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2005.11.15

SAMURAI7 (総合レビュー)

オリジナルがとにかく名作だから、ストーリーが面白いのは当然なのかもしれない。
なんたって、あの黒澤明監督の「七人の侍」をベースにしているんだから。
「七人の侍」を観たことは無くても、タイトルは聞いた事があるだろう。
それがリメイクされて「荒野の七人」になったことや、今をときめく映画製作者たちに影響を与えた作品だということぐらいは知っている人も多いと思う。(私もその1人で、後で慌てて原作を見た)

でも、単に原作をなぞってるわけじゃない。
原作に忠実な部分もあれば、まったく違うアプローチをしている部分もある。

だいたい、サムライたちが戦っている相手は、どう見てもモビルスーツだ。
ただし、人が乗って操縦しているのではない。(一部、そういうのも居るけど)
あくまでも「機械の身体をもった人間」なんである。
 
 
この世界には大きく分けて3つの勢力がある。
商人と農民とサムライ。
世の中を支配しているのは商人である。
一方、世の底辺にあって、大地にへばりつき米を作り続けている農民。
サムライは、野伏せりとなって農民から搾取する悪党に成り下がった者たちと、職にあぶれ喰うに困っている者たちとに二分される。

原作ではまだ戦国時代のまっただ中で、『戦と戦の合間』なのだけれど、アニメの方は完全に戦の時代は終わっている。
ただ、サムライたちが食い扶持を失って腹をすかしているという点ではどちらも一致しており、農民たちが強い力を持つ者によって虐げられているという点も同じだ。

原作同様、追いつめられた農民たちがサムライを雇って野伏せりを討とうと決意するところから、この物語は始まる。

腹いっぱいの米と引き換えに、村に来る野伏せりを斬るという大仕事を引き受ける7人のサムライたち。

原作の7人の侍たちは、さほど際立った描き分けがされていない。
もちろん、それなりに個性があるのだけれど、各人のバックボーンなどはほとんど語られず、彼らの生き様が描き出されることもない。
故に、見終わった後、農民のしたたかさ、たくましさの方が印象に残る。
「農民と7人の侍」とでもした方が良かったんじゃないかとさえ思うくらいに。

一方、アニメの方はあくまでサムライたちが主体になっている。
7人のサムライたちは、その描き分けが見事である。
キャラが立つというのは、こういうことを言うのだろう。
基本的には原作のキャラと同じ色づけと立ち位置を与えられているのだけれど、比較にならないほど濃くて、極端といってもいいほど個性的である。
そして、皆それぞれに、腹の中に何かを抱え込んでいる。
哀しみとか、空しさとか、苦しさ、寂しさ・・・
いくさ場で暴れまくったり、冗談を言って笑いあったりしているサムライたちの後ろに、チラチラと暗い影が見える。

最初に見終えた時には、そういう『影』の部分がちっとも語られないのが不満だった。
カンベエが、なぜ『抜け殻』なのか。
キクチヨが身体を機械に替えてでもサムライになろうとしたのは、何故なのか。
キュウゾウは、何故カンベエを斬ることにこだわるのか。
ヘイハチの過去に何があったのか。笑顔の向こうで、どんな想いを抱えていたのか。

何ひとつ、ハッキリとは示してくれないままに物語は終わってしまう。

それが、物足りなくて、もどかしくて、腹立たしかった。
後半の都との戦なんか要らないから、ストーリーは野伏せり退治だけにして、そのぶんサムライたち一人一人の心情をもっと掘り下げた方が良かったんじゃないのかとも思った。

でも・・・

何度か見返して、「サムライってなんだろう?」って自分なりに考えて・・・そうするうちに、「ああ、こういう描き方もアリなんだ」って思えるようになった。

サムライは、自分のことをグダグダ語ったりしない。
ただひたすらに、己の信念を全うするだけでいい。
悩んだり迷ったりしてるのは、サムライ未満のカツシロウ1人で十分。
彼らが『何か』を抱え込んでいたのは、ちゃんと見えていた。
でも、それを超越したところに既に彼らは居た。
だから、もう、語る必要なんて無い。
過去や深い胸の内を、ことさらに掘り返して見せる必要なんて無い。

いろんな思いを抱え込んだまま、真っ直ぐに駆け抜けて行ったからこそ、彼らは格好良いんだ。

散り際の派手な演出もほとんど無く、どのおサムライ様も割とアッサリ倒れて行く。
いくさ場では、『死』は普通に転がっているもの。
劇的だったり、華々しかったり、そんな『死』は無い。
大切なのは「如何に死ぬか」ではなく、その一瞬までを「如何に生きるか」だ。
だから、あのそっけないくらいの演出で、まったくオッケーなのだ。
そういえば、原作の侍たちもいつ死んだのか分からないくらい、ひっそりと倒れている。
あるいは、これは原作に倣った演出だったのだろうか?
 
 
とは言うものの・・・この作品、ホントに惜しいのだ。
あともう一歩で、完璧な作品になっていただろうに。
「七人の侍」という素晴らしい素材があって、それを絶妙なバランスで組み替えたセンスの良さ。
原作以上に魅力的なキャラクター達。
誇れるところはたくさんある。
だけど、途中でガタガタに絵が乱れたり、シナリオにチグハグなところがあったりして、せっかくの美点をぶち壊している。
そういうところが眼についてしまうと、本編に集中できないではないか。
ホントに、残念。

もう1つ残念だったのは、意外と戦闘シーンが少ないこと。
華麗な剣技を披露してくれてるのはキュウゾウぐらい。
ヘイハチなんて薪割ってるの除いたら、刀抜いたの2〜3回だもの。
せっかくサムライが7人も居るんだから、こう、バッサバッサと派手に斬りまくる「剣劇アクション」をやって欲しかった。
 
 
あともう一歩!ってところはあるんだけど、それでも、やっぱり私はこの作品が好きだ。

とにかく、ストーリーが面白い。
サムライとは何か・・・という深く重いテーマを投げかけつつ、そこここにちりばめられた笑いの要素。
(最終決戦に臨む段になっても、まだ笑わせてくれる)
そのバランスも、ちょうど良い。

そして、ひたすら男たちがカッコいい。
登場する男たちは、ひたすら、真っ直ぐなのだ。
敵も、味方も、みんな自分の信念に忠実に突っ走っている。

「SAMURAI7」の中の『サムライ』は、ちっとも美しくない。
人を斬ることにしか自分の存在意義を見いだせない、とても困った人たちだ。
時代の流れから取り残された、無様で不器用な人たちだ。
仕事が無くて腹が減っても、世間から後ろ指さされようとも、それでも、彼らはサムライであり続けようとする。
そんな彼らを(しょせん『人斬り』であるにもかかわらず)カッコいいと感じ、憧れや愛おしさを抱いてしまうのは、いけないことだろうか?
 
 
この物語は、サラッと見ても十分に楽しめるエンターテイメント性を備えている。
けれど、本当の面白さは何度も繰り返して見なければ分からない。
男たちの生き様ってヤツに触れ、心揺さぶられたなら、ぜひもう一度見直して欲しい。

願わくば、地上波での再放送を。
7人のおサムライ様に取り憑かれてしまった同士が、今以上に増えることを祈って。
 
 
 

point1

*当ブログ内関連記事
 SAMURAI7 各種考察 目次
 (キャラ考察、原作の感想など) 
 
 SAMURAI7 鑑賞之記録 目次
 (各話ごとの感想)

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コメント

始めまして。
昨日、1日かけてSAMURAI7を全話見たものです。
各話の感想読ませていただきました。
一気に見たために、夢うつつで見ていた部分も多くて、沢山見逃した部分が書かれていて、面白かったです。

ホントのこのアニメはキャラが立っていて良いと感じます。
にゃおさんの感想に、はじめは過去と内面を掘り下げてて欲しく感じたが、あとからそれは必要ないと言う風になったとありますが、その通りに感じます。
そういうのを全て描かなくても、それを想像できるほどのキャラが立ってると感じるんですよ。
見る人それぞれが、想像して楽しめるほど、良い作品ということなのだと思います。

投稿 紅(kure) | 2006.05.09 13:37

いらっしゃいませ。

1日で全話鑑賞ですか!
おつかれさまです。

やっぱり、この作品のいちばんの魅力は、個性的な7人のおサムライ様たちですよね。
寄せ集めなのにしっかりと役割分担が出来ていて、誰1人として外せません。

そして、おっしゃる通り
想像の余地があるということも魅力の1つだと思います。
私などは、最初に見てからだいぶ経つというのに、いまだに、ふと、ああだこうだと考えてしまうことがあります。
見て面白い。
見た後も楽しめる。
そんなスルメみたいなこの作品に出会えたことを、幸運に思っています。

投稿 にゃお | 2006.05.09 15:39

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