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2006.09.28

「オーデュボンの祈り」 伊坂幸太郎 著

すげぇよ、伊坂幸太郎。
よく、こんな話しを思いつくなぁ。
「重力ピエロ」を読んで以来、すっかり伊坂幸太郎がマイブームの私が今回読んだのは「オーデュボンの祈り」。
これがデビュー作だってんだから、トンデモない人だ。

だいたい、発想が普通じゃない。

なんたって、喋るカカシが存在するってのが大前提のお話なのだ。

かといって、別に「オズの魔法使い」みたいなファンタジーってワケじゃない。
(まぁ、ある意味、ファンタジーだけど)
 
 
150年間、外部との交流を断っている「荻島」という小さな島に、そのカカシは居る。
カカシには優午という名前があって、喋るだけでなく、未来を予見することまで出来てしまう。
カカシは島の人たちに慕われ、頼りにされる、いわば島の人たちの心の拠り所のような存在だった。
主人公の伊藤は、人生の歯車が狂いかけた青年で、ちょっとした偶然からこの荻島に転がり込こんだ。
そんな矢先、カカシが殺される。
未来を見通すことが出来るカカシは、なぜ、殺されてしまったのか?
荻島に住む奇妙な人たちと出会い、交流を深めながら、伊藤は次第に事件の真相に近づいて行く。

と、まぁ、そんな感じのストーリーで、カカシ殺人(?)事件の謎を解くミステリーでもある。
 
 
一応、なぜ優午が言葉を話し、未来を予見できたのか、それらしい説明も有るのだけれど、本当にそれが正解なのかどうかは分からない。
物語の中でも曖昧なままになっている。
それはそれでいい。
大事なのは、事件の真相を探ることで、カカシが喋る仕組みを解明することではない。
とにかく、荻島のカカシは喋るのだ。

幾重にも張り巡らされた伏線。
それが全部繋がっている。
一見、まったく関係無かったような出来事も、実はちょっとだけ繋がっていたり。
真相が判明した時、これを仕組んだ犯人の賢さに脱帽した。

荻島には、風変わりで魅力あふれる住人たちが多数居住している。
その中でもひときわ強烈な印象を残すのが、「桜」。
島で唯一殺人を許された男。
いわば死刑執行人のようなものなんだけど、その判定基準は桜の一存で決められていて、真実がどうあれ、桜の下した結論に誰も文句を言わない。
文字通り、かなり危ない人なんだけども、詩と花を愛する・・・なんて言う一面もあって、おまけに絶世の美男子。
男から見てもほれぼれするような美しい男って、どんななんだろう?
 
 
とにかく面白くて、先へ先へと読み進めたくなるパワー満載の小説なんだけど、唯一、「島に欠けているもの」の正体にはガッカリした。
もうちょっと、深遠なものを思い描いていたから。
え?そんなものだったの?って感じ。
そのへんが、デビュー作ならではの「あと一歩」ってところか。
もっとも、その「欠けているもの」が島を見下ろす丘の上から荻島の人々に届けられるシーンを頭に思い描いてみたら、ちょっといい感じだった。
私が映画監督だったら、きっとそのシーンをラストカットにするだろう。
 
 
 
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