モノノ怪 第十二話「化猫 大詰め」
今回も、あらすじ吹っ飛ばしていきなり感想にまいりますよ。
ネタバレ大盤振る舞いですので、まだ視聴していない人はスクロール厳禁でお願いします。
今回は、これまでと打って変わって、実にストレートな話しに仕上がっていました。
2時間ドラマとかで、普通にやっていそうです。
ありそうでしょ。
大物政治家のスキャンダルのネタを掴んだジャーナリストが、そのネタを上司に握り潰され、そのうえ命まで狙われる・・・なんてハナシ。
そう。節子さんの上司、新聞記者の森谷は市長とグルでした。
そのへんは、おおかた予想がついていたんで驚きもしなかったし、だからこそまだ他に何かあるんじゃないかと思ったわけなんですが。
かといって、今回の話しが拍子抜けとか、物足りないとか、そういう感じは受けませんでした。
「怪 〜Ayakashi〜 化猫」や「座敷童子」などに見られたモノノ怪の悲哀は、今回の「化猫」からは感じられません。
でも、同じく悲哀が伝わって来ず、私としてはどうも共感できなかった「鵺」ともまた、ぜんぜん違う。
この「化猫」は、「悲しさ」ではなく「悔しさ」で出来ているのね。
女性の社会進出など夢のまた夢だった時代に、現在でさえ「男の仕事」的イメージのある新聞記者などという職業に就いていた節子さん。
キツい物言いで上司に食って掛かったり、他の女性を見下したりして、男性からも女性からも共感は得られなさそうな人物です。
でも、自分に記事を全て任せてもらえることになると、思わず泣き出してしまいます。
キツいだけの女性ではないんです。
彼女は、必死だっただけ。
彼女は新聞記者という道を選び、その道で生きて行くために、相当気を張っていたのだと思うのです。
必要以上に強い態度をとらなくては、バカにされる。
男の人の何倍もの努力をしなければ、一人前として扱ってもらえない。
そういう想いが、彼女にあのような言動をとらせていたのだと思うのです。
決して賢いやり方ではありません。
頑張り過ぎるあまり、余裕を失い、大事なことを見失っているその姿は、愚かで醜い。
でも、彼女の気持ちは、私には良く理解できるのです。
あの陸橋で、抵抗をせず、諦めてしまえば命を落とすことは無かったでしょう。
でも、彼女には、それが出来なかった。
悔しくて、悔しくて、悔しくて、抵抗してしまった。
迫って来る列車の音を聞きながら、彼女が流したのは悔し涙だったはず。
節子さんは、徹底して新聞記者でした。
時々、ハルさんやチヨちゃんや、自分自身の感情が原稿用紙に描き込まれる表現が出て来ます。
あれは、節子さんが新聞記者だから。
自分の見聞きしたことを、原稿用紙に書き込むという行為が染み付いてしまっているのね。
それから、序の幕の時から聞こえていたシャッターを切る音。
乗客たちの顔がアップになったりすると、カシャカシャっと鳴ってて、なんでだろう、なんでシャッターを切る音なんだろう、地下鉄とカメラは関係ないだろうに・・・って不思議に思ってました。
あれも、節子さんが新聞記者だったからだったのね。
市長が料亭からでて来るところを、節子さん自身が写真に撮っていたのを見て、やっと分かりました。
節子さんは、化猫になっても、乗客たちの様子を「取材」していたんだわ。
二の幕で、薬売りさんは「真」を知りたがるモノノ怪って、言っていましたよね。
なので、節子さんも自分が死んだ理由が分かってないのかもしれないと、私は考えてたんですが、そうではありませんでした。
節子さんは、この事件に関わった人たち全員の「真」を知りたかったんでしょう。
犯人かもしれない人物を目撃したのに、証言してくれなかった。
言い争う声を聞いていたのに、証言してくれなかった。
でまかせに適当なことを言ったり、思い込みでいい加減な捜査をしたり、ぼんやりしていて線路上に倒れている人に気付かなかったり・・・
彼らのそういった行動が全て絡み合って、節子さんの死が「自殺」とされてしまったわけです。
化猫・節子さんの「真」は、市長の汚職を暴こうとした節子さんが殺され、真実が闇に葬られてしまったこと。
それだけではなく、そうなるに至った要因を全部ひっくるめて、化猫・節子さんの「真」なのでしょう。
自分の死に関わった、すべての「真」を知りたい。
そして、真実を世の人々に伝えたい。
それが、化猫・節子さんの「理」
真実を知り、それを伝えることは、ジャーナリストの使命。
この化猫は、いかにも、新聞記者・節子さんらしいモノノ怪といえます。
殺された恨みを晴らすだけなら、何も舞台を現代にする必要は無かったでしょう。
「怪 〜Ayakashi〜 化猫」のタマキさんも、男たちに踏みにじられた悲しい女性でした。
モノノ怪の「化猫」節子さんの場合も、女性であったがゆえに引き起こされた悲劇。
そして、どちらもその強い情念から同じようにモノノ怪・化猫を生み出した。
でも、2人の情念は違う。
ただひたすらに耐え、あやかしの力を借りてやっと苦しみから解放されたタマキさん。
対して、男性と対等になろうと必死に足掻いていた節子さん。
節子さんの抱いた情念は、この時代だからこそ成立するものです。(逆に、平成の世でも、また違って来る)
同時に描かれていた、、チヨちゃんやハルさんの情念もまた、現代っぽいです。
本編中に出て来た時計の針が戻る演出は、化猫が「理」を伝えるために、時間を巻き戻していたことを表現していたんですね。
森谷の本心を暴き出すために、過去にさかのぼり、それを薬売りが見届ける。
(森谷がベラベラ喋るだけで片付けられなくて、本当に良かった)
「怪 〜Ayakashi〜」の化猫も、人間たちがなかなか口を割らないから、自分の力で薬売りに過去の映像を見せて「真」と「理」を伝えてくれました。
そのへんで、ちらっと繋がりを持たせているあたり、心憎いです。
繋がっていないようでいて、実は、やっぱり繋がってる。
モノノ怪はいつの時代にも、カタチを変えて存在しうるのだということを伝えたくて、モノノ怪版「化猫」の舞台を現代に選んだのでしょう。
そこに、現代でしか描くことの出来ない「情念」を絡めて来た。
テキトーに薄っぺらいエピソード並べてるだけじゃぁない。
さすが、モノノ怪。奥が深いよ。
最終話とあって、薬売りさんの見所も満載でした。
ゲシッと化猫に引っ掻かれて頭巾を破られ、前髪が乱れるあたりなんて、最高。
その前髪の隙間からの眼差しが、また、えらくカッコいいんだ。
変身シーンも、すごかった。
美しかったし迫力あったし、大満足。
あの空間全てが化け猫の中っていうのも、よかった。
画面いっぱいに広がる化猫は大迫力。
いや、ばさーーーーーーっとやった瞬間にエンディング行っちゃった時は、唖然としてしまいましたが。
待てぇーーーい!!!ですよ。
ホントに、なんという人騒がせなことをするのですか・・・
乗客のうち、さほど罪は重くないと認定された人たちは、死んではいなかったのですね。
刑事も生き残っているところを見ると、単にいーかげんな仕事をしただけであって、市長と裏で繋がっていたというわけでは無かったようです。疑ってゴメンナサイ。
ただ、この人たちが生き残ったのは、化猫の温情ゆえではないと思います。
全員殺してしまったら、真実は闇の中に隠されたままになってしまいますから。
市長の不正を公にするために、自分の死の真相を知る証人と、隠蔽されてしまった真実を捜査する人物を、あえて残したのでしょう。
それにより、市長の汚職の一件が新聞記事になり、「真実を伝えたい」という節子さんの「理」は、完全に叶えられたのです。
猫も無事でよかった。
たまたま、あの場に居合わせて節子さんの血を舐めてしまったせいで化猫になってしまっただけで、猫には罪は無いもんね。
やっぱり、退魔の剣は、あやかしと人の情念のつながりを断つだけなのよ。うん。
猫をナデナデしてる薬売りさんの優しげな横顔が良いねー。
そんな顔、できるんじゃん。
あやかしは、常に世に在るもの。
人に心がある限り、憎しみ、悲しみ、恨み、怒り・・・そういった情念も生まれ続ける。
情念とあやかしは結びつき、モノノ怪は生みだされる。
しかし、この世に在ってはならないモノノ怪は、斬らねばならない。
故に、退魔の剣とそれを振るう腕もまた、在り続ける。
薬売りの仕事は、いつまでたっても終わらない。
とはいうものの、終わってしまいました、モノノ怪。
ウンウン唸って感想を書いてるのも、それはそれで楽しかったですから、それが無くなってしまうと思うと、はぁ・・・ひじょーに寂しいです。腑抜けます。
こんな超長文を読みに来て下さった皆様、本当に、本当にありがとうございました。
これでも、だいぶ削っているんですよ。
書ききれなかった分も含めて、全編を通した「モノノ怪」総評を書いて、わたしの「モノノ怪」は終了にしたいと思います。
そうやって、まだズルズルと「モノノ怪」にしがみついていたい。
それが私の「理」だったり?
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