教訓も隠れている。
たぶん、伊坂幸太郎という人はすごくセンスの良い人なのだ。一言でまとめてしまうとするならば。
 
 
この小説は映画化され、今年の春に公開されている。
文庫本の帯に思いっきり役者の名前が書いてあった。
役者の名前がインプットされてしまうと、もうその顔しか思い浮かばなくなる。
文章を読みながら勝手にイメージを膨らませるのが本を読むときの楽しみであるのに、それを奪われてなるものか!
ってことで、帯を見ないようにしてレジに向かい、すぐにカバーをかけてもらった。
読み終えるまで、カバーは外さなかった。
いつもだったら「あとがき」をチラ見してしまったりするのだけど、万が一の事を考え、今回はそれもガマンした。
さっきカバーを外してみたら、帯の写真に納まってるギャングたちは実にギャングっぽい服を着ていた。

私は、それは違うと思う。

成瀬は地味なスーツを着て役場で書類にハンコを押しているべきだし、響野は妙に饒舌で少々変わっているかもしれないが、それでも商店会の集まりにはちゃんと顔を出す喫茶店のマスターでなければならない。
久遠は動物好きの心優しい青年であるべきだし、雪子はどこにでも居る平凡なお母さんであるべきだ。
ギャングたちは、何くわぬ顔をして私たちのすぐ近くに居る。
その方がずっと愉快だと思うのだ。

映画のキャストは、自分がイメージしていたのとずいぶん違う顔ぶれが並んでいた。
(私が誰にどの役者さんの顔を当てはめながら読んでいたかは、ナイショだ)
イメージは違うけれど、この小説がどんな風に映像化されているのか、見てみたい気はする。
 
 


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2006.08.08

「新耳袋コレクション」 恩田 陸 編

恐がりなくせに、このテの話しは大好きである。
大好きなくせに、自分自身は不思議な体験をしたことはまったく無い。
よっぽど鈍感にできているのか、さぞかし強力な守護霊様がお守り下さっているのかのどちらかだと思っている。

そんなふうに書くと、このテの話しを全面的に信じているかのように誤解されそうだが、そういうわけでもない。
少なくとも、妖怪譚とか都市伝説の類いはまるっきり信じてない。

でも、幽霊話しになると・・・
うーん、半分くらい信じてもいいかなって気がする。

理屈や科学では説明できないような不思議なことが、ちょっとくらいあっても良いと思う。
できれば、自分は体験したくないが。

いい気なもんである。

そういうわけで、他人の身に起こった不可思議な出来事について書かれたこういう本を読むのだ。
どうせ他人事だから、「ヒャ〜、怖いねぇ」などと思いながら、「アタシには何も見えなくてよかった」と、安心している。

この本には、「現代百物語 新耳袋」という全十巻(各巻99話収録)に及ぶ怪異譚集から、恩田陸さんが選び抜いた99編が収められている。
(第1弾と銘打っているからには、第2弾、第3弾があるのかもしれない)
そんなに、ぞぞーっと怖い話しは入ってない。
怖いというより、なんだかノスタルジックな感じがするものが多いような気がする。

とはいうものの、まったく怖くないわけじゃない。

さっき、洗面所で顔を洗っていて、サッと顔を上げて鏡を見たら背後に誰かの姿が映り込んでいたらどうしよう?なんて考えていた。

やっぱり、こういう話しは他人事で済んでいる方がいい。
  
 
 
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2006.08.01

「ZOO 1&2」 乙 一 著

この人の作品は、「平面いぬ。」という短編集を読んだことがある。
それ以降、この人の作品を続けて読んではいないってことは、たぶんそれほど気に入らなかったんだろう。
かといって悪い印象も無いってことは、つまらなくもなかったんだろう。

で、この「ZOO 1&2」
続き物ではなく短編集で、「1」の方には映画化された5編が収録されている。
短編集なので、好きなのとそうでないのとが混在している。
もっとも、あくまで私の好みなのであって、「全編お気に入り」って人も居るかもしれないが。
私が気に入ったのは「カザリとヨーコ」「陽だまりの詩」「落ちる飛行機の中で」の3編。
たぶん、「カザリとヨーコ」がいちばん最初に収録されていなかったら、この本を買うことは無かっただろう。

先にも書いたように、「乙一という作家は知ってはいるけど特に印象に残ってない」という理由で、本屋でこの本を見かけた時、買おうかどうしようかちょっと迷った。
それで、パラパラと「カザリとヨーコ」を流し読みしたら、なんとなく良さそうな雰囲気で、買う気になった、というわけだ。

一方は溺愛され一方は虐待されている、双子の姉妹。
物語は虐待されているヨーコの目線で語られている。
子供の作文のように拙い文章で書かれているところが、気に入った理由のひとつ。
途中でオチが見えてしまったけれど、一生懸命生き延びているヨーコのいじましくて、いじらしい姿が「良いなぁ」と、思った。


「陽だまりの詩」はCGアニメで映像化されたのだそうだ。
見てみたい気がする。
ネタバレしてしまうので詳しくは書かないが、じんわりと心が温かくなる作品だ。


「落ちる飛行機の中で」は、それぞれに事情を抱えた3人が同じ飛行機に乗り合わせてしまったことによって起こるゴタゴタ劇。
飛行機が落ちるかもしれないという極限状態にありながら、自分のことで精一杯の「私」と「セールスマン」は、妙にすっとぼけた会話をしていて、その姿は滑稽であると同時に、落ち着き払っているようにも見える。
読み終えた時、なんだか元気が出た。


そういうワケで、気に入ったのはこの3編なのだけれど、ぜんぜん好きじゃない1編がいちばん強烈な印象を残してしまって困っている。
それは、「SEVEN ROOMS」
私は、とにかくこういうグロい話しは大の苦手で、普通なら絶対に視界に入れないのだけれど、短編集に入っていたものでウッカリ読んでしまって大失敗である。
暗ーくて、臭ーくて、グチャグチャのドロドロで、「もう、勘弁して下さい・・・」って感じ。
これ、どうやって映像化したんだろう?
いや、私は、絶対に見たくないです。


全体的に見れば、共感できる文章もあちらこちらに見られて、悪くはない。
悪くはないけれど、とりたてて良くもない。
要するに、乙一という作家に対する私の印象は、この作品を読んでも、やっぱり変わらなかったということだ。
1回読んだら、じゅうぶんかな。
 
 
 
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2006.07.27

「重力ピエロ」 伊坂幸太郎 著

親子の絆を謳った作品は珍しくない。
たいていは、血のつながりが如何に強いかを訴え、感動を呼び起こす種類のものだ。
けれど、この物語は「血のつながり」というものに対して「NO!」と宣言する。
 
 
主人公・泉水には、父親の違う弟・春が居る。
この弟の春は、実に複雑な事情を抱えて生まれてきている。
もしかしたら生まれていなかったかもしれない・・・くらいの、重過ぎる事情だ。
泉水が遺伝子情報を扱う会社に勤めているのも、彼らの家庭の抱えていた「事情」のせいかもしれない。
血縁というものに、大きな疑問と恐怖を抱いていたからこそ、興味も惹かれたのではないだろうか。
あるいは、泉水は早くから自分の目的を明確にしていて、それを実現するためにこの会社に身を置いていたとも考えられる。
(ネタバレを避けるため抽象的な表現になっています。すみません)
いずれにせよ、泉水にとって弟の春は、とても重くて、とても大切な存在であることに間違いは無い。
そして、いつか自分の前からいなくなってしまうのではないか、そんな不安を抱えていたのだと思う。
 
 
泉水の住む町では、連続放火事件が発生していた。
放火現場のすぐ近くには必ずグラフィティアート(落書き)があり、これらには密接なつながりがあると春が言い出したことから、物語は動き始める。
放火事件と壁の落書きを巡る謎は、ガンで闘病中の父をも巻き込み、やがて、泉水は落書きに秘められた暗号に気付く。
そうして、泉水と春、父の3人はそれぞれの道を辿って1つの結論に辿り着く。
 
 
泉水と春やその父とのやりとりが絶妙で、彼らがいかに仲の良い家族であるかを物語っている。
兄と弟のキャラクターも良いのだが、特に、その父が素晴らしい人物だ。
その父の良さを瞬時に察知してほとんど押し掛け女房となった2人の母もまた、(故人ゆえ、思い出話しの中にしか登場しないが)素敵な女性だったのだろう。

物語の終盤、真相を知った泉水と春が病床の父を見舞うシーンで、父が春に向けて言った最後の一言で、私は泣いてしまった。
その一言に込められた父の想いは、きっと兄弟を救ったことだと思う。
 
 
最近、ニュースを見ていると、家庭内で起こる事件がとても眼につく。
親が子を殺したり、その逆もあり・・・
そういった家庭に欠けているものは、何なのだろう?
それぞれに様々な事情や背景があって一概には言えないだろう。
ボキャブラリも貧困故、陳腐な言葉しか出て来ない。
それでも、あえて言うなら、足りないのは「愛情」であり「思いやり」なのではないかと思う。

家族というのは、もっとも近くに存在する他者だ。
もっとも感情をぶつけられる相手であるが故に、傷付けてしまうこともある。
他人であれば、「なんだ、コイツ?!」と思えば、付き合わなければいいだけのことだが、家族ではそうもいかない。
少々ムカつきながらでも、イライラやゴタゴタを抱えたままでも家族が楽しく暮らして行けるのは、根底に相手を思いやる気持ち、愛情があるからだ。
多少のことは眼をつぶって許してしまえるのは、それ以上にもっと大切なものを家族が与えてくれるからではないか。
血のつながりは、あっても無くてもいい。
いろんなカタチの家族があっていいはずだから。
大切なものを失ってしまえば、たとえ血がつながった者たちが同じ屋根の下に暮らしていても、それはもはや家族ではない。
この小説を読み終えた後、私はそんなことを考えた。
 
 
衝撃的な内容を含んでいるにもかかわらず、読後感は悪くない。
むしろ、清々しくさえ思えた。
泉水と春。そして、2人の両親。
彼らは最強の家族だ。
 
 
 
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2006.04.30

「ナ・バ・テア」 森博嗣 著

なんとも奇妙なタイトルだけど、英語で書くと「Non But Air」
なるほど・・・である。

主人公のクサナギは「空にしか居場所が無い」と感じている。
戦闘機乗りで、ただ空を飛んで戦うためにだけに生まれて来た、ちょっと普通とは違う種類の人である。
でも、その「ちょっと普通とは違う」はずのクサナギに、私は妙に共感してしまう。
この地上がなんとなく生きにくい場所だなぁと感じている?
もしくは、感じたことがある?
だったら、きっとクサナギの気持がわかると思うよ。
 
 
この「ナ・バ・テア」は前作「スカイ・クロラ」の数年前のエピソードだ。
前作でも重要人物として登場したクサナギの過去が語られている。
じゃぁ、こっちを先に読んでもいいのかというと、それはNG。
やっぱり、「スカイ・クロラ」の方を先に読まないと。
前作同様、今作も完全一人称で描かれていて、物語はあくまで主人公クサナギの視点で綴られていく。
あいかわらず、仔細な描写や、懇切丁寧な説明は皆無。
「スカイ・クロラ」で少しずつ霧が晴れるようにして世界感を理解していく過程を味わい、そのうえで「ナ・バ・テア」を読まないと、たぶん、ワケが分からないと思う。
だからといって、これが不完全な作品かっていうと、そんなことはぜんぜん無い。

物語の舞台は近未来で、戦闘機乗りという特殊な職業の、キルドレという普通でない人たちが主人公で・・・
それは、現実とはかけ離れた世界の物語のようにも映る。
けれど、主人公の抱えている居心地の悪さは地上で生きている我々にも通じるものだ。
だからこそ、憧れをもって空を見上げるしかない私の心にも響くのだ。
 
 
既に、同シリーズの続編(?)が刊行済みのはずだけど、大人しく文庫化されるのを待つことにする。
それまでに、もういちど「スカイ・クロラ」を読み返してみるのもいいかもしれない。
前作では不可解だったクサナギの心情が、もしかしたら理解できるかもしれない。
 
 
蛇足。
「ナバテア」の中で、命がけで空に上がり戦いを繰り返す戦闘機乗りの生き様について語ってる部分がある。
そのくだりを読みながら、「これってサムライだよな・・・」と思ってしまった。
少なくとも「SAMURAI7のサムライ像は、これだ!」と、目からウロコというか、なんというか、モヤモヤと不明瞭だったものをスッキリと見通すことが出来た瞬間のような、爽快な気分になったのだ。
 
 
*当ブログ内の関連記事
 「スカイ・クロラ」 森 博嗣 著

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2006.03.14

「博士の愛した数式」 小川洋子 著

「僕の記憶は80分しかもたない」 
 
主人公は64歳の数学博士。
交通事故の後遺症で、記憶を80分しかとどめておけなくなってしまっている。
そこに派遣されて来た年若い家政婦。
そして、ひょんなことから博士の家に出入りするようになった家政婦の息子。
この3人の間に起こる、ささやかなエピソードの積み重ねによって、物語は進んで行く。
物語を彩るのは、博士の愛する数式と江夏豊。
私にとっては無愛想で意地悪な奴らでしかなかった数式が、なんだか神秘的な魅力をたたえてそこに在る。
かといって、今さらお近付きになろうとは思わないけど、誤解していてゴメンよ。
野球もあんまり詳しくないが、打率とか防御率とか、そういえば野球って数字が絡むスポーツだったね。
 
 
80分ごとに記憶が吹っ飛ぶというだけでも扱いに苦労するというのに、この博士、かなりの変人でもある。
ことあるごとに数式を持ちだし、ウンチクをたれる。
生活全てに独自のルールのようなものがあって、それを崩すのを許さない。
人ごみに出るのを嫌うが、べつに人嫌い、というワケではなさそうだ。
ことに、子供は大好きで、無条件で守るべき存在だと思い込んでいるようである。
どちらかというと、博士の方が子供みたいな人だと思うんだが。
まぁ、そういうわけで、これまでもたくさんの家政婦が送り込まれたけれど、誰も長続きしなかった。

ところが、この『私』は違った。
博士との間に、奇妙な関係を作り上げていく。
恋愛ではないし、友情とも少し違う気がする。家族でもないし・・・
よく分からないけど、温かくて、強い絆。
博士の方は毎回リセットされてしまうのだから、本当は『強い』とは言えないのかもしれない。
それでも、毎回ちゃんと絆を結べるのだから、やっぱり強いのだと私は思う。

少なくとも、
繰り返し絆を結びたい。
このまま忘れられたままにはしておきたくない。
そう思わせるだけの魅力を、この博士は持っている。

息子のルートの存在も大きかったのだろう。
博士のルートに対する愛情の傾け方は、驚くばかりだ。

もしかしたら、『私』にもルートにも父親が居ないということが、この奇妙な関係を作り上げることが出来た理由のひとつかもしれない。
ルートを愛おしむ博士を見ている『私』の視点は、孫を溺愛する父親を見る娘の目線と一致する。
小説の中には、そんなことは一言も書かれていなかったけれど、私はなんとなくそう思った。
 
 
人間は『記憶』の上に成り立つものだと思っていた。
だから、記憶が保てないということは、さぞかし不毛で恐ろしいことだろうと思っていた。
でも、それは間違いだったようだ。
少しずつ違う日常があって、楽しかったり、嬉しかったり、狼狽したり、悲しんだり、そういった記憶のすべてを博士は次の日に持ち越すことが出来ない。
記憶に留まらないからといって、それは無駄なのか?
そんなことはない。
その時、その時の博士の想いは、本物だから。

博士はとても静かな世界に暮らしていて、それは存外幸せそうに見えた。
 
 
小川洋子さんの作品を読んだのは、今回が初めてだった。
なんて奇麗な日本語を書く人なんだろうと思った。
いつもガサツな文章ばっかり書いてる自分が、恥ずかしくなった。
まぁ、比べること自体間違ってるんだけど。
全編を覆う優しい雰囲気は、この文章だからこそ表現できたのだろう。
この人の文章がいつもこんな感じなのか、他の作品も読んでみようと思う。
 
 
 
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2006.01.16

「模倣犯」 宮部みゆき著

ミステリーには大きく分けて2つのタイプがある。

1つは犯人探しに主題を置いたもの。
犯人は分かっているが、そのトリックが全く不明・・・そういうタイプのものも、こちらに含まれるだろう。
探偵役の人物が、犯人の仕組んだトリックを見抜き、解説し、真犯人を特定する過程が描かれる。
読者に途中で犯人がバレてしまっては面白さが半減するため、犯人は高度で難解なトリックを仕掛けなければならない。

もう1つは、最初から犯人が誰だか分かっている(あるいは途中で判明してしまう)もの。
探偵役の人物がいかにして犯人を追いつめて行くか、その過程を描くと同時に、犯人の心理状態について描き出されることも多い。
こちらの場合は、七面倒くさいトリックなどは無くても構わない。

厳密に言うと、後者は『推理小説』とは言わないのかもしれない。
物語の真ん中に『犯罪』はあっても、描き出そうとするのは『犯罪』そのものではなく、それを取り巻く『人間』だ。
(前者では『人間』が描かれていないという意味ではない。念のため)
 
 
この「模倣犯」は、後者のタイプ。

名前こそ最初から明されてはいないが、犯人がどういう人物かは推察できる。
かといって、真犯人Xの視点から物語が語られる部分は、ほとんど無い。
真犯人Xは、あくまで客観的に『見られる』立場に置かれている。
そして、彼を見ているのは、彼の起こした凶悪事件に関わってしまった人々。

彼らは、ごく普通の人々だ。
敏腕刑事でもないし、名探偵でもない。
被害者の家族だったり、事件の第一発見者だったり、ほとんど実績のないライターだったり、後方で資料整理をしている警察官だったりする。
そんな彼らが、さまざまに葛藤しながら、事件の真相に迫って行く。

彼らの姿を描くことで、『犯罪』が『日常』のすぐ隣でアングリと口を開けているものだということを、私たちに思い出させてくれる。
その口に食い付かれてしまった人たちが、どんな想いであがき、抜け出そうとするのか、私たちに伝えてくれる。

それはフィクションに過ぎないのだけれど、現実離れしたトリックを名探偵が解き明かしてみせるのに比べたら、はるかに真実味がある。
だからこそ感銘を受け、読み終えた後に深い余韻を残すのだと思う。

この物語に登場する人たちは、誰1人としてスーパーマンではない。
欠点だらけの所に、いくつかは良い所もある。
見ていてムカつくようなエラーもしでかす代わりに、時々、驚くようなクリーンヒットを放ってみせる。
完璧だと思われていた真犯人Xも、最後で大ポカをやらかす。
人間なんて、そんなものだ。
 
 
登場人物の中で、私は有馬のお爺ちゃんがとても好きだ。
5巻で真一君を励ますくだりでは、自分も励まされたような気がして本当に泣けて来たし、最後の最後に泣き崩れる場面では一緒に泣いた。

たぶん、本を読みながら、お爺ちゃんと一緒にこの事件と戦っている気分になっていたのだろう。

主要のメンバーのみならず、ホンの端役に至るまで、事細かな描写がなされているせいで膨大な文章量になっているけれど、最後までダレさせないのは、さすが宮部さんと言ったところ。
主要な登場人物がことごとく繋がっているのは、少々出来過ぎで気になったけれど、まぁ大目に見てもいいか。
それを差し引いても余りあるほど、良い内容だったから。

重いテーマでありながら、エンターテイメントしても成立している、良質なミステリー。
各種の賞を獲得したのも頷ける、そんな作品であったのだ。
 
 
 
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2005.08.26

気休めだけどさ。

「震災時帰宅支援マップ」(昭文社)が、売れているらしい。

私も早々と購入した。
相方くんに持たせるためである。

何を隠そう、うちの相方くんは地方出身者。
よって、都心の土地勘がほとんど無い。
都心で働くようになって久しいくせに、ホント、疎いんだわ。
公共の交通機関を使っているからちゃんと目的地にたどり着けているんであって、自力でナントカせい!ってことになったら・・・
神奈川の自宅を目指しているつもりが、いつの間にか荒川を越えちゃってる可能性も無きにしもあらずな感じ。
非常に、頼りないんである。
 
 
都心が大地震に見舞われた際、大量の帰宅困難者が発生する。

交通機関の復旧はいつになるか分からない。
・・・もはや、徒歩で帰るしかない。
これは、そんな状況に陥った人たちのためにお役に立ちましょう!っていう、特別な地図なんである。

都心から自宅方面への取るべきルートはもとより、休憩できそうな場所や「放置自転車多し!」なんて情報まで書き込まれている。
この地図があれば、なんとか家に辿り着いてくれそうな気がする。うちの相方くんでも。
 
 
とはいえ、大混乱をきたしている中、徒歩で帰宅するのは相当危険だと思う。
どこか安全な場所を見つけて、状況が落ち着くまでじっとしていてくれた方がよっぽど安心な気もする。
でも、都心が大打撃なら、私だって悲惨な状況の中に1人ぽつねんと取り残されているかもしれないのだ。
そりゃ、もう、心細くって、一刻も早く帰って来て欲しいと思うだろう。
複雑である。
 
 
私にこれを押し付けられて以来、相方くんは毎日カバンに入れて通勤している。
仕事で外出する際も、ちゃんと持ち歩いているらしい。
良い心がけである。

まぁ、ほとんど気休めみたいなものなんだけど。
情報は少しでも多い方が良いだろう・・・って程度かな。

こんな地図が必要な事態にならないことを祈りつつ・・・うーん、アタシは非常用持ち出し袋のチェックでもしておくか。
備えあれば憂い無し・・・とも言うことだし。

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2005.08.20

読書の記録

読書関連記事のバックナンバーです。
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*日付は投稿日です
 
  
「四日間の奇蹟」 浅倉卓弥 著(2004/12/20)
  
 
「オーデュボンの祈り」 伊坂幸太郎 著(2006/09/28)

「ラッシュライフ」 伊坂幸太郎 著 (2007/3/20)
 
「陽気なギャングが地球を回す」 伊坂幸太郎 著(2006/08/31)

「重力ピエロ」 伊坂幸太郎 著(2006/07/27)

「アヒルと鴨のコインロッカー」 伊坂幸太郎 著(2007/06/15)

「死神の精度」 伊坂幸太郎 著(2008/04/22)

「グラスホッパー」 伊坂幸太郎 著(2008/09/01) 

 
 
「うつくしい子ども」 石田衣良 著(2005/01/19)

「エンジェル」 石田衣良 著(2007/07/15)

「狐笛のかなた」 上橋菜穂子 著(2007/08/24)
 
「クラインの壷」 岡嶋二人 著(2005/07/22)

「博士の愛した数学」 小川洋子 著(2006/03/14)

「ZOO 1&2」 乙 一 著(2006/08/01)

「華胥の幽夢」 小野不由美 著(2005/06/21)
 
 
「麦の海に沈む果実」 恩田 陸 著(2005/05/09)

「月の裏側」 恩田 陸 著(2005/03/01)

「新耳袋コレクション」 恩田 陸 編(2006/08/08)
 
 
「姑獲鳥の夏」 京極夏彦 著(2005/08/06)

「巷説百物語」 京極夏彦 著(2005/05/20)

「続巷説百物語」 京極夏彦 著(2005/08/03)
 
 
「サイレントリー」 鈴木光司 著(2005/03/16)

「流星ワゴン」 重松 清(2005/04/15)
 
 
「しゃばけ」 畠中 恵 著(2006/12/26)

「ぬしさまへ」 畠中 恵 著(2007/07/07)

「ねこのばば」 畠中 恵 著(2008/03/28)

 
 
「模倣犯」 宮部みゆき 著 (2006/01/16)

「ICO」 宮部みゆき 著(2005/03/03)
 
 
「スカイ・クロラ」 森 博嗣 著(2005/05/17)

「ナ・バ・テア」 森 博嗣 著(2006/04/30)

「カクレカラクリ」 森 博嗣 著(2006/09/05)

「ZOKU」 森 博嗣 著(2007/11/03)

 
 
「アルジャーノンに花束を」 ダニエル・キイス 著
(2005/07/01)
  
「夏への扉」 ロバート・A・ハインライン 著
(2005/06/01)
 
 
「ダーリンの頭ン中」(2005/03/22)

「大人に役立つ算数の時間」(2005/01/11)

気休めだけどさ(災害時帰宅支援マップ)

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2005.08.06

「姑獲鳥の夏」 京極夏彦 著

 大戦の爪痕残る昭和初期
 密室トリック
 20ヶ月も身ごもったままの妊婦
 産院から相次いで消える嬰児
 いわく付きの旧家
 まとわりつく妖怪譚、怪異譚
 この世のものとは思えない美女 
 エキセントリックな探偵

横溝正史的世界の構成要素を「これでもか!」ってくらいに満たしております。

死体がゴロゴロ転がってないあたりは、犬神家よりマトモなんだけど、それ以上にブッ飛んじゃってるんですよねー。

いや、もう、ハチャメチャですから。このお話し。
ここまでグチャグチャなのって、アリですか???

だいたい登場人物が、ことごとく変人なんだもんな。
(マトモなのって、京極堂の妹くらいか?)
よりによって、一番マトモでなきゃいけないはずの語り手が・・・
関口!オマエだっ!
この男のおかげで、このストーリーは成り立っているようなもの。
関口さえ居なければ、この話しは半分くらいのとこで終わってるんだから。
まぁ、それこそが、この話しのキモなんでしょうが。

それとね・・・

京極堂、ウンチク垂れすぎ。

この分厚い文庫本の半分は、京極堂のウンチクなんじゃぁあるまいか。
映画では、どうなってるんでしょうねぇ。
活字を追ってるから、どうにかついていけてるけど、セリフでだーっとまくしたてられたら・・・観てる方は眠くなってしまうでしょ、たぶん。
かといって、端折っちゃったらワケ分からなくなりそうだし。
物語の根底にある思想というか、知識というか・・・そういうものを、この人が1人で喋ってしまっているんで、この「京極堂のウンチク」をきちんと理解していないと、このストーリー自体も理解できないでしょう。
京極堂は作者の分身・・・なのかな。(名前からしても・・・)
そういや、「巷説百物語」でも誰かが同じようなこと喋ってたナ。

概ね、面白かったです。(ウンチクも含めて)
途中で真犯人が分かっちゃったり、カラクリの一部が見えちゃったりしましたケドぉ・・・
関口の狼狽えっぷりが、不安感を否応無く盛り上げてくれてますから、終幕に至るまで「飽きる」ということはありませんでした。

そして、京極堂の謎解きシーンは圧巻です。

映画でのキャスティングを知っていたんで、京極堂があの顔で、滔々と語る様子がまざまざと浮かんじゃいましたよ。
どのキャラも、イメージを大きく外しては居ないかな。
古くからの京極堂ファンには一家言あるでしょうが。
映画はDVDになった頃、観るかもしれないです。
(映画館まで行く気には、ちょっとなれない)
でも、京極堂のキャラにはすっかり惚れ込んでしまったので、他のを読んでみたくなりましたよ。
他でも、あの調子で喋りまくってるんだろうか?

そうなんだろうな、きっと。

・・・辞書並みに分厚い本の半分くらいが京極堂のウンチク?
・・・うへぇ。
 
 
  
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2005.08.03

「続巷説百物語」  京極夏彦 著

うぁ〜、泣いちゃいましたよー。
最後のところで、ボロボロっと・・・
この本で泣くとは夢にも思わなかったですよゥ。
っていうか、これで泣いちゃうのなんて私ぐらいですか?
ええ、百歩譲っても感動巨編じゃありませんから。


物語の舞台は江戸末期。
泰平の世であり、かろうじて妖怪の居場所が残されていた時代でもあります。

表立って裁くことのできない悪行を、金で請け負い闇に葬る、小悪党・又市一味。

小悪党と言っても、むやみと人死にを出すこともなく、その余波で誰かが迷惑をこうむる訳でもなく、全てを妖怪の仕業として、万事丸くおさめてしまうんですな。
その「仕掛け」は実に巧妙。
途中で「今回のターゲットはコイツだな?」って分かってしまうのだけど、それでも、からくりが明かされるくだりは、ワクワクしながら読んでしまうんですよねぇ。
 
 
短編集の体裁は取っているものの、これは全部繋がった1つの物語なんであります。
ここまで複雑に絡み合った因縁話しがあるものかい!と言いたいところだけど、それは、それ。

文庫本にはあり得ない分厚さの中に、おぎんさんの生い立ちやら、平家の落人の末裔やら、フラフラと頼りない百介の葛藤やら・・・妖怪まで担ぎ出されて、てんこ盛りのえらい騒ぎです。

それなのに、長さをちっとも感じさせないばかりか、どれもこれもキッチリとケリをつけての鮮やかなる幕引き。
お見事であります。


シリーズ前作「巷説百物語」では、あくまでも傍観者的立場だった百介が、今作では大活躍。
探偵役でもあり、語り手でもあり、(そうとは知らずに)仕掛けの片棒担ぎをしたり、死にそうな目にあったり、と、大変忙しそうです。

物語は完全に百介の視点で語られていくため、裏で仕掛ける又市はさらに深い闇の中へと身を潜めています。影はちらつかせるものの、最後の種明かしになるまでちっとも姿を現しやしません。(でも、妙に存在感があって、格好いいんだよねー、又さんって・・・)
 
 
大店の若隠居でもある百介は、世の中の「表」に居ながらにして、「裏」の世界に半分足を突っ込んだ、どっちつかずの立場から事の顛末を見届けることになります。

彼のポジションは、この物語でとても重要な意味を持っているんですね。

「表」と「裏」
この関係が、この物語には何組も登場します。

まっとうな「表」の世界で生きる百介と、「裏」の社会の住人である又市とその仲間。
表向きには妖怪の仕業とみせかけておいて、その実、裏に潜むは人間の浅ましさ、愚かさ、醜さ・・・等々。
(他にもたくさんあるけれど、ネタバレの恐れがあるから、省略)

この「表」と「裏」の間には埋まることの無い深い溝があり、本来、触れ合うべきものではありません。
「表」と「裏」の両方を見るという特権を与えられた百介は、極めて稀な境遇に置かれていることになります。
百介もそれは自覚していて、中途半端な自分にイラついたりもしています。(語り部としては最高の座席を確保してるんだけどね・・・)

はたして百介は「表」と「裏」、どちらに腰を据えるのか。
一連の「仕掛け」と共に、それが今作の主軸となっております。
 
 
舞台設定が「江戸時代」なため、少々古めかしい言い回しが用いられています。
そこのところに拒絶反応を起こさなければ、非常に楽しめること請け合いであります。
タイトルから連想しがちな、ホラー的な「怖さ」はありません。
が、それ以上の「怖さ」があるんです。
「さぁ、泣いてください!」と言わんばかりのメロドラマ以上の「悲しみ」(というより、「哀しみ」か)が、根底に流れています。
謎解きや冒険譚としてのドキドキ感もあったりします。
シリーズ前作「巷説百物語」と併せて読めば楽しさ倍増。
オススメですよゥ。
 
 
 
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2005.07.22

「クラインの壷」  岡嶋二人 著

怖いですよ、この小説。
ことにゲーム好きな人は、背筋ゾゾゾーーーですよ。 

ちょっと前に書店で平積みになっているのを見かけて、「なんで今ごろ?」と不思議に思ったんですけど、講談社文庫から再発刊されたようです。

この小説、初版は平成元年。
私が新潮文庫で読んだのも、かれこれ10年くらい前。
家の本棚の奥をあさってみたら、あった、あった。
ページが黄色く変色してるし、講談社文庫に比べると文字が小さいんだけど、委細かまわず読み返してみました。

やっぱり、怖いわ。
 
 
ネタバレにならない程度にあらすじ。(う〜ん、難しいな)

主人公は、学生時代に応募したゲームのシナリオが採用されたことがきっかけで、最新鋭ゲーム機のテストプレイヤーに選ばれた青年。

そのゲーム機「クライン2」(別名:クラインの壷)は、人間の全感覚を完璧にシュミレートしてしまうというとんでもない代物だった。
クライン2でプレイすると、現実と見まがうような感覚でゲームの世界を体験できるのだ。

夢のような最新鋭ゲーム機の最初のプレイヤーとなり、興奮を隠せない主人公。
おまけに、もう1人のテストプレイヤーは、可愛い女の子だ。
それは、素晴らしいひとときになるはずだった。

が・・・
テストプレイ中に聞こえてきた「戻れ」という謎の声。
主人公の周囲で、何かが狂い始めた。

・・・って、このへんにしておきましょう。
 
 
「クラインの壷」というのは、幾何学理論の1つで、メビウスの輪の立体バージョンだそうです。

メビウスの輪は、ここで説明するまでもないでしょう。
表だと思っていたらいつの間にか裏になっちゃってた・・・っていう、あれです。

クラインの壷はそれを四次元にしたもの・・・って、もうそれを聞いただけで私なんぞは理解する努力を放棄したくなってしまいます。
間違っても、私に解説を求めないように。
本編中で上手く説明されてますので、そちらをお読みになって下さいまし。
 
 
最近、ゲームが青少年に与える影響について声高に叫ぶ人々が現れたり、残虐ゲームの販売を一部規制したりする自治体が現れたり、と、ゲーム周辺はなにかと騒がしいです。

たとえばバイオレンスなゲームをしている時、人間の脳は本当にそれを体験していると錯覚をおこしているらしい・・・という研究結果も発表されました。(あくまでも、現段階では「らしい」のようですが)

人間の脳は、ずいぶんと騙されやすいもののようですね。

プレステ程度の疑似体験でその調子では、クライン2なんてものが本当に存在したら、コロっと騙されてしまいますよ。間違いなく。
 
 
最後になりましたが、この作品は井上夢人さんと田奈純一さんという二人の作家の合作です。
「岡嶋二人」というのは、お2人が合作で作品を発表する際のペンネームです。(「クラインの壷」を最後に、コンビを解消されたようですが)

井上夢人さんは「どちらが表で、どちらが裏か?」みたいな構造がお好きなのか、「プラスチック」という作品でも「どちらが表で、どちらが裏か?」的な状況を作り出し、読者を混乱の渦に突き落としてくれています。
こちらも怖いです。オススメです。
 
 
 
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2005.07.01

アルジャーノンに花束を ダニエル・キイス著

言わずと知れた、名作中の名作。

何年か前にユースケサンタマリア主演でドラマ化されましたし、はるか遠い昔に映画化もされていたはず。
私はどちらも未見です。
あまりにも思い入れが強すぎて、映像作品など、とてもじゃないけれど見る気になれないのです。

物語は・・・
幼児並みの知能しか持たない主人公・チャーリーが、手術によって天才へと変貌を遂げて行く過程と、そこからまた元の状態に戻って行く様子が、「チャーリー本人の書く日記」という形で描かれています。

頭が良かったらどんなに素晴らしいだろう・・・
そう思っていたチャーリーですが、実際、天才になってみると・・・
確かに素晴らしいこともあるけれど、悲しいことや辛いこともたくさんあって、「知らない方が良かったんじゃないか?」と思うような出来事が彼を待ち受けています。

しかも、手術の効果が一時的なものでしかないことに、彼は気付いてしまいます。

徐々に思考能力は衰え、やがて、元の「何も分からないチャーリー」に戻ってしまう。
でも、どちらが本当に幸せなのか。
確かな答えは未だに見つけられず、私は最後の「ついしん」を読むたびに涙ぐんでしまいます。


すごいのは、それらが一人称で書かれているという点。
物語は、チャーリーが書く「日記」によって構成されています。
そのため、最初のうちは平仮名ばっかりで、誤字脱字だらけ。内容も小学生の絵日記並み。
ところが、チャーリーの知能が上がるにつれ文章も変わって行き、しまいには、「誰の研究論文か?」と見まがうほどに。

作品そのものも素晴らしいのですが、これを日本語に訳した翻訳者の方の功績も非常に大きいと思います。
感謝を込めて、小尾芙佐さんにも花束を贈りたいです。
 
  
 
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2005.06.21

「華胥の幽夢」 小野不由美 著

まずは、このシリーズをご存じない方のために「十二国記の基礎知識」から。
 
 
物語の舞台は、昔の中国を思わせるような文化を持つ十二の王国で構成される架空の世界。

なんと、子供は親から生まれるのではなく木に実る・・・という、カナリぶっ飛んだ世界である。

どうも、この世界はパラレルワールド的存在のようで、日本とは密接なつながりがある。
時々、その境目に綻びが生じて、誰かが流されてしまったりする。

それぞれの国には、「王」と「麒麟」が居る。どちらも、一国につき1人&1匹(?)のみ。

各国を治める「王」は、天の意によって定められていて、それを見付け出すという重要な役割を担うのが「麒麟」。

麒麟は慈愛に満ちた生き物で、血なまぐさい事件が起こると、とたんに具合が悪くなってしまったりする。

麒麟はふだんは「人」の姿をしていて、男だったり、女だったり、美青年だったり、やんちゃな悪ガキだったり、色んなバリエーションがある。その性格も様々で、神様の御使いみたいな位置づけなんだけど、恐ろしく個性的。

王として即位した者は、不老不死の身となる。ただし、統治に失敗し国が傾くと、その限りではない。

失策をやらかした王が死ぬなりなんなりして王位が空くと、麒麟が新たな王を捜し出す。

しかし、国が傾くと麒麟は病気になり、死んでしまうこともある。
その場合、次の麒麟が生まれて、王を選べるまでに成熟するのを待たなければならない。
その間、その国は麒麟も居なきゃ、王様も居ないっていう最悪の状況に置かれて、国土は荒れ果て大混乱。たくさんの人が路頭に迷い、化け物まで溢れ出して、もうズタボロな状態に陥る。

よーするに、新しい王様が即位するのは、決まって前の王様がヘマをやらかして国がグチャグチャになってしまっている時なのだ。
だから、この世界の王様はとっても大変。玉座にふんぞり返っていればいいってもんじゃない。(一部、それっぽい王様も居ますが)
即位直後から、大忙し。
どうにか建て直した国を維持するのに、また一苦労。
おまけに、失敗は、すなわち自身の身を滅ぼすという仕組み。
マトモな神経の人には、やってられない激務といえる。
 
 
「十二国記」シリーズでは、だいたい、そんな世界で生きる、「王」と「麒麟」とその周囲の人々の様子が、ドラマチックに描かれています。
体裁は「東洋風味のファンタジー」なんですが、かなり重厚な作りになっていて、深く考えさせられる部分も多々あります。
元々は少女向けの作品だったものが、オトナの女性のみならず男性にも広く受け入れられるようになったのも頷けます。
 
 
今回、私が読んだ「華胥の幽夢」は、シリーズ中唯一の短編集です。

一番良かったのは、「華胥」かな。
少しミステリー仕立てで、1つの王朝が倒れていく様子が描かれていて圧倒されました。

他に、自分の役割について悩む泰麒の「はじめてのおつかい」を描いた「冬栄」
とまどいながらも王としての道を歩き始めた陽子と、彼女を支える楽俊との友情を描いた「書簡」
長く続いている王朝であればこその不安を描いた「帰山」
等、5編が収録されています。

短編集だから取っ付きやすいかも・・・などと思って、初心者の方がこの短編集に手を出すのは、絶対にやめましょう。
他を読んでいないと、人間関係がサッパリ分からないですから。
オススメはやっぱり、刊行順通り「月の影 影の海」から読み始めることです。

「月の影 影の海」は、普通に女子高生していた陽子が、十二国に放り込まれて踏んだり蹴ったりな目に遭うお話しです。
ありきたりのファンタジーだったら、カッコいい青年剣士あたりがエスコートしてくれちゃったりするんでしょうけど、これに出てくる美青年は、勝手に陽子を迎えに来ておいて自分は行方不明になっちゃう始末。
そのおかげで、陽子はとんでもない苦労を強いられることになります。
色恋沙汰とはまったく無縁だし、えらい強くなっちゃって・・・
そこが、この物語の面白いトコロなんですけどね。

「華胥の幽夢」以降、当シリーズの新作はパッタリ途絶えてしまっています。作者に関する情報もほとんど入って来ないので、この先どうなるのか・・・?
 
 
 
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2005.06.01

「夏への扉」ロバート・A・ハインライン

古典的SFの名作中の名作・・・ですよね。
急に懐かしくなって、読み返してしまいました。
前に読んだのは高校生の時だったっけ?(遠い目)
大筋しか覚えていなかったため、新鮮な気持ちで読めました。

この小説における「未来」は「2001年」でして、現実では既に「過去」になっちゃってます。
まぁ、昔のSFを読んでいると、よくあること。
小説に描かれているほど、現実の世界は進歩していないようですが・・・
このお話の中にお掃除ロボットが出てきます。
これが、実際に売られている全自動掃除機(???スミマセン、商品名忘れました)とソックリです。
「住人の留守中に勝手に動き回って掃除して、仕事が終わるとちゃんと充電器に戻っている」という。
この掃除機を開発した人も、この本を読んだのかもしれない・・・ナンテ、思ってしまいました。
もし本当にそうだったら、ちょっとステキじゃありませんか。

以前読んだ時にはわからなかった事が、今になってようやく理解できたりして、最後にはジンワリ感動。そんなに感動した覚えは無かったのですが・・・感じ方が変わっているんですね、きっと。
そういう発見があるから、昔読んだ本をずっと後になって読み返すってのも、いいものです。

これに味を占めて、あともう2冊、読んでみようかと思います。
ダニエル・キィスの「アルジャーノンに花束を」とブラッドヴェリの「火星年代記」を。
ええ、こんなのばっかり読んでる女子高生だったんです。
 
 
 
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2005.05.20

「巷説百物語」 京極 夏彦 著

タイトルから、てっきり妖怪譚かと思ってました。
違うんですねー。
むしろ、ミステリー?

この物語の中で起きる妖怪騒ぎには全て裏があって、そこに潜んでいたのは生身の人間だったりします。
で、その騒動に必ずからんでくる謎の数人組。
これが、昔テレビドラマであった「必殺!仕事人」シリーズみたい。

狂言回し的役割を担う、戯作者志望の百介が、また、いい味を出してます。
読み手は百介の立場で読み進めて行くと、ちょうどいい塩梅。

本当に恐ろしいのは魑魅魍魎の類いではなく、人の心の浅ましさ、愚かさ、ということですか・・・

というか、現実に起きた事件が伝え広がるうちに、それが妖怪の仕業になり、一人歩きするようになったのかもしれませんね。

面白かったので、さっそく続編を購入してきました。

*当ブログ内の関連記事

 「続巷説百物語」の感想

 その他の読書感想文
 

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2005.05.17

「スカイ・クロラ」 森 博嗣 著

不思議な小説だ。
全編を通して、霧の中をさまよっているような不安感が漂っている。

以前「すべてがFになる」を読み、その後、書店に並ぶシリーズをザッと眺めて、この作家は「本格推理小説」を書く人だと思っていた。
でも、この「スカイ・クロラ」はずいぶんと趣が違う。

物語は、主人公の一人称で淡々と進んで行く。
よけいな描写は、一切無い。
いくつかのエピソードが(あくまで)主人公の目線で語られ、モヤモヤとしたまま物語は進み、やがて一気に終局へ向かう。

この小説を読みながら、不安な感じを抱き続けたのは、語り手である主人公自身がフワフワと頼りない存在だからなのかもしれない。

物語の舞台は、近未来の(恐らく)日本。
それだって、ハッキリとは説明されていない。
現代の日本では無いけれど、生活様式が今とさほどかけ離れてはいない様子だから、「そう遠くない未来」と判断しただけだ。
主人公の「戦闘機乗り」は、とある民間企業に所属し、戦闘行為を行っている。
敵が何者なのかは、ずっと後になるまで分からない。
国家の軍隊ではなく、なぜ企業が「戦争」をしているのか。
その答えも、最後になって明かされる。
そして、「キルドレ」という存在。
(それが何者であるかは、私がここに書くべきではないだろう)

それらは全て、話しの流れでそれらしいセリフが出てきて、読んでいる方はそこから事実を汲み取って「あぁ、そういうことだったのか」と納得する仕組みになっている。
 
 
世界観を事細かに描写する。
主人公の置かれた状況を説明するために、歴史的背景から語り始める。
1つ1つのエピソードをいろいろな視点から描いてみせる。
そういう手法も、小説としてはアリだ。
むしろ、そっちが普通かもしれないし、読者にも伝わりやすい。
でも、あえて書かない。説明を加えない。
それで伝わらなかったら元も子もないのだけれど、この小説は主人公たちの生きている世界を描くことに見事に成功している。
 
 
やがて、霧は晴れる。
その瞬間、私は不安から解放される。
たとえ、そこに待っていたのが、澄み切った青空でなかったとしても。
 
 
*当ブログ内の関連記事
 
「ナ・バ・テア」  森 博嗣 著 の感想
その他の読書感想文
 

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2005.05.09

「麦の海に沈む果実」 恩田 陸

「少女マンガを読んでいるみたいだなぁ」
この本を読みながら、終始、そう感じていた。

物語の舞台は、湿原に囲まれた全寮制の学校。
ドタバタとした学生生活を送っていた我が身には、それだけで、もう、十分に現実離れしていると感じる。
一癖も二癖もある生徒たちは、それぞれに複雑な事情を抱えてはいるものの、概ねおぼっちゃま、お嬢様である。

そこへ迷い込んだ、時期外れの転校生。
(この「時期外れ」が、この学校にとっては大きな意味を持つ)
おまけに美少女ときた。

そして起こる、殺人事件。
(でも、警察ザタにはならない)

とにかく、現実から切り離された、夢のような物語がこの学校の中で展開する。

ある意味、この小説は「夢」の物語なのかもしれない。

ネタバレになるので詳しくは書けないが、この物語は「理瀬」という少女の見ていた「夢」であり、あるいは「理瀬」という少女自身が・・・
 
 
私は、この物語の結末に、たいそうガッカリした。
なんだか、裏切られた気がした。
それは、「理瀬」という少女がとても魅力的だったからだ。
ガッカリすると同時に、このことを、作者は伝えたかったのかな・・・とも思った。
(なんだか意味不明な文章ですが、ネタバレを避けようとすると、どうしてもこうなってしまって)
 
 
最初に「少女マンガのような」と書いたけれど、実は、コレを読みながら、その背後にある1人の漫画家の影がチラチラとしていて・・・
コレに限らず、恩田さんの本を読んでいると、どうもその人の影響を受けているようなにおいがする。
この作者の年齢からいって、少女時代にその漫画家の作品を読みふけっていたとしてもおかしくない。
かくいう私も、その漫画家の作品にどっぷりと浸かっていたので、この鼻が同類を嗅ぎ分けているのではないかと思っているのだが、果たして。
 
 
 
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2005.04.15

「流星ワゴン」 重松 清

「死んじゃってもいいかなぁ・・・」
リストラで職を失い、家庭は崩壊した。
積極的に死のうという気力すら無く、そう呟いた男の前に、不思議なワゴン車が現れる。
赤ワイン色のオデッセイ。
「素敵な家族」を乗せるのに、うってつけの車。
でも、その車に乗っていたのは、5年前に事故死した父子だった。

ワゴン車は、男を過去へと運んで行く。
そこは、男の人生に置いて重要な意味を持つポイントなのだが、男にはどうすることもできない。
突きつけられた現実に、ただ苦痛を覚えるばかり。

そんな旅のさなか、余命幾ばくも無い父が、男と同年代の姿で現れる。

自分と同い齢の父や、ワゴン車の父子と接し、過去の「ある日」を繰り返すことで、男の中で何かが少しずつ変わって行く。
そして、男がワゴン車を降りる時が来る・・・

この男が(それこそ、バック・トゥ・ザ・フューチャーばりの)大活躍をして、素敵な未来を勝ち取ったりしたら、ごくごく普通のファンタジーだっただろう。
それはそれで面白いかもしれないが、この物語が言いたいのは、そんな単純なモノじゃない。

一言で言えば、これは「父と息子の物語」だ。

父と息子の間には、決して女が立ち入ることのできない絆があると思う。
でも、その絆はとても脆く、簡単に壊れてしまう。
おまけに、お互いに不器用だったり、意地っ張りだったりするものだから、いったん壊れてしまった絆を修復するのは非常に難しい。
それでも、わずかなきっかけで、取り戻すこともまた可能なのだと、この物語は伝えたいのだと思う。

この本は、誰かの父親である人に、間違いなく誰かの息子である人に、おススメしたい。
涙無くしては、読めないんじゃないかな?
女性である私も、あちこちでウルウルしていたので、女性にはおススメできないってわけじゃない。
ただ、父と息子の関係に、少しばかりの嫉妬を感じるかもしれない。
もっとも、母と子の間にも、父親には太刀打ちのできない絆が存在しているから、ここはひとつ、「おあいこ」ということで手を打つとしよう。
 
 
 
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2005.03.22

ダーリンの頭ン中

「ダーリンは外国人」に出会って以来、すっかりトニーさんのファンです。
今回の「頭ン中」は「外国人」の姉妹版。
おなじみのトニーさんと左多里さんが、言語の不思議についてアレコレ語ってくれています。
これが小難しい学術書かなんかだったらゼッタイに読みたくないところですが、語っているのがこのお二人なので楽しく読めました。

相変わらず、良いキャラしてるトニーさん。
でも、このキャラが生きるのも相方の左多里さんのキャラあってのこと。
見事なカップリングだと思います。

言葉って、不思議ですねー。
1つ1つの単語に歴史があったり、こうしている今も、どこかで新しい言葉が生まれているかもしれないんですから。
普段当たり前に使ってる日本語も、なんだか、ちょっと、いとおしく思えて来ました。
 
 
 
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2005.03.16

「サイレントリー」 鈴木光司 著

鈴木光司さんと言えば「リング」・・・
というわけで、この人をホラー作家とみなしていらっしゃる方は非常に多いと思われます。

かくいう私も、最初に読んだのは「リング」でした。
でも、その後で「楽園」と「光射す海」を読んで、「こっちの方が、ずっとイイじゃん!」と思い、好きな作家に仲間入りすることになったのでした。

今回読んだ「サイレントリー」も、ホラーではなく癒し系の短編集。
いずれも、「身近な人の死」や「崩壊寸前の家族」といった、人生の危機的(かつ悲劇的)局面に立たされた人たちの癒しと再生の物語です。

「枝の折れた小さな樹」は、幼くして死んだ妹のその後の人生をCGを駆使して映像化し、悲しみに暮れる父親に見せる、というストーリー。
この映像を作ったお兄ちゃんの気持ちはよく分かるし、作者の言わんとするところも(たぶん)分かります。
でも、私は亡くなった人の映像は、あまり見たくないです。
もしも私がこんな映像を見せられたら、激怒するか、ショックで再起不能になるかどちらかだと思います。
よって、この作品に対する私の評価は微妙です。

私が好きだな、と思ったのは、「サイレントリー」と「一輪車」の2編。
どちらも、親子の強い絆を感じさせる作品で、泣けて、泣けて、どうしようもありませんでした。

未読の方に・・・
この本は、電車の中や病院の待ち合い室などでは、決して読まないで下さい。
1人でこっそり読んで、思いっきり泣きましょう。

読み終わった後に、なんだか優しい気持ちになれる・・・そんな一冊です。
 
 
 
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2005.03.03

「ICO 霧の城」 宮部みゆき 著

PS2ゲーム「ICO」のノベライズ・・・と言っていいものか、どうか。

ゲームの「ICO」は、世間的にはとっても評価の高いソフトですが、私には今ひとつでした。

確かに、グラフィックは圧倒的に奇麗で、「女の子と手を繋いでいなければならない」という制約が新鮮だったりします。
でも、それだけなんですよね。
人気の無い城の中を不思議な女の子の手を引いて歩き回り、時々戦ったりしながら、次々と仕掛けを解いて城からの脱出をはかる・・・ただ、それだけ。

一応、ストーリーらしきものはあるのですが、ゲーム内ではほとんど語られず・・・だいたい、主人公がなんでここに来たのかは説明書を読まないと分からない始末で。

プレイしながら、どうして、あんなに評判がいいんでしょ?と首を傾げたものでした。

そこで、「ICO 霧の城」です。
宮部さんは、私の大好きな作家の1人で、特にファンタジー系の作品が好きだったりします。
そのため、躊躇なくこの本を手に取ったわけですが、読んでみて、ひたすら感嘆してしまいました。

あのゲームから、こんなストーリーを書けてしまう宮部さんは、やっぱりスゴい。

ゲームでは全く触れられていなかった背景がこと細かに描かれていて、これは、ノベライズというより、「ICO」というゲームを素材とした、全く別の物語といって差し支えないのではと思ってしまいました。

この本を読んでからゲームをプレイしたら、前には見えなかったものが見えて来るかもしれないと思い、もう1回「ICO」をプレイしてみる気になりました。
売ってしまわなくて良かったです、ホントに。
 
 
 
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2005.03.01

「月の裏側」 恩田 陸

私にとって、恩田 陸という作家は、当たり外れのある作家です。

そして、今回読んだ「月の裏側」はハズレ・・・

ラヴクラフトが書いていそうなネタだよなー、と思いながら読み進めて行ったのですが、けっきょく、何を言いたいのか分からないまま終わってしまいました。
生物の進化の瞬間に立ち会うことになった人たちの、困惑と恐怖を描いているんだと思うんですが・・・
これは、悲劇的結末なんだろうか?
それとも、希望に満ちた結末なんだろうか?
たぶん、後者なんだと思うのですが、ぜんぜん自信が無いです。
どうもホラー的な味付けが濃すぎて、焦点がぼやけてしまっているような気がします。
自分の読解力不足を棚に上げ、作者のせいにはしたくないけれど・・・なんだか、ちょっと「???」な内容でした。

決して嫌いな作家ではないのですよ。(随分、たくさん読んでいるし)ただ、作品によって「好き」と「嫌い」の格差が激しいのです。
ちなみに、好きなのは「光の帝国」と「三月は深き紅の淵を」など。
「ライオンハート」も、コレを単独で読んでいたら「好き」の方に分類されたと思うのですが、直後に北村 薫さんの「リセット」を読んでしまったので、微妙な地位に甘んじています。どちらも同じような素材を使用しているのですが、「リセット」の方が(私には)染みました。

今、手元には「麦の海に沈む果実」があります。
これは、「三月は〜」と内容的に繋がっているようなので楽しみです。

感想は・・・きっと、忘れた頃に書くと思います。
 
 
 
「麦の海に沈む果実」の感想
 

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2005.01.19

「うつくしい子ども」 石田衣良 著

石田衣良という名前は、ずいぶん前から気に留めていたのだけれど、これまでなんとなく読みそびれていました。
今日、外出するのに文庫本を持って出るのを忘れて、慌てて飛び込んだ駅前の書店で、なんとなく手に取ったのがこの本でした。

そして、あっという間に読破。
大当たり!でしたぁ。
 
 
痛い・・・読んでいて、とっても、痛かった。
主人公である幹生くんが切なくて、いじらしくて、何度も泣きそうになった。

ある日突然、殺人を犯した「少年A」の兄という重荷を背負うことになってしまった少年を中心に、物語は展開して行く。
彼は弟を理解するために、弟の軌跡を追い始める。
少年や彼を支える友人たちの、ピュアな感性が、また、痛い。

そのうち、事件は思わぬ方向に展開して行って・・・このあたりからミステリー調になっている。

少年は次々と悲惨な仕打ち受けることになるのだけれど、それに耐え、自分なりの方法で前に進もうとする姿は、悲しいくらいに一途で優しい。
ほんとうに「うつくしい子ども」なのは、ジャガイモのジャガと呼ばれる幹生くんなのだ。
つるりとした肌の「夜の王子」ではなく。
 
 
好きな小説のリストに、この小説が新たに加わることは間違いないです。
 
 
 
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2005.01.11

大人に役立つ算数の時間

最近、どうも芸能人の名前がパッと出て来ない。
顔は分かるし、だれのダンナだとか、あの映画に出ていたとか、そういうことは分かるんだけど、名前が〜〜〜!
という、アレである。

プチ・ボケか、はたまたゲーム脳か?

自分の場合、どちらの可能性もアリアリだし、どっちにしてもかなりヤバい。
頭は使わなきゃどんどんバカになるらしいんで、マジでなんとかせねば・・・と思っていたところで見つけたのがこの本。
「大人に役立つ算数の時間」(永岡書店)
いいタイトルだ。

中を開くと、昔、さんざん苦しめられた算数の文章問題(懐かしい響きだ)がギッシリである。
とにかく購入して、チャレンジしてみた。


とりあえず、1問め。
連立方程式を使えば解けそうな気がする。
気がするんだけど・・・

連立方程式ってどうやって解くんだったっけ???

おそろしいほど、きれいサッパリ忘れている。

ここで諦めるのもシャクなので、自力で頑張ってみる。
計算はもちろん暗算もしくは筆算。電卓は封印だ。

本に用意されているメモ欄はグチャグチャで、何を書いているんだか、何をどうしたいんだか、ワケがわからない。

しばらくウンウンうなった後、どうにか答えは出た。
現役中学生にハナで笑われそうな無様な解きっぷりではあるが、ちゃんと正解に辿り着くんだから不思議である。

続けて、いくつか解いてみる。
ひとつ解くたびに、だんだん要領が良くなって来る。
答えに辿り着くまでに要する時間が短くなる。
錆び付いていた頭のどこかが、再び動き出したような気さえする。
しまいには、面白くなって来た。

いやぁ、自慢じゃないが、算数・数学は大の苦手で、理数系と決別できた時は「あ〜、せいせいしたッ!」と思ったものだ。
それが、なんで、今やると楽しいんだ???

おそらく、「解き方はどうであれ、答えに辿り着けばいいんだよ」っていうスタンスだから楽しいんだろうな。学校で習ったときも、そういう方向から入っていって、後からスマートな解き方を教えてくれたら、あんなに嫌いにならずにすんだのかもしれない。

なにはともあれ、頭の体操に大いに役立ちそうである。
毎日、ちょっとずつ解いていくことにしよう。

あんなに嫌いだった算数をクイズ感覚で楽しめるようになるんだから、大人になるのも悪くないね。ウン。
 
 
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2004.12.20

「四日間の奇蹟」 浅倉卓弥 

読む前に想像していたのとは、ずいぶんと違った内容でしたが、面白かったです。
最初の方はダレるんですけど、そこを越えるとグイグイ引っ張られて、最後まで一気読みでした。

読みながら、「なんか、コレとよく似た小説を読んだことがあるような気がする」と思っていたら、あとがきにもそれらしきことが書いてあって、「なんだっけ、なんだっけ???」とさんざん悩んだあげく、ようやく思い出しました。

篠田節子さんの「ハルモニア」

音楽に関しては天才的な能力を持つ、脳に障害を持った少女。
彼女を見守る、ちょっとワケありの青年音楽家。
・・・という設定が、まるで一緒。

でも、そこから展開される物語はまるで別物というか、逆方向に進んでいきます。
「ハルモニア」は読んだ後に陰々滅々たる気分に陥った記憶があるのですが、「四日間〜」はほんわか癒されてしまいました。
私はどっちも好きなんですけど、一般ウケするのは「四日間〜」かな?
「純愛物」といえなくもないし、千織ちゃんがすごく可愛いし。

なんとなく、映像化したら面白そうな小説だな・・・と思い、主人公の青年音楽家にはスマップの吾郎ちゃんがいいな・・・などと、勝手にキャスティングしたりもしてみました。
キャスティングはともかく、中盤以降のスリリングな展開とか、魅力的な登場人物がワサワサ出て来るあたりとか、実に映画向き。描かれている風景も奇麗だしね。
誰か、映画化して〜〜〜。

ところで、「天は自らを助くる者を助く」って、ギリシャ悲劇由来の言葉だったんですね。
私は、ずっと仏教思想だと思ってました。
聖書ですらなく。
なにゆえ、そんな記憶違いをしていたんでしょう???
 
 
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